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悪役令嬢、故郷と別れて本国目指して旅立つ。

あの大型魔獣との戦いから早くも1年の月日が流れた。エレイナお姉ちゃんはエンディミオン魔法学校へ進学の為に本国へ、ノービスも兵学校へ同じく本国に、そしてエリシアはレリウス様と共に本国へと帰還した。


そして私はと言うと…。


ディオス村から数キロ離れた先にある森の中にてメイド服を着た少し背の高い黒茶色の長髪の少女、15歳になったレイラ・スクルドがある場所の前で誰かを待っていた。魔物が潜んでいるこの森の中で、レイラは目前の異形な洞窟を黙って見守っていた。


あれこそは地下迷宮(ダンジョン)

名前の通りの地下の迷宮、其処には数多くの強い魔物が潜み、色んなお宝が眠っている、そんな地下迷宮の中にて下級魔物であるゴブリン達は警戒しながら武器を握り、ゆっくりと前進すると共に侵入した冒険者と対峙していた。


カレン「良いかセリス、ゴブリンと言うのは単体では対した事は無いが、集団で攻められたら別々の結末を迎えられる、男の場合はなぶり殺し、女の場合は裸にひん剥かれてから手籠めにされて死ぬまで種馬にされ続ける。この場合は後者だ。」


セリスティア「ゴブリンねぇ…。」


洞窟の空気が吹かれて私の長い髪が少し揺れる、私の『鑑定』は成長した進化技術しんかスキル超鑑定ちょうかんてい』で周りのゴブリン達の総合値ステータスを見通す。


セリスティア「ふぅん、1体1体、レベルは10後半ちょいか…。」


私はニヤリと笑いながら、鋼鉄の剣を鞘から抜き構える。私の後ろに居ながら大型盾を構えてるカレンは呆れた顔をしながら呟かす。


カレン「ああ、セリスの奴、あの様子だとまた滅茶苦茶に殺る気だなこれは…。」


セリスティア「そんな訳でゴブリン達、アンタ達全員に恨みは無いけれど、全員纏めて私達の経験値になってよね!!」


『加速』の進化技術である『瞬速しゅんそく』と『突撃アサルト』の技術スキルを重ね掛けて発動し、眼にも見えない速さでゴブリン達の群れを正面から突っ込む!1体1体のゴブリンの首目掛けて斬り込みながら駆け出す!!


首を斬られたゴブリン達は首から血飛沫を噴き出し、次々と絶命して倒れる。瞬間、奥の方に唯一の中級魔物であるゴブリンの上位種、鎧兜を武装したアーマード・ホブゴブリンが雄叫びを上げながら、私に向かって棍棒を振り下ろしながら突撃する。


棍棒が振り下ろされると共に私は素早く、天井へと向かってアクロバットしながら回避からの跳躍を行い、天井に脚を付かせた瞬間にアーマード・ホブゴブリンの頭部目掛けてそのまま跳躍し急降下しながらの居合の体勢に入る。


セリスティア「『剣術・居合斬り』!!」


私は兜ごとアーマード・ホブゴブリンの頭を縦に深く斬り込ませて地面に着地する。斬り込んだホブゴブリンの頭部の斬撃痕から血飛沫が噴き出しそのままズゥンと地に伏せ絶命する。


大将を失った残りのゴブリン達は攻撃対象を私からカレンへと向けて武器を持って一斉に突撃仕掛ける、あらあらゴブリンのくせに、カレンは弱いとは言っていないよ、カレンは呼吸を整えさせながら大型盾を両手持ちに切り替えて上に上げ、地面に向かって大きく振り下ろしながら、地面に突き刺すと共に技術スキルを発動させる。


カレン「技術スキル発動!『衝撃の盾プレッシャー・シールド』!!」


盾を地面に強く叩き付けると、眼に見えない衝撃の波動が放たれ、自身を襲い掛かる前列のゴブリン達を吹っ飛ばす、この隙を逃さないカレンは大型盾を片手持ちに切り替え、地面に突き刺した自身の剣を握り締めながら、吹っ飛ばしたゴブリン達目掛けて次々と斬り込んで絶命させて行く。


