悪役令嬢、友人達と哀しみを共有しながら号泣する。
………あれ、此処は一体?
家の屋敷とは違う、見慣れない天井だ。
と言うか、どうして私は意識を失ったんだっけ?そうだ。思い出した。私は確かエレイナお姉ちゃんを助ける為に自ら庇ってそのまま攻撃を受けてそれから…。
駄目、思い出せない、私が死んでいないって事はまだ生きているのよね、そうだ。エレイナお姉ちゃんは?レイラは?カレンはどうなったの!?
私は直ぐ様にベッドからゆっくりと起き上がろうすると誰かが私に呼び掛けて来た。
エリシア「………お姉様?」
セリスティア「………エリシア?何で貴女が此処に?」
互いに見つめ合った瞬間、糸が切れたのか、起きたばかりの私を見つめながらエリシアはポロポロと涙を流すと共に私を抱き締めながら泣き出した。
エリシア「うわあああああん!!お姉様!!お姉様ぁ!!本当に、本当に無事で良かった…。」
セリスティア「エリシア…。」
エリシアの泣き声が部屋の外に響いたのか扉が開くと共に何人か入室して来た。
ルーファス「セリスティア!」
セリスティア「お父様、それにレリウス様にアルフォンズ様も。あの、此処は一体何処なのですか?」
ルーファス「大丈夫だ。此処はディオス村の診療所、森で怪我を負ったお前達は自警団の皆に運ばれ、此処で治療と共に入院していたんだ。」
レリウス「それにセリスティア、特に君は意識を失って3日も眠り続けていたんだ。」
セリスティア「3日も……。」
そうだ。此処が診療所の病室となるとお姉ちゃん達の方はどうなったの!?私はお父様達に3人の安否がどうなったのか聞き出した。
セリスティア「そうだ。お父様!レイラは?カレンは?エレイナお姉ちゃんは無事なの!?」
ルーファス「それは……。」
アルフォンズ「………。」
レリウス「………。」
3人が突然と黙り込む、もしかして意識を失っている間に3人の身に何かがあったの!?いや、嘘だと言って。誰でも良いからお願い、嘘だと!!
???「………カレンと子供達は無事に命は取り留めた。とくに領主の娘であるエレイナ嬢は一時的に危険状態だったが別状は無い。今は隣の病室にて眠り続けている。」
その時だった。病室の窓の方から鎧を着込んだ見慣れない赤髪の騎士が私に話し掛けて来たと共に姿を現す。嘘でしょ?何でこの田舎の村にこの人が居るの!?
セリスティア「貴方様は、まさか……。」
ルーファス「………カレンからの報告を聞いて予期もしなかった。セリスティア、お前にはどうしても伝えてなければならない大事な話がある。」
父の口から伝えられた大切な話、恐らく、この人が関係しているのだろう、宰相にして魔法学校の学園長であるレリウス様も、村の領主であるアルフォンズ様も関わっているとなれば。
クリムゾン「既に私の事も存じてるだろうセリスティア、改めて自己紹介させて貰うよ。私の名前はクリムゾン・F・フレイローズ。聞いているかもしれないが、カレンの叔父でセトランド国王直属部隊『炎の騎士団』の騎士団長を勤めている。」
クリムゾン・F・フレイローズ。
セトランド王国を護りし『盾』にして国王直属部隊『炎の騎士団』の騎士団長にして攻略キャラが1人、フレイジェル・F・フレイローズの父親にしてカレンの叔父に当たる重要人物。でも、どうしてこの様な偉い方がディオス村、しかも私の前に現れたのかと考えているとお父様がクリムゾン様との関係を私に伝えた。
ルーファス「クリムゾンは私とレリウスと同じく魔法学校に通った友人の1人でな、彼はレリウスに次ぐ魔法の才の持ち主だった。」
レリウス「ルーファス、昔話はよせ。」
ルーファス「ああ、分かってる。セリスティア。その右手を私達に見せてくれ。」
