閑話。 悪役令嬢のお姉ちゃんは不仲のお付きメイドの秘密を知る。
セリスティアとカレンが魔獣ジャイアントボアと戦ってる少し前、ディオス村出入口前にてタイミング良く村中の見回りを終えたディオス村自警団の一行は疲れた顔をしながら、地面に座り込む。
自警団員A「いやぁ〜。今日も村中歩き回って疲れたわ〜。」
自警団員B「だよな、早く帰ってかみさんに酒と摘みを頼みとするわ…。」
ガイアー「全く、お前達と来たら何だそのだらし無さは!領主様であるアルフォンズ様が言ったろう、魔獣被害が落ち着くまで暫くは村の夜回りの強化期間を続けると。」
ディオス村自警団のリーダーであるガイアーは疲れ切った団員達を叱る、何しろ自分達が住んでいる村の周辺に魔獣が襲撃し対応しなければならないからだ。領主であるアルフォンズの指示で被害が無くなるまでは強化期間は続けて行くも、団員の1人が不満そうな態度しながらガイアーに話し掛けた。
自警団員B「しかしガイアーさん、こんなド田舎に魔獣何て来ますかね?」
自警団員C「確かにそうだよな…。」
ガイアー「俺はな、爺さんの代からこの村に生を成し遂げてんだ。生まれ故郷であるこの村を全力で守らなきゃならねぇ、お前等もこの村で生まれ育ったんなら自分達の手で守らねぇとならねぇんだぞ!?」
団員達はガイアーのこの村への守る思いを伝えられたか誰1人も言い返せずに黙り込む。
ガイアー「………悪い、少し言い過ぎた見たいだな、もう遅いしお前等はもう家に帰れ、後の仕事は俺1人で引き受けるからよ。」
自警団員A「し、しかしガイアーさん御一人だけでは流石に…。」
ガイアー「良いからさっさと帰れ、その代わり明日は真面目に夜回りを確りやれよ。」
4人の自警団員達は互いに顔を合わせながら思惑するも、致し方無くガイアーの言う通りに家に帰る事にして彼に挨拶した。
自警団員B「…分かりました。言う通りに家に帰りますよ、これ以上はかみさんや子供が心配しますんでね。」
自警団員A「では、ガイアーさん、俺達4人はお先に失礼を………ん?」
すると、森へと続く道の方角から2つの人影が村へと近付いてる事に1人の自警団員が気付く。
自警団員D「どうした?」
自警団員A「良く分からないが、人影らしき物が村に近付いてるんだが?」
ガイアー「何?総員警戒体勢に入れ!魔獣の可能性もある、槍を構えろ!!」
自警団員達『は、はいっ!!』
ガイアー達ディオス村自警団の面々は全員、クラリスロード武具工房製の鋼の槍を突き構える体勢に入る。しかし、村に近付く足音を耳にしたガイアーは自ら警戒を解いてその2つの人影をじっと良く見つめる。
ガイアー「いや、魔獣じゃない、この足音、人が?しかも小さい、子供?ま、まさか!!」
魔獣の攻撃を受けて全身打撲を負ったノービスを担ぎ歩くエリシアの姿があった。ゆっくりとディオス村へ向かって歩いて来る。2人だと気付いたガイアー以外の自警団員達は警戒を解き驚き出す。
ガイアー「ありゃあ間違いない!ノービス坊ちゃまとエリシア様だ!!」
エリシアがノービスを担いだまま村の出入口前に着くと、力尽きたかそのまま前伏せに倒れてしまうと自警団員達は直ぐ様に駆け付け、2人を会報する。
エリシア「あ、貴方様は…。じ、自警団の。」
ガイアー「へい!ディオス村自警団リーダーを勤めるガイアーです!エリシア様、これは一体…。しかも坊ちゃまのこの怪我は!?」
疲れ切った状態ながら、エリシアはガイアーに森に魔獣が現れた
エリシア「ハァ……ハァ……。ま、魔獣です。魔獣が、森に現れました!」
ガイアー「な、何ですって!?」
近くの森に魔獣が現れた事を知ったガイアー達、村の自警団の面々は全員驚愕する、ある者は青ざめ、ある者は額から冷や汗を垂れ流し、またある者は平然としてるが身を震えさせている事に、しかし、自警団リーダーであるガイアーは直ぐ様にこの現状を対応させ、団員達に指示した。
ガイアー「お前等!直ぐにこの事を領主様とルーファス様、そしてレリウス様に伝えるんだ!!」
自警団員C&D『は、はいっ!!』