セリスティア「ナイス攻撃よ!カレン。」


カレン「いいや、そう言うセリスこそ、武装したホブゴブリンを相手に一撃とはな。」


セリスティア「まあね、伊達に毎日、カレンに鍛えられてはいないからね、このまま一気に最下層まで行きましょう!」


このまま速攻で地下迷宮の最下層まで駆け出す私とカレン。それからも移動の最中に魔物達と遭遇するけど私達2人の方が力の差が有り過ぎたのか、そのまま強行突破がてらに魔物を斬り込んで進んで行く。


そして最下層、迷宮主ダンジョンボスの待つ大空洞内にて大型の魔物が私達の前に待ち構えていた。今回の迷宮主は緑の端と額に大きな角を生やした巨体の人型の魔物、鬼人オーガ類が1体、グリーンオーガだ。


カレン「グリーンオーガか、セリス、手を貸そうか?」


セリスティア「必要無いわ、今の私なら1人で十分だから。」


カレンは『そうか』と伝えると私とオーガとの戦いに巻き込まれない様に戦線から離れる。私1人だけで十分だとグリーンオーガは自分を馬鹿にしたのか雄叫びを上げ、右手に握り締めた大斧を振り回しながら、私に向かって突撃して来た。


私は『超鑑定』の技術を発動し、グリーンオーガの総合値を見ながら剣を構える。


セリスティア「レベルは30ジャスト、普通なら負けそうな展開だけど悪いわね、生憎と私は滅茶苦茶強いのよ!!」


刃に炎を纏わせ魔法剣を発動し、私はニヤリと笑いながら、迫り来るグリーンオーガに向かって突撃し燃ゆる一太刀を振るい放った。





迷宮攻略に向かって数十分近く経過したのだろうか?レイラは1人、欠伸をしながら引き続き、主であるセリスティアとその師であるカレンの2人を退屈そうに待っていた。


レイラ「ふわあ…。そろそろ予定の時間通りに攻略し終えた筈なのですが。あ。」


迷宮が攻略する方法は唯一つ、主の心臓であるコアを破壊する事が絶対条件、条件が達すると攻略した者達は入口近くに転移すると同時に迷宮が消滅する仕組みになっている。


レイラ「お帰りなさいませお嬢様、カレン様。」


セリスティア「ただいま、レイラ!」


レイラの方を振り向いた笑顔のセリスティアの着ている赤いドレスワンピースとその上に着けた革の鎧はグリーンオーガの返り血で汚れていた。レイラは頭を抱え、呆れた表情をしながら私に言った。


レイラ「お嬢様…。またもや御洋服を血で汚したのですか?もうこれで何度目だと思うのですか…。」


セリスティア「御免御免、強敵だったものだからつい…。」


カレン「つい、と言う台詞じゃないだろう…。速攻で終わらせて……。」


レイラ「とは言え、急いでお屋敷にお帰り致しますわよ、何せ今日はお嬢様が村を立つ()()()()なのですから。」


そう、今日はクリムゾン騎士団長に1年強くなると伝えた約束の1年経った日。即ち今日だ。私はその日まで、カレンとレイラと共にディオス村周辺の外から出現する迷宮にて実戦を積み続けさせ、戦闘に慣れさせる為の実戦訓練の日々を過ごしていた。まあ、そのお陰なのか…。


レイラ「それにしてもお嬢様、強くなったのは些か分かるのですが、背、大きくなりましたわね…。」


カレン「ああ、言われて見れば確かにな…。」


セリスティア「………そう?そんなに大きくなった?」


2人の言う通りに、12歳になってからだろうか、私は髪が背中に届く程に長くなり、身長も結構伸びた気がする、それに身体の肉付きや、胸も少しながらに大きくなっている。


ゲーム本編の悪役令嬢セリスティアもこの様な長身に近かったっけ?確か、公式オフィシャルファンブックでのプロフィールからして身長は170ジャスト、スリーサイズも今の私に近いかな。ま、小学6年生の女子に近い容姿だろう多分。


