悪役令嬢、苦戦ながらもスタンピードの中へと駆け出す。
スタンピードはまだ止まない、まだ尽きぬ魔物の大群に冒険者達と傭兵達は防戦一方の状態ながらも馬車列を守り抜き続ける、しかし、彼等と言えども何時までも戦える体力も魔力も底無しでは無い。
ビッグ「ぐあっ!!?」
大柄の棍棒使いの古参冒険者であるビッグ・フットマンは連戦による疲れが溜まって来たのか少しずつ魔物達の攻撃を受けて負傷して行く。そう、疲れが溜まれば溜まる程に油断も隙も出来てしまうからだ。
シンシア「ぐうっ!!」
槍使いの女冒険者であるシンシアは、棍棒持ちのアームド・ホブゴブリンの大振りを槍で防ぐも体重差で押し出され耐えられず、吹っ飛ばされる。
シンシア「うわあああっ!!」
ロザリー「シンシア!!このぉっ!!」
自分の同期であるシンシアが吹っ飛ばされた事でロザリーはシンシアを攻撃したホブゴブリン目掛けて矢を放つ、放たれた矢はホブゴブリンの頭に命中しそのまま絶命して倒れる。しかし、次なる襲撃者として5匹のポイズンクローリザードがロザリーに向かって斬り掛かろうと仕掛けて来るが、ロザリーは次なる攻撃を行う為に急ぎ矢を手に取ろうとするも…。
ロザリー「う、嘘でしょ?このタイミングで!?」
運悪く先程のホブゴブリンへの攻撃で、背中に背負ったケースの中の矢が全て無くなってしまった。ロザリーは自分の弓を足元に置き捨て再び後ろ腰に収めた短剣を抜き構えようとする。
絶体絶命の最中、せめてリザードを1匹だけでも道連れにとロザリーは意識しながら特攻をした瞬間だった。
少女の声『『瞬足』&『双剣術・霞千閃』!!』
突然の謎の人影が眼にも見えぬ速さでロザリーを助けるかの様に乱入し、5匹全てのポイズンクローリザードの全身を高速の速さで細かく斬り刻んで倒し、そのまま突破し魔物の群れの中へと突入して行った。
ロザリー「………え?た、助かった?」
一体何が起きたのか、自分に襲い掛かろうとした目前の敵達が一瞬で斬り刻まれて倒された事に、ロザリーは驚きを隠さずにいた。
そして、その1つの影が、セリスティアと同じく主に向かって突っ込んでるが事に…。
*
時は巻き戻り、今から数十分前。
セリスティア「魔法剣!」
前方のアームド・ホブゴブリン達を魔法剣で両断して倒しながら後列へと向かって走る。
私は現在、セトランドの冒険者達を助ける為にスタンピードの群れに強行突破しながら、1番奥の後列に潜む迷宮主、レッドホブゴブリンを倒す為にだ。
しかし、迫り来る魔物の数が多過ぎて主に近づけられない、ようやく中盤辺りまで行けれたと言うのに次から次へと霧が無い…。そうこうしてる内にまた新たな魔物達が私に向かって押し寄せて来る!
セリスティア「ああもう!次から次へと!!」
私は文句を言いながら押し寄せる魔物達を次々と斬り込んで倒していくも、瞬時に新たな魔物達が立ち塞がっていく。
恐らくこれは、主であるレッドホブゴブリンの所有技術の1つ。『眷属指揮』の効果だろう、さっきからレッドホブゴブリンは何か獣の様な吠え方をした喋りで他の魔物達に何か指示をしている。
セリスティア「『剣術・居合斬り』!!」
突進して来るロックバイソンの顎目掛けて居合斬りを繰り出すとロックバイソンはプロボクサーの会心のアッパーを顎に受けたかの様に、縦から吹っ飛ばされ地面に倒れようとする、この一瞬を逃さない私はロックバイソンの顔面を踏み台代わりに踏みつけ、全体重を使っての『跳躍』の技術を使って、より高く跳ぶ。
これなら一気に主との距離が縮まれる、しかし、主は私の行動を見抜いたのか、レッドホブゴブリンは左右から離れた弓持ちであるアームド・ホブゴブリンアーチャーに命令を下し、空中に高く跳躍してる私に向かって瞬時に弓を引き矢を放つ。
私は浮遊状態のまま、敵の放った矢を剣で弾き落とす、しかし、前方から2匹のポイズンクローリザードが『跳躍』の技術を使って高く跳び、私に向かって毒塗りの鈎爪で斬り掛かろうする!!