ガイアー「そっちのお前等はノービス坊ちゃまを村医者の所へ運んで治療を!ついでに薬師の爺さんも叩き起こせ!」
自警団員A&B『は、はいっ!!分かりやしたっ!!』
4人の自警団員達は急ぎ其々の役目の為に駆け出す、2人はルークディオス領主の屋敷、クラリスロード邸、そしてレリウスの元へと。もう2人は負傷したノービスを担ぎながら診療所の方角へと駆け出して行った。
エリシア「それよりも、お願いです、セリスお姉様とカレン様が…。」
ガイアー「セリスティア様とカレン殿が…。そ、そう言えばセリスティア様達4人の姿が見当たらないのですが…。」
エリシア「えっ?」
エリシアは村の出入口の方角へと向けるも、新たな人影らしき形が1つも無く、エリシアは
エリシア「そんな…。さっきまで一緒に居た筈なのに。」
ガイアー「ま、まさか…。」
2人の目線は村の外へと写す、突然と姿を消したエレイナとレイラ。果たして、2人の行方は…。
*
暗い森の中、1つの影が森の中を駆け出していた。愛する自分の妹分を助けに向かう為に、少女、エレイナは急ぎ、大型魔獣と戦ってるセリスティアとカレンを助ける為に。
エレイナ{セリスティアとカレン様は今頃もうあの大型魔獣と戦ってる最中、さっきから強い風が吹き続けているけれど、もしかしてあれも魔獣が現れた何かしらの影響か何なの?いいや、今はそんな事はどうでも良い!}
右手に持った鋼の槍を握り締めながら、エレイナは走る速度を増す。
エレイナ「一刻も早く2人を助けに行かないと!!」
その時だった。
突然、真正面から魔力の風球がエレイナの足元目掛けて放たれ地面に着弾してエレイナは直ぐ様に走る足を止める。
エレイナ「うわっ!!ちょっ、今度は何なのよ!?」
目前の左の木の影から1人の人物が現れ、エレイナの前に立ち塞がる、瞬間、エレイナは現れた顔を見て何故、彼女が自分に攻撃魔法を放ったのか、自分達の立場を分かっても尚、彼女、レイラは自信の右手をエレイナへと向ける、攻撃魔法の発動体勢だ。
レイラ「………。」
エレイナ「……レイラ?アンタ今、自分が何をしたのか分かってるの?」
レイラ「………ええ、分かっております、領主貴族令嬢相手への攻撃魔法の使用。流石に許されないですよね?」
フッ、とレイラは小さく笑うと、エレイナは直ぐ様にレイラのメイド服の胸倉を掴み、木に叩き付けながら怒鳴り叫んだ。
エレイナ「レイラ・スクルド!!貴族令嬢である私に向かっての危害行為は自分でも分かってんでしょうね!?良く聞きなさい!!使用人や平民と言った一般の人間が貴族に逆らえば重罪なの!!こんな事をして、セリスティアが知ったらどうなると思ってんのよ!!?」
レイラ「………。」
エレイナ「私はこれから愛する妹を助けなきゃならないよ!其処を退いて、退け!!」
しかし、レイラは何も喋らずにただ単に冷たい眼差しでエレイナを見つめる。そんなレイラの態度を見たエレイナは更にレイラに怒鳴る。
エレイナ「黙っていないで何とか言いなさいよ!!お前だって自分の主を、セリスティアを守りたいのでしょうが!!」
メイドであるレイラが令嬢であるエレイナを地面に押し倒した。使用人とは思えない異常な行動、しかし、普段冷静沈着であったレイラはエレイナに怒鳴りながらこの状況を必死に伝え叫んだ。
レイラ「分かっていますよそんな事!!」
エレイナ「………え?」
レイラ「私だって、私だって本当は逃げたくなかった…。けど、命令だから致し方無かったんです、本当は自分が仕える主を、お嬢様を守る為に戦いたかった、けど!!」
自分の脳裏に浮かんだ。大型魔獣に挑もうとするセリスティアの、自分と主の命を捨てる覚悟を込めた熱い眼差しをレイラは思い出す。
レイラ「主の命令に従うしか他無かったんです!!貴女に私の何が分かりますか!?大事な物を失うと言う経験もまだ無い貴女に、2つ名を剥奪され、貴族としての立場を失くした令嬢の気持ちが!!?」
今、彼女は何て言い放った。2つ名と、エレイナはレイラを見つめながら察した。友人同様の扱い、数年の長い付き合いだったレイラの素性を。