レイラ「私の眼に狂いは無くは成長なされたかと…。とは言えお嬢様、その様に身体が成長されたとなりますと、御洋服の調整も必要になるかと。」


そう言われてみれば、服や鎧がキツくなった様な…。


セリスティア「分かったわレイラ、屋敷に帰ったら直ぐに服の調整をお願いね。」


レイラ「畏まりました。」


言い合いながら私達3人は村へと続く道筋へと向かって歩き去った。





クラリスロード邸、屋敷の玄関前にて2人のメイドが箒で掃除をしている最中、1人のメイドが欠伸をすると、もう1人のメイドが注意して来た。


メイドA「ちょっと!何眠たそうな顔しながら欠伸してんのさ!?」


メイドB「ふわあ〜。だって仕方無いじゃん、早朝にいきなり庭掃除は流石に眠たくなるよ。」


この2人のメイド、今年の中冬から家のメイド長であるシーナのツテで働いている、欠伸してる茶髪ショートポニーテールのメイドがシフォン・ラベール、もう1人、欠伸してるシフォンを注意してる真面目そうなのが緑髪ショートヘアで眼鏡掛けてるのがリサーナ・アドクリフ。この2人は元々、何処かの街の支部で活動していた冒険者だったのだけれど実力に付いて行けずにそのまま引退、次の職を2人で探してる最中にシーナに出会いそのままトントン拍子でメイドとなって住み込みで働いている。まあ、お給料は良いからね。


シフォン「それにしても、お嬢様、帰って来ないねー。」


リサーナ「致し方無いでしょ、毎朝毎日決められた時間に屋敷に出て迷宮攻略に向かわれてるのですから。」


シフォン「迷宮攻略ね〜。と言うか家のお嬢様、これで今月迷宮攻略何回目なのさ〜?」


リサーナ「確か、私達2人がこの屋敷に働く前に続けてたからざっと…あ、噂をすればお嬢様達が帰って来たわよ。」


要約、我が家が見えて来た。玄関前の庭には掃き掃除係の2人のメイドが居り、私達3人の存在に気付いたか出迎えの準備をして来る。


シフォン「お嬢様、カレン様、お帰りなさいませ〜。」


リサーナ「お嬢様、予定よりもお早い御帰宅、本日も迷宮攻略お疲れ様で……!?」


瞬間、リサーナは私の着てる衣服と鎧が返り血で汚れてるのを見て、思考停止した途端に私に向かって驚き叫んだ。


リサーナ「お嬢様ああああ!?ど、どうしたんですかその返り血は!?」


レイラ「落ち着いて下さいリサーナ、これは単なる魔物の返り血です。」


レイラがリサーナを落ち着かせる最中に、私は笑いながら2人のメイドに言った。


セリスティア「いやあ、朝の迷宮攻略で今回の迷宮主ダンジョンボスであるグリーンオーガの首を両断した際につい…。」


リサーナ「つい、と言う問題じゃありませんよ最早!?と言うかグリーンオーガ倒せたのですか!!?」


セリスティア「レイラ。2人にアレを見せてあげて。」


レイラ「畏まりました。」


そう言うとレイラは抱え持ってた布袋から、ある物をガサゴソと取り出す、2人のメイド、特にリサーナは取り出した物を見た途端に驚き叫び出した。何せ袋から取り出したのはそのグリーンオーガの生首だった。