セリスティア「右手をですか?はい、分かりました…。」
何故、お父様達は私の右手を見せなければならないのかと複雑な表情をする最中、4人の大人達は驚愕した。
アルフォンズ「こ、この手の甲の紋様は!?」
レリウス「ああ、間違い無い、此処から光の魔力が感じている。」
ルーファス「だとしたら、やはり娘は…。」
レリウス「認めざるを得ないかもしれないな…。セリスティア、自分の右手の甲を良く見るんだ。」
私はお父様の言う通りに、自分の右手の甲を確認すると金色の剣の形をした痣があった。この痣が何なのか、私は知りながら身を震え出した。
セリスティア「これって…。もしかして……。」
クリムゾン「聖女の証である金色の剣の紋章だ。」
聖女の証…。それを見つめながら私は理解した。ああ、結局どの道、銀竜様によって私は聖女にされる運命だったのかと金色の聖女の証の紋章を見て逃れられないと私は判断した。
セリスティア「つまり…。私は、伝説の聖女になられたのですよね?」
クリムゾン「そう言う事だ。」
セリスティア「あの、因みにですけど、聖女って直ぐに拒否出来るのでしょうか?」
大人達は黙り込み、何も言わずに私をじっと見つめる、ああ、こりゃ断れそうな空気じゃないわねこれは…。
セリスティア「ですよね……アハハ。」
ルーファス「とは言ったものの、クリムゾン、やはりセリスティアの聖女としての覚醒の件は国王陛下に?」
クリムゾン「うむ、済まないがルーファス、例え友人であるお前の頼みでも、王陛下相手に隠す訳には参らないからな…。」
レリウス「そうなると、セリスティアの今後の事も…。」
クリムゾン「王命が下される可能性も有り得るかもしれん、近い内に。」
大人達は暗い雰囲気の会話を黙って聞いて見ると、恐らく聖女としての私の今後の事に関してだろう。
私の今後…。もしかしたらこの先の人生、王族に管理される可能性もある、何せ聖女と言うのはこの乙女ゲームの世界にて、魔族の王である、魔王を倒す重要な存在だからだ。
本来なら主人公であるアリスがなる予定の筈なのに、銀竜はどうして悪役令嬢である私に『聖女の加護』と『聖剣』を託された。
だとしたら、この乙女ゲームの物語の歴史は少しずつだけれど改変されて行くだろう、私の知らない。『CRYSTAL SYMPHONIA』の物語が展開する…。そう考えているとレリウス様が話し掛けて来た。
レリウス「セリスティア。」
セリスティア「レリウス様…。」
レリウス「大丈夫だ。君が心配をする必要は無い。ルーファス、いや、君のお父上やクリムゾン、領主のアルフォンズ殿も、君が聖女に目覚めた事をどうにかしなければとちゃんと話し合っているから安心して欲しい。」
お父様やアルフォンズ様、クリムゾン騎士団長にレリウス様なら、きっと私の今後の事を何とかしてくれるだろう。それよりも、問題はまだ1つ有る、魔獣ジャイアントボアの事だ。私は倒した魔獣がどうなったのかをレリウス様に聞き出した。
セリスティア「レリウス様、お聞きしたい事があります。私が意識を失った後、あの魔獣はどうなりましたか?」
レリウス「ああ、あの魔獣か、私達が駆け付けた時はもう既に魔獣は息絶えていた。遺体は溶け崩れて回収不能な状態だからね。あのまま放置し続けたらならないと思って自警団に頼んで火葬させた。もう二度と復活しない様に…。」
セリスティア「そうですか…。」
火葬か、恐らくだけれどあの魔獣には違和感があった。魔法が使えない筈が別の魔法を使用する寄生植物型の魔物であるトロンペや、額に生やしたあの異形な巨角も恐らくは別の魔物の身体の一部、もしかして人間、或いはこの世界を憎んでいる誰かの手によって改造された可能性があるかもしれない。