エレイナ「………レイラ、まさかとは思うがお前、元…貴族だったの?」
レイラ「………………。」
涙ぐむ1人のメイドは自身と犬猿の仲であった主の友人に語り出した。ある貴族一家の出で幸せに暮らしていた1人の幼い令嬢の物語を、そして自分が何故、クラリスロード家に仕え、セリスティアお付のメイドになった系列を。レイラは悲しげな表情をしながら、語り始めた。
*
side LAYLA
私の名前はレイラ・スクルド。
鍛冶師の家系貴族であるクラリスロード家に仕えし今年で15歳になる予定の使用人にしてその貴族令嬢であるセリスティアお嬢様お付きのメイドを勤めている。
私は元は、セトランド王国貴族街の中級商業貴族の両親の間から世に生を受け、両親に愛されながら育てられました。父は家具の輸入行商を勤め、母は父の仕事の補佐をしながら私を育ててくれました。
たった2人の使用人だけ仕えさせ、小さなお屋敷で幸せな生活を送っていました。しかしそんな矢先、ある商人の男が父の前に現れたのです、その男は様々な土地を所有してる土地売買を専門とした方でした。
男の話によれば丁度、ある1つの土地が格安の値段で購入出来る情報を父に教えた。しかしこんな話を誰が信じるとでも?無論、父は断った。何しろ父は店を持た無くても行商のみでやり遂げたいからだ。そんな仕事をしてる姿を見て誇りに思った。
しかし、それがまさか反感を買うとは誰もが思わなかった。突然と仕入れ先の店や顧客との契約が次々と打ち切られ、鰻登りだった筈の父の仕事の業績も、売上も低下して行きました。何故こんな事が起きたのかはその理由はあの商人の男が非合法的な商売を行っている違法商売で、その商売は、父に反感を買ってる上級貴族達と繋がっており、父の根も葉も無い偽りの悪評を伝えられて評価は最悪に、更に父の仕事の人脈は崩壊し、結果、誰1人も父の輸入した家具を買わず、結果、王命により貴族としての身分を除名されると同時に2つ名である『W』の文字を剥奪された。
突然、貴族としての身分を失い、赤字続きで父の仕事は失脚し、住んでる屋敷も、家具も、何もかも差し押さえられるも、両親はそんな事は気にせずにまた裸一貫で輸入行商の仕事を出直す為に国を出た。また1から出直せられ再び幸せになれる。
そう思った数日後、両親は盗賊達に殺された。私の眼の前でだ。恐らく反感を買った上級貴族達が彼等を金で雇い、両親を口封じに殺したのだ。再び商人として成り上がらせない為に、こうして私はまたもや幸せになれる好機を失いました。
天涯孤独となった幼い私は1人、明日を生きる為に村から村へと、店から食べ物を盗み続けながら店の者に追われ続ける日々を送った。住む家も無い、頼れる親戚もいない、誰1人も私を助けてくれない、こんな絶望に満ちた苦しい日々を延々に繰り返し続くと、私はそう思った筈だった。
ある日、私は何時も通りに店から食べ物を盗み、店の者に追われてる矢先に運悪く捕まってしまった。このまま憲兵の元へと連れてくのか、はたまた奴隷として売られてしまうのか、そう思った時。
メイド「もし良かったら、其処の娘が盗んだ物を買い取らせてはくれませんか?お代は払いますので、その代わりと言っては何ですがその娘を見逃してはくれませんでしょうか?返答次第によれば、お金もお支払いしますので。」
1人のメイドが現れて私が盗んだ物を買い取り私を助けてくれたのです。店の者は呆れながら私を見逃してくれたのです、彼女は私を見下ろしながら、私を叱りました。
メイド「良い?良く聞きなさい、盗んだ食べ物を食したとしても腹は膨れる処か心は満たさないわ。」
幼いレイラ「……なら、どうすれば良いのですか?」
メイド「簡単な答えよ、良く働いて、お金を貰って、そのお金で食べ物を買うのです。」
幼いレイラ「でも、私、働く事何て……。」
私は泣きながら彼女に自分の素性を明かし、事の端末を話した。彼女はうんうんと縦に頷気ながら私の話を最後まで聞いてくれました。
メイド「そうだったの、そんな事があったのね、だけど、如何なる事情があったとしても盗みは駄目よ。」