リサーナ「お、お嬢様…。そ、その生首はもしや……。」


セリスティア「ん?グリーンオーガだけど?念の為に持ち帰って来たけど…。」


リサーナ「嘘でしょ…。と言うかお嬢様!それ直ぐに捨てて下さい!汚いですから!?」


リサーナは直ぐ様に私が討伐したグリーンオーガの生首を捨ててくれとお願いするも私は直ぐに拒否した。


セリスティア「それは拒否するわ、それに心配しないで、討伐した際に近くの川でちゃんと生首を清潔に洗ったからさ。」


リサーナ「そう言う問題じゃありませんって!?もしそれを奥様が眼にしたら…。」


シフォン「リサーナ、リサーナ。」


するとシフォンがリサーナの肩をポンポンと叩きながら横から会話に入ろうとする。


リサーナ「何ですシフォン!?今、私はお嬢様と話してる最中で…。」


シフォン「玄関前に奥様が。」


リサーナ「え?」


リリアナ「………。」


全員の目線を屋敷の玄関前の方へと振り返ると、私を出迎えて来たリリアナお母様が何時から居たのか、私を見つめながら硬直していた。


セリスティア「あ!お母様、只今戻りました。」


リリアナ「セ、セリスティア…。そ、その姿とそれは一体?」


お母様は今の姿の私に指差しながら、私に聞き出し、私は直ぐ様に答えた。


セリスティア「ああ、これ?実はグリーンオーガを討伐した証として生首を斬ってしまった際についやっちゃって…。」


リリアナ「きゅぅ……。」


魔物の返り血姿の娘と、その魔物の生首を直で見たお母様は眼を回しながら倒れてしまう。


セリスティア「ちょっ!お母様!?」


リサーナ「奥様ぁ!?気を確かにぃ!!」


気絶し倒れたお母様を、直ぐ様に私はカレンとレイラ達と共に気絶してるお母様を屋敷の中へと運び出した。





朝食の最中、私は、今回の朝の迷宮攻略での事をお父様に伝えると笑いながら言った。


ルーファス「ハッハッハ、私が執務してる間にそんな事があったのか。」


リリアナ「貴方ったら、笑い事じゃないわよもう…。セリス、お願いだからお母様を困らせないがてら血塗れにならないで頂戴。あと、魔物の生首とかも勘弁して…。」


お母様は頭を抱えながら、私が血塗れにならない様に注意した。


ルーファス「致し方無いだろう、何せこれはクリムゾンから与えられたセリスティアの新たな訓練内容だからな。」


カレン「申し訳有りませんリリアナ殿、これも叔父上からの指示でして。」


そう、実はグリーンオーガと言った迷宮主の生首を持ち帰ってるのには理由がある、カレンからの通達で何でも迷宮攻略に成功する毎に実績獲得の証として迷宮主の生首を1つずつ、屋敷に置かなければならない、何でもクリムゾン騎士団長曰く。


迷宮ダンジョンと言う特殊災害はそもそも内部の構造も、何処から魔物や宝箱の中の道具アイテムが現れるのも、まだ誰にも解明されていない部分が数多く謎とされている、とくに、最下層の迷宮核を守りし迷宮主の場合、時には運悪く自分よりも強い格上の迷宮主に遭遇したり、時には運良く自分よりも弱い格下の迷宮主と遭遇したりする、例えどの様な主と戦ってもその時はセリスティア、手加減せずに全力を持って倒すべし。』


そしてこの1年間、私はカレンからクリムゾン団長への課題を毎月行い続けた結果。


リリアナ「それは分かります、分かりますがだとしても毎日毎月に屋敷内の色々な場所に魔物の首やら頭の骨やら置かれては流石にやり過ぎにも程が有ります!?」


ルーファス「ま、まあまあリリアナ、落ち着きたまえ、そのお陰で我が家の警備も今日まで安泰してるじゃないか。」


リリアナ「確かに…。貴方の言う通りにそれも一理有りますが。セリスティア、念の為に聞くけれど貴女、迷宮攻略をどのくらいやり遂げたのかしら?」


迷宮攻略を成功した回数?そう言われて見れば、あんまり数えた事が無かった様な気が…。そう考えてるとレイラが私の代わりに答えてくれた。


レイラ「的確に言いますと、378回で御座います、奥様。」


ルーファス&リリアナ『378回!!?』


ガシャァン!!と、偶々食器の片付けに台所からやって来たリサーナは私達の会話を聞いたのが開いた口が塞がらずに仰天したまま、力が抜けたか、両手に持ち抱えた食器を全て割ってしまう。