セリスティア「…あの、クリムゾン様。私は一体どうなるのでしょうか?」
クリムゾン「………これは私の考察だが、聖女に目覚めた君は恐らく、王国の監視下に入るだろう。そしてもう1つ。近い未来にて魔族の王。『魔王』が復活する。」
ルーファス「魔王だと!?だとしたらやはりセリスティアの聖女の目覚めも…。」
クリムゾン「偶然、ではないだろう、直ぐにでもセリスティアの身元を王国へと引き渡さなければならない。」
セリスティア「私が、本国へ……。」
そうか、セトランド王国へ行けば、私の身元の安全も保証されるだろう。物語の進行よりも早いけれど王国内で力を付ければ…。
エリシア「お姉様……。」
その時だった。エリシアは悲しげな顔をしながら私を呼び掛けた。話し掛けたら、今にでも涙が溢れ零れ再び泣き出しそうになる程に、エリシアは震えながら私に言った。
エリシア「お姉様、私を置いて王国へ行ってしまわれるのですか?」
セリスティア「エリシア……。」
そうだ。もし私が本国へ行けばもうエリシアには、エリシアだけじゃない、エレイナお姉ちゃんやノービス、ディオス村の皆にも。
エリシア「そんなの嫌です!折角、折角お姉様が目覚めたばかりなのに、離れ離れになる何て……。私、私っ……。」
レリウス「エリシア、気持ちは分かる、だけどね、セリスティアが聖女になってしまった以上は王国へと移り住まなければならない。分かってくれ。」
エリシア「分かりません、分かりませんよお父様!どうして、どうしてそんな事を…。」
レリウス「エリシア……。」
エリシア「お父様の馬鹿ぁ!!」
レリウスはエリシアを引き止めようと呼び掛けるも時既に遅し、エリシアは病室から飛び出して行った。
レリウス「エリシア!……くっ、娘を説得する事も出来ないとはな、本当に父親失格だ。」
ルーファス「レリウス…。」
お父様に慰められる最中、レリウス様はアルフォンズ様と共に私に感謝の言葉を伝えられた。
レリウス「………セリスティア、先程のエリシアの事、父として本当に申し訳無い、そして、娘を助けてくれて有難う。」
アルフォンズ「私の方もだ。エレイナとノービスを、私達夫婦の大切な宝を救ってくれて本当に感謝する。有難う、セリスティア。」
セリスティア「違います…。あの脇腹の火傷の傷は、止血する為に私の攻撃魔法を使って仕方無く……。」
私は炎魔法でお姉ちゃんを治療された事を伝えるも、アルフォンズは私を責める処か、逆に私に感謝したのだ。
アルフォンズ「診療所の先生から話は聞いている、まさかこんな治療法が存在するとはな、それでも、娘を、エレイナを助けた事には変わりは無い。本当に有難う。」
セリスティア「アルフォンズ様……。」
クリムゾン「さて、そろそろ本題に入ろうか、セリスティア。」
クリムゾン様は真剣な顔をしながら私を見つめる。そして、本題の話を語り始めた。
クリムゾン「魔獣被害は拡大している、王国周辺の領地内にある各村々にも被害は発生し続く一方、王国兵と冒険者ギルドとの連携を取って何とか抑えられているも、君の暮らしている村だって何時何処で襲撃されるのかも分からない始末。」
セリスティア「………。」
クリムゾン「だから単刀直入に聞こう、セリスティア・K・クラリスロード。この世を救いし『聖女』になり。『魔王』を討ち倒す覚悟はあるか?」
*
外の空気を吸おうと診療所の外に出た私は、近くの木製のベンチに座りながら夜空を見上げると共に、先程のクリムゾン様の本題の話を思い出していた。
セリスティア「………。」