そう彼女に言われると私は涙を流しながら、更に悲しげな顔をする、すると、彼女は私に向けて手を差し伸べたのです。
メイド「もし、働き口が無いのだったら、私が働いているお屋敷で働かないかしら?其処には使用人用のお部屋もあって、温かい食事もあるし、少しふかふかのベッドも、共有用のお風呂だってあるわ。どうかしら?」
こうして、当時まだ副メイド長であったシーナさんに救われ、当時8歳であった私はクラリスロード家のお仕え見習いメイドとして住み込みで働く事となりました。
それからの私は、あらゆる仕事を必死にメイドとしてのお勤めを頑張り続けたのです、セリスティアお嬢様が頭に怪我を負って、直ぐにお仕えになったのは。
side out。
*
レイラが自分の昔の話を語り終えると彼女は悲しげな顔をしながら、エレイナに自分の昔話の感想を伝えた。
レイラ「如何でしたか?とてもつまらなかったでしょう、私の話は。」
エレイナ「………えぇ、そうね、お前の言う通りにとてもつまらなかったわ。だけどね!!」
怒れるエレイナは再びレイラのメイド服の胸倉を掴み後ろの木に叩き付けながら叫んだ。
エレイナ「貴族が何!?使用人が何!?お前はお前!!レイラ・スクルドでしょうが!?」
レイラ「!」
エレイナ「私はね!冷静沈着で!クールで!何時も主思いのお前が!確かに、私の家は2つ名を失くした経験何て一度も無い、けれど主の命令?そんなの知るか!!人生の一度くらいは主の命令何て逆らって助けに行け!!」
レイラ「エレイナ様…。」
お互いの身分何て関係無く、互いを友として、セリスティアを助ける思いに変わりは無かった。エレイナもそう、そしてレイラ自身も同じ思いだと言う事を。
エレイナ「兎に角、私はセリスティアを助けに行く、また邪魔するならお前をぶっ飛ばしてでも助けに行くから。」
そう言うとエレイナはセリスティアを助ける為に歩き進むも、直ぐ様にレイラに左肩を掴まれ引き止められる。
エレイナ「まだ私を止める積り!?」
レイラ「………止めます、準備せずの状態で行かせられるとでも?」
そう言うとレイラは左手に持った中身が沢山入った布袋をエレイナに見せると、エレイナはその布袋の中身が何なのか察して、驚きながらレイラに答えた。
エレイナ「………お前、最初から私の為にそれを用意しながら、私を待ってたの?」
数秒の沈黙の最中、レイラはエレイナに向けて微笑みながら答えた。
レイラ「ええ、その通りで御座います。さあ、余り時間は有りません、直ぐにお嬢様の所へ急ぎましょう!」
エレイナ「ええ!!」
2人は急ぎ元来た道へと戻り、セリスティアを助ける為に駆け出して行った。
レイラ{セリスお嬢様、お嬢様は本当に大馬鹿です。こう言うのは普通、使用人が身を守って主を守るのにお嬢様は自ら犠牲にしてまで私達を逃がしてくれた!ですが、主を置いて逃げる何てお付きメイド失格です!何を言ってもお嬢様と共に!!}
エレイナ{セリスティアのお陰で幸いながら魔獣から受けた脇腹の傷の痛みが治まって平然と動けれる、一応感謝したいのだけれど、1発くらいは殴らせて頂戴よね!!}
2人のセリスティアへ対する思いが、助ける力へと変えていく。風が止む、大型魔獣の無敵状態をセリスティアが片方のトロンペを倒した事により内側から打ち破るも次なる防御魔法からの反撃の攻撃魔法が発動されようとする。
エレイナ「レイラ!!」
レイラ「はいっ!!」
返事を返したレイラは布袋の中から数個の石を取り出しエレイナの左手元に向けて軽く投げると同時に『魔装』を発動させて左手に石を纏わせながら魔獣に向けて攻撃魔法を撃ち放つ。
エレイナ「『石弾』ォ!!」
左手から魔力を纏った石弾が数発放たれ、大型魔獣の身体に着弾すると同時に大型魔獣の攻撃魔法が失敗してセリスティアは助かる。セリスティアは2人の方向を振り向き、気付いた。
レイラ「どうやら間に合った見たいですね。」
突然の絶体絶命のピンチを何とか救えた事が出来たと共に2人はセリスティアの前に駆け付ける。そしてエレイナは微笑みながら叫んだ。
エレイナ「待たせたわね、セリスティア!」