リサーナ「も、申し訳有りません!!」


ルーファス「い、いやいやいや、け、怪我が無くて何よりだよリサーナ。」


予期せぬ数字にショック受け続けたままお父様は仕事に失敗したリサーナの元へと駆け付け心配しながら、皿の破片を掻き集める。


そんな最中にリサーナは皿の破片を1つずつ片付けながら、私の異常なる迷宮攻略の回数に驚愕し続けていた。


リサーナ{い、1年間で迷宮攻略を、さ、300越え何て嘘でしょこんなの!?な、並の冒険者なら兎も角、銀級シルバー金級ゴールドの冒険者すら1年以内に100回以上の迷宮攻略の成功は無理なのに、セ、セリスティアお嬢様って一体!?}


ルーファス「………とは言え、今日で共に朝食を過ごすのも、最後になるのか。」


セリスティア「………。」


ポツリ、と、お父様のその一言でダイニング内の空気は沈黙と化する。お父様だけじゃない、お母様も、私も、私の隣に座ってるカレンも、私の背後に立つレイラも、そして皿の破片を拾い集めてるリサーナさても手を止めてる。そして、この沈黙を先に破ったのは…。


セリスティア「……そっか、今日で家族と一緒に朝食食べるのは最後何だね。」


私だ。お母様は手に持ったフォークをテーブルに置く。


リリアナ「……そうね、まさかこんなにも早く私達の娘が自立する何て思わなかったわ。」


ルーファス「ああ、エンディミオンに入学予定日より1年早くセトランドへ上京するとはな…。」


自分の娘が離れ離れになる事に、切なさを感じた両親は少し悲しげな表情をするも、私は2人に謝った。


セリスティア「お父様、お母様、御免なさい、私の我儘のせいで最後まで付き合わせてしまって…。」


ルーファス「いや、良いんだセリス、今のお前の逞しいその姿を見たら、この村に居ても立ってもいられなかったのだろう。」


リリアナ「貴女ならきっと、広い世界を見ながら強く逞しくなるわ。」


お父様は目線をカレンとレイラに向け、私の事をお願いした。


ルーファス「カレン、娘の『聖女』としての護衛と指導を引き続き頼む、レイラ、私達に代わってセリスの事、頼んだぞ。」


レイラ「畏まりました。旦那様と奥様に代わり、全力を持ってお嬢様をお世話致します。」


カレン「お任せ下さい、お二人の意志を裏切らない為に、必ずやセリスティアをお守りします。」


朝食を済ますと、レイラから部屋に戻り本国へと向かう準備をする様に言われる。


レイラ「さぁ、お嬢様、御朝食を済ませたら直ぐにお部屋に戻って出発のお支度を致しましょう。」


セリスティア「ではお父様、お母様、私はそろそろ…。」


ルーファス「私達も朝食を済ませたら先に村の中央広場に向かう、それまでに村でやり残した事を済ますんだぞ、セリス。」


リリアナ「出来ればその、部屋に置かれてる()()()も何とかして頂戴ね…。」


額を青ざめながら、お母様の言うアレらとは、言わずもがなオブジェ代わりに置かれてる私が討伐した迷宮主の生首や頭骨の事だ。


セリスティア「では、私は部屋に戻らせて出発の準備を致しますので、失礼します。」


私はお父様とお母様に向かって礼儀正しくペコリとお辞儀をしてから、レイラとカレンと共に部屋へと戻って行った。


ダイニングから去る娘の姿を見て、ルーファスとリリアナは淋しげな笑顔をしながら夫婦で話し合う。