クリムゾン:回想『この世を救いし『聖女』になり。『魔王』を討ち倒す覚悟はあるか?』
セリスティア:回想『私が、魔王を倒す?』
クリムゾン:回想『そうだ。君も聖女の物語を存じてる通りに、魔王を倒すには聖女の力と伝説の聖剣、そして聖女を支えし4人の『聖具使い』の存在が必須だ。もしこのまま魔獣の被害が拡大し続ければ、王国での抑止力も硝子の様に崩れ砕けるだろう。』
セリスティア:回想『それは、クリムゾン様の言う事は分かります、ですが、私はまだ11になったばかりの少女です、』
クリムゾン:回想『しかし、その11の少女が、カレン達、信頼出来る仲間達と共に魔獣を討ち倒した。今がその時なのだ、セリスティア…。』
セリスティア:回想『………お父様はどうしたいですか?』
ルーファス:回想『私も、本来ならセリスティアに聖女と言う重い役目を引き受けさせるのは正直に言えば、反対だ。しかし、それを決めるのは私達親ではない、セリスティア、お前自身が考えて決めるんだ。』
セリスティア:回想『お父様。………そうですよね、でしたらクリムゾン様、考えさせて下さい。いきなりこんな重過ぎる役割を引き受けられる訳にはまだ参りませんので…。』
クリムゾン:回想『ルーファス!』
ルーファス:回想『クリムゾン、娘に考える時間を与えてやってくれ、娘がこれから何をどうしたいのか、何をすれば良いのかを。』
クリムゾン:回想『………致し方無いな、良いだろう、暫く我々はこの村に滞在する。滞在期間が終わるまでの間に決めて欲しい。』
病室での大人達との話し合いの記憶を思い出し終えると、私は溜息を吐きながら、体育座りの状態で呟かした。
セリスティア「……私、これからどうしたら良いんだろう?」
エレイナ「こんな夜更けに何1人で勝手に黄昏てるのよ?」
私に声掛けて来た。声の方を向けると、レイラと松葉杖で付いて歩くエレイナお姉ちゃんの姿があった。
レイラ「とは言え心配致しましたお嬢様。診療所内に居ないと思いきや、外に出ていたとは…。」
セリスティア「御免なさいレイラ、少し外の空気を吸いたくてね…。それより2人共、怪我の方は大丈夫?」
2人が包帯まみれの姿になって、怪我してる事に私は気付く、エレイナお姉ちゃんは右脇腹を隠すかの様に腹に包帯を巻かれて、レイラも身体に幾つか傷は出来たけれど大した怪我では無かった。
レイラ「そう言うお嬢様も大丈夫なのですか、お身体の怪我の方は?」
セリスティア「確かに、胸に包帯巻かれた所は有るけれど、今の処は何とも無いわよ?」
そう言えば意識を取り戻してからは怪我の影響が何1つも無いのは可笑しい、もしかしたら『聖女の加護』の効果なのか『自然回復』の回復量が大幅に上がったのだろう…。
エレイナ「私の方は、正直に言うと助かったわ、あの時、セリスティアとカレン様が駆け付けて来なかったは今頃私はもう死んでたのかもしれないし、それに…。」
お姉ちゃんは服越しから腹に巻かれた包帯を取り、自分の右脇腹の傷を私に見せる。
エレイナ「お前の懸命な治療のお陰で私は生きてる、幸いながらら傷は残っちゃったけれどね…。」
そのお姉ちゃんの傷を見て私は罪悪感を抱きながら、エレイナお姉ちゃんに謝罪した。
セリスティア「御免なさいっ!私の治療せいで、お姉ちゃんの綺麗な身体に傷が…。」
エレイナ「馬鹿ね、謝る必要は無いわよ!悪いのは敵の強さも関係無く、無闇に突っ掛かった私が悪いんだから、まあ、ヒリヒリするけれどね!」
笑いながらお姉ちゃんは右手で自分の右脇腹の傷に手を触れても全然平気な顔をする。
エレイナ「あたたたっ…。」
しかし、傷を触り過ぎたのか痛みを感じてしまう。