セリスティア「『魔法剣・回転斬り』ぃ!!」
前方2匹のポイズンクローリザードの胴体を魔法剣による回転斬りで両断すると共に、私は倒したリザードの遺体を足場代わりに踏み付けてから再び『跳躍』の技術を使用し、主との距離を再び縮めていく。
これを見逃さないのか、全方向からホブゴブリンアーチャー達が私に向かって次々と矢を撃ち放つ。
セリスティア「ああもう!!しつこいわね!!」
前方から放たれた矢を魔法剣で斬るも、落下体勢に入ってしまう、このまま後方から放たれた矢に私の身体が突き刺さるのかと思った矢先、私は左手のみで炎魔法を発動した。
セリスティア「『炎鞭』!!」
左手で炎鞭を発動させた私は、少し先に立つトロールの首目掛けて炎鞭を放ち首を巻き付かせてから、ターザンがツタを片手で掴みながら、自身の体が外側に引っ張らせての遠心力で半回転しながらの空中移動を行うと同時に後方から放たれた矢を全て回避する。
遠心力で空中移動しながら、私は左手に掴み持った炎鞭を離し、その反動で私は高く跳ぶ!ただ迷宮主に近付いて跳ぶんじゃない、その先のアームド・ホブゴブリンの顔面目掛けて『突撃』の技術を使用すると共に、私は前進跳躍しながら膝突きを放つ。跳躍と突撃の衝撃のせいか鼻の骨が砕く音と共にホブゴブリンの顔面は潰れ、更に私はそのままホブゴブリンの顔面を踏み台にして再び『跳躍』の技術を使用し前へ高く跳ぶ!
その先の魔物達の大群の中に居るトロールを見つけると私は左跳び蹴りをトロールの顔面に繰り出すと共に足場代わりにして右方向へと跳躍!
その先にいるトロールの顔面にも同じく、右跳び蹴りをトロールの顔面に深く打ち込むと共に真ん中へと高く再び跳躍する!!
もう少しで主の立つ1番後列へと届く、そう意識してた矢先に前方と左右から『跳躍』技術持ちの短剣持ちのアームド・ホブゴブリンとポイズンクローリザードが私の前へ立ち塞がるかの様に跳び掛かる!!
セリスティア「邪魔!!」
私は襲い来るポイズンクローリザードを全て魔法剣による居合切りで両断する。
セリスティア「増加システム・ON……。魔力消費10倍!『爆炎』!!」
私は増加システムをONに切り替えて、真下にいる魔物達目掛けて10倍の『爆炎』を放つ!魔物達はあたふたしながらも爆炎の炎に飲まれると共に身を焼き尽くされ、周囲の魔物達をも巻き込んで大爆発する。
後方の馬車列を守り続けてるカレンや冒険者達は魔物達と戦いながら、爆炎での大爆発に気付き驚く。
アイザック「い、今の爆発は一体…。」
シンシア「凄い……。」
ロザリー「嘘、もしかしてあの娘が…。」
カレン「相も変わらず、無理し過ぎにやってるな…。」
地面に着地すると共に、爆炎の爆発に巻き込まれなかった魔物達は私の姿を見て恐怖したのか、一斉に私から後退りする、恐らく、私の強さを感じたのだろう。
そして爆発を背景に、スタンピードの元凶である迷宮主ことレッドホブゴブリンとその2匹の側近であるアームド・トロールの3匹こ魔物と対峙しながら、私はニヤリと悪役令嬢ばりの笑顔で私は言った。
セリスティア「待たせたわね、さぁ、始めましょうか。私と、貴方達の、互いの命を賭けた。戦いの円舞曲をね。」