ルーファス「……皆に迷惑掛ける程の我儘のかたなりだったあのセリスティアが、心が入れ替わる程、こんなにも逞しく凛々しくなる何てな。」


リリアナ「ええ、子供の成長は兎も角、性格まで心変わりする何て思いもしませんでした。」


ルーファス「成る程、心変わりか…。」


あの日、もし娘の、セリスティアの頭上に植木鉢が落ちて来なかったら、今頃、自分達の娘は我儘癇癪の塊だった前の性格だっただろう。


けれど、今は幸せだと、ルーファスは心から感じだのだった。





私の部屋に戻ると、部屋内には今まで私が討伐した迷宮主の生首や頭骨が部屋のありとあらゆる場所に置かれていた。


セリスティア「………この部屋で過ごすのも、今日で最後なのね。」


レイラ「そうですね、本当に、寂しくなります。」


セリスティア「出発の準備をするとは言ったものの、屋敷中に置かれてある全ての迷宮主の頭とかはどうするのカレン?まさか此処に放置とかは、しないわよね?」


屋敷に置かれていた今までの迷宮主の生首や頭骨とかはどうするのかをカレンに聞き出すと、カレンはその事を私に話した。


カレン「それなら心配無い、今まで倒したボスの首や頭骨はセリスが本国に上京して暫くしたら、城の騎士団が全て本国にへと運び出される予定だ。」


レイラ「でしたらもう、屋敷に置かれる必要は無いのですね。」


セリスティア「となると、庭のド真ん中にずっと置かれたあの大型魔物のアレも?」


アレとは、2週間程前に討伐したフォーアーム・ミノタウロスの事だ。あの魔物を倒すのはかなり一苦労したよ、何せレベルも40越えながら、HPと攻撃力が高く、名前の通りに4本の腕を持つ大斧2本の使い手ながら、あれから繰り出される乱舞は非常な攻撃力を持ってたけど、カレンの防御や援護が無かったら今頃私はとっくに死んでいただろう。


カレン「例外無くな。」


レイラ「そう言えばお嬢様、この洋服棚の上に置かれていた。木箱の中の破片とかはどうしますか?」


レイラは両手に抱え持った木箱の中の1つを取り出し、私とカレンに見せる。


セリスティア「ああ、ダイヤモンド・ハイガルフの皮膚片ひふへんね…。あれはとても凄く硬かったよ、本当に…。」


ダイヤモンド・ハイガルフ。名前の通りに煌めく宝石の様な頑丈な皮膚を持つガルフ系統の大型魔物、レベルは35ながらも1500をも超える異常な数値の防御力を始め、鉄の鎧をも切り裂く、砕く爪と牙を持ち、そして、口を展開すると事で発動する炎属性貫通攻撃魔法『火熱線ファイヤー・レーザー』。


正直、あの攻撃魔法はヤバかった。一度でも当たったら身体をも溶断する程の貫通力、最悪即死は免れ無かった。あの頑丈な皮膚は通常の斬撃は疎か、魔法剣での斬撃すら弾かれる程の硬さ、しかも数回斬り込んだだけで刃毀れしてしまう。


だけど無敵じゃない、どんなに頑丈な身体でも同じ所に攻撃を与え続ければどんなに防御力が高くても亀裂が生まれる、幸いながらダイヤモンド・ハイガルフに再生能力が無かったのが幸運、最後にハイガルフの頑丈な身体の亀裂の部分に剣を突き刺すと共に魔法剣を使って内部爆発させて倒したけど、その代償として身体を粉々にしてしまったわ本当に、まあ、そうでもしないと勝てなかったから致し方無い。


他にもミノタウロスやハイガルフの様な強い迷宮主と戦ったけど、レベルの差とかではなく実力の差でカバーして何とか速攻で討伐しまくったりと、まあ、気が付けば私のレベルは既に30を越えていた。