レイラ「余り無闇に傷を触るからですよ。ほら、エレイナ様、お嬢様が座ってるベンチのお隣に。」
エレイナ「その前に、何時までコソコソと覗き見してるのさ!?さっさと出て来なさいエリシア!」
セリスティア「えっ?エリシア!?」
私とお姉ちゃんが座ってるベンチの離れの木の影から、ひょこっと悲しげな顔をしたエリシアが此方へやって来る。
エリシア「………。」
*
エリシアが私とエレイナお姉ちゃんの間に座り込むと、私が新しい聖女になってしまった事をお姉ちゃんとレイラに伝えると、レイラは驚くも、お姉ちゃんは変わらずに平然な表情をしていた。驚かないの?と思った途端、お姉ちゃんは私に言った。
エレイナ「だと思った。」
セリスティア「気付いていたの?私が聖女だと言う事を…。」
エレイナ「あの日、キャンプ当日での魔獣との戦いと後でね、受けた傷が再び出血して私が倒れてる最中、意識がぼんやりとしてるのけどさ覚えてるのよ、光輝くセリスティアが私の身体に触れてから、何かの魔法で治してくれたの。」
するとエリシアはエレイナの怪我がどうして治ったのか、察した。
エリシア「もしやと思いますが、その、エレイナ様のお怪我が治った切っ掛けは、『回復魔法』なのでは!?」
回復魔法?まさかと思うけれど私、何時の間にか回復魔法を会得したの!?そう言われて見れば、意識を取り戻してから何か私の身体に違和感を感じているけれど…。
後で1人になる時間があったら、念の為に総合値を確認してみよう。
セリスティア「………余り覚えて無いけれど、もしかしたら、そうかもしれない。」
エレイナ「ねぇ、セリスティア、一応聞くけれどさ、お前、まさかとは思うけど、聖女になろうとか言わないよね?」
セリスティア「………。」
レイラ「お嬢様…。」
もし私が聖女になれば両親を始め、お姉ちゃん、エリシア、お付きであるレイラとだって離れ離れになってしまうかもしれない。そう考えてる最中、お姉ちゃんは真剣な顔をしながら私に言った。
エレイナ「聖女になる、ならないはセリスティア、お前自身が決めろ。」
セリスティア「えっ!?」
レイラ「なっ!?」
エリシア「な、何を言ってるのか分かってるのですかエレイナ様!?まさかエレイナ様は、セリスお姉様が聖女になられる事を賛成なのですか!?」
エレイナ「反対に決まってるでしょうが!!………私だって、本当は反対だよ。でもね、決められるのは私達じゃなくてセリスティアなのよ…。どうしたら良いのか分からないじゃない!!」
そう言うと、お姉ちゃんは涙をポロポロと零し泣き出す、ああ、そっか、お姉ちゃんは最初から私と離れ離れになるのは嫌だったんだ。
エリシア「エレイナ様…。」
お姉ちゃんだけじゃない、エリシアだって、今にでも涙が出そうな程に悲しい表情をしていた。
アハハ、何やってんだろう私は、大切な友達を悲しませてさ…。
セリスティア「えっ…。」
気付くと私も、2人に続けて悲しんだのか、無意識に涙が零れ落ちて来た、何だろう、学校の友達が親の仕事の都合で転校するかの様に、離れ離れになる友達の気持ちが何と無く分かる気がする…。
レイラ「………あっ。」
セリスティア「あれ?何でだろう?何で私、涙何か?アハハ、どうしてだろうね?」
レイラ「………お嬢様、お嬢様は色々と頑張りました。もう我慢しなくても良いのです、泣いても。」
セリスティア「………良いの?私、良い歳こいて大泣きしちゃうかもよ?」
レイラ「当たり前です、何せ、お嬢様はまだ涙を流せる年頃の女の子ですから。」
ああ、そっか、私色々と無理をし続けたんだ。破滅√回避の為に自分を磨き鍛え、挙句の果てに命懸けで魔獣と戦って、悪役令嬢なのにまだゲームも始まってもいない子供だと言う事を忘れてたよ、