セリスティア、現在のレベル32。


セリスティア「それにしても…。屋敷中にある迷宮主の首、全部王国に運ばれるのは分かるけど何に使うの?」


カレン「主の頭部は全て、魔物関連を研究してる学者や魔法学校に寄付、いや、この場合は買い取る予定だそうだ。」


つまり屋敷中にある主の頭部は1つ残らず全部売り飛ばされる予定なのね、だとしたら分配はどうなるんだろうと考えるとレイラがわざとらしい大きな咳をする。


レイラ「コホン!お二人共、周りの魔物の頭部の事は後回しにして今はお嬢様の出発の準備をして下さいませ。」


セリスティア「は、は〜い。」


カレン「こ、これは済まないレイラ殿…。」


私達3人は急ぎ、クローゼットや棚から必要な洋服や下着、日用品などを旅行鞄に収納し、ついでに私が何時でも帰省出来る様に部屋も片付けたのだった。





ディオス村の中央広場、私達がこれから乗車する馬車が待機し、私達3人はお父様とお母様を始め、使用人達、領主であるアルフォンズ様、ガイアーさん達自警団の皆さん、数多くの村の皆が私達を見送りに来てくれた。


セリスティア「皆さん、お見送り有難う御座います。」


ガイアー「セリスティア様が居なくなると、本当、寂しくなっちまいますわ。」


ガイアーの妻「本当ね、エレイナ様とノービス様、エリシア様に続けて子供達が誰1人もこの村に居なくなる何てね…。」


村人A「あっちでも頑張って下さいね!お嬢様。」


村人B「どうか身体にお気を付けて!」


村の皆が私の旅路を応援される最中、アルフォンズ様が領主として私の前に姿を現すを。


アルフォンズ「セリスティア…。」


セリスティア「アルフォンズ様。」


アルフォンズ「1年、1年と言うのは早い物だ。我が子達に続いて君までこの村に旅立つとは。もし、本国でエレイナとノービス、マリアンヌに会えたら私は元気だと伝えて欲しい。」


セリスティア「はい、3人にお会い出来たら必ずや、お伝えします。」


お父様とお母様が前に現れ、私に見送りの言葉を伝えられた。


ルーファス「セリスティア…。」


セリスティア「お父様、お母様。」


ルーファス「昨日私が渡した例の紹介状は大事に持ってるな。」


セリスティア「これの事ですよね?」


私は懐から1通の封筒をお父様に見せる、これは昨日の夜、お父様から渡された物だ。


ルーファス「そうだ。この紹介状を本国の中央街にある『雌牛の足跡』と言う3階建ての酒場兼宿屋で女将をしているマーサと言う女性に渡すんだ。」


リリアナ「彼女は信用出来る相手だから、きっと宿部屋を貸してあげられるわ。」


そのマーサと言う人物は恐らくお父様とお母様の頼れる知り合いなのだろう。


ルーファス「それともう1つ、これを。」


更にお父様から中身が入った手作りの布のポーチを手渡される、中身を確認すると、中には銅貨やら銀貨やらがずっしり入っている。


ルーファス「生活資金だ。」


セリスティア「生活資金って、こんなに…。」


ルーファス「もしもの為に溜め込んでいたんだ。……仕送りは出来ないが。」


セリスティア「その時が来たら、此方で何とか致します。」


レイラ「私も、お嬢様が無駄遣い致さない様に確りと管理致しますので。」


セリスティア「いや流石にしないわよ!!」


結果。レイラは私の手に持ったお金の入ったポーチを『没収します。』と言いながら強引的に預けられてしまい、周りの皆は歓喜に笑い合う。もう、勘弁してよ皆…。


メイド長をシーナを始め、クラリスロード家に仕える数人の使用人達は旅立つ私の事をレイラにお願いされていた。


シーナ「ではレイラ、お嬢様の事を頼みましたよ。」


シフォン「屋敷の事は私達に任せて〜。」


リサーナ「こらシフォン!……後の事をお願いします、レイラ。」


レイラ「はい、承知致しました。」


使用人達に私の事を託されるレイラ。


カレン「そろそろ出発をしようか。」


セリスティア「ええ、それじゃあ皆、行って来ます。」


私達3人が馬車に乗り込もうとすると、工房の方から3人の鍛冶師が武器や防具を持ち抱えながら皆の元へと合流する。


ガザム「な、何とかギリギリ間に合ったわい!」


セリスティア「ガザムさん!」


ガザム「実は工房長に頼まれましてね、お嬢様、此奴をどうぞ受け取って下さいやせ。」


そう言いガザムさんは布で包んだ物を私に渡す、中身を確認しようと包んだ布を開いたら瞬間、私は驚いた。


セリスティア「これってもしかして、白金の剣!?しかも3本も…。」


ガザム「お嬢様の旅路の日までに少しずつですが、白金プラチナを溜め込んで造りました。後、此方の上皮の鎧もどうぞ。見た目は普通の上皮ですが中身はカーボンを埋め込んでの二段構造になってます。」


マーカス「他にも、上革製の篭手や長靴も用意致しました。受け取って下さい。」


セリスティア「凄い、お父様!皆!本当に有難う御座います!」


ルーファス「礼は良いよ、これで旅路に必要な物は揃えた様だな。カレン。」


カレン「は、はいっ!」


ルーファス「クリムゾンに会えたら伝えてくれ、セリスティアを宜しく頼むと。」


カレン「分かりました。必ずやお伝えします。」


そして私達は皆にお礼を言い、馬車に乗り込み、出発した。


セリスティア「それじゃあ皆!行って来まーす!!」


ディオス村の皆は手を思いっきり振りながら私の門出を見送っていく。


ガイアー「頑張って下さいお嬢様!」


村人A「お気を付けてー!」


村人B「セリスティアお嬢様万歳ー!!」


こうして私は、お付きメイドのレイラと戦闘の師匠である女騎士カレンの2人と共に、長年産まれ育ったこのディオス村から旅立った。


今だけはサヨナラ、だけど必ず帰って来るからね!


1人の悪役令嬢は故郷を旅立ち、新たな物語の舞台へと進んで行った。果たして、悪役令嬢の前にどの様な新たな物語が記されるのかは、それはまだ、彼女次第に過ぎない。





………。


…………。


セリスティアの乗る馬車が見えなくなると皆、淋しげな顔をしながら話し合った。


ガイアー「…旅立ってしまわれましたな、ルーファス様。リリアナ様。」


ルーファス「ああ、まだ12になったばかりの娘が早くも自立するとはな…。思いもしなかったよ。」


リリアナ「けれど、寂しくなりますね。」


ルーファス「ああ…。そうだな。」


リリアナ「でも、何時までも悲し続ける訳には参りません、そんな顔をしたらセリスティアが心配して帰って来てしまいますから。」


悲しさを乗り越えて涙を拭き強気になるリリアナ。


リリアナ「それに、まだセリスには伝えていない事がもう1つありますし…。」


微笑むリリアナは自分の腹を優しく擦る、村の者達はリリアナのその様子を見て何人か察した。


アルフォンズ「リリアナ、その様子を見てまさかと思うが…。」


リリアナ「ええ、少し前に懐妊したのです。」


ガイアー「て、事はつまりおめでたですか!?」


突然のリリアナの妊娠にルーファス以外の者達は一斉に驚き出す。


アルフォンズ「しかしリリアナ、妊娠は喜ぶも、この事をセリスティアは知っているのか?」


しかし、意外ながらリリアナは微笑むも頭を横に振ると、ルーファスと共に説明した。


リリアナ「いいえ、これは貴方と一緒に考えて決めた事なの、セリスが帰って来たら思いっきり驚かそうと思ってね。でしょう?貴方。」


ルーファス「そうだな、果てさて、産まれるのは男の子か、女の子か、楽しみだ。」


この事を知らない私達は今から数年後、村に帰還し見覚えの無い少女が私の事を『お姉ちゃま』と呼ばれるのはまた。


別のお話って事で。

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