気が付けば、私はお姉ちゃんとエリシアと一緒に互いを抱き締めながら泣いていた。大切な友達が離れ離れになる哀しみなのか、それは分からない、レイラは私達の泣いている姿を見ないのか、後ろ姿で顔は見えず仕舞いなのか、身体を震えさせていた。恐らく、レイラも友人だと認められ泣いていたのだろう。
どのくらい泣き続けたのかは分からない、暫くして私達を探していたお母様達が私達を見つけると、泣き疲れた私達はぐっすりと眠りに堕ちていた。大人達は何も言わずに私達を病室の一緒のベッドに寝かせてくれた。
この時の私達は無意識に手と手を繋ぎながら眠ってた事を、翌日の朝、お母様から伝えてくれた。『結局、朝起きるまでずっと手を離さずに眠り続けたと。』まるで誰1人も離れ離れにならない様に心から願いながら。
*
その頃。
診療所2階の共有用の病室にて、カレンはベッドに上半身を起こしたまま、目前に立つ『炎の騎士団』騎士団長にして叔父であるクリムゾンに、自分の眼で見たセリスティアが聖女に覚醒した事を全て報告していた。
カレン「………以上が、私の眼で見た。セリスティアの聖女覚醒の報告です。」
クリムゾン「………そうか、この様な状態のままでの報告、御苦労だった。カレン。」
カレン「いえ、これは部下として、一騎士として突然の役目です、叔父上、いえ、団長。」
クリムゾン「そう固くなるな、叔父上と呼んで構わない、今の処、お前以外の他の団員達は村管轄の草原地帯にて設置したテントで待機させている。」
カレン「そうですか、では、改めまして叔父上。此度の本国からの御足労、誠に有難う御座います。」
クリムゾンに向かって、頭を下げながら挨拶するカレン。怪我してるとは言え、騎士としての礼儀さは平然としている。
カレン「まさか叔父上自ら騎士団を率いて参られるとは思いも寄りませんでした。やはり、例の倒した大型魔獣の件で村に?」
クリムゾン「ああ、アルバ村の防衛を任せた者達から、このディオス村の方角に魔獣が進行したと報告を聞いてな、お前の事が心配して急ぎ予定より早く駆け付けてしまった。……済まない。」
カレン「…相も変わらずに、私の事を心配し過ぎですよ、叔父上。」
クリムゾン「済まないな、つい昔の癖で。…幼い頃に、転んで怪我して泣いてるカレンを思い出してしまった。」
カレン「一体何時の頃の話ですか!?」
顔を真っ赤にしながらカレンはクリムゾンが自分の昔の恥ずかしい過去を話した事を怒り出す。
クリムゾン「……兎も角、子供達を良く守ってくれたな。」
カレン「………いえ、私は今回の大型魔獣との戦いで分かりました。今の私はまだまだ実力不足です、叔父上には追い付けません。」
クリムゾン「確かに、この様な怪我では実力不足だと認めざるを得ないだろう。だが、そう急かす必要は無い、今は療養する事だけに専念しろ。」
そう言いながらクリムゾンはカレンの頭を優しく撫でる。
クリムゾン「カレン、騎士団がディオス村の滞在期間が終えたら、その、何だ。共に本国に帰還しないか?」
カレン「!!」
突然の帰還を叔父・クリムゾンに伝えられたカレンは戸惑うも、クリムゾンは話を続ける。
クリムゾン「直ぐに決めろとは言わない、滞在の期間が終えるまで、それで構わない…。」
カレン「………分かりました。考えさせて頂きます。」
進み行く其々の運命、私達は何時までも共に過ごし続ける時間はある日を境に突然と積み木の様に崩れて行く。
私達が病室のベッドで眠ってる最中に、大人達はとある話し合いをし、皆一致で賛成した。
そう、私達の願いは天に届かずに、別れの時がやって来た事を。
次回
1章、最終回。