女騎士、夜の川場にて悪役令嬢と語り合う。
ディオス村近くの森でのキャンプ初日の真夜中、皆が寝静まった頃、私は何故か1人だけパッチリと瞼を思いっ切り開くと共に眼が覚め起き上がった。
一応言っておくけれど、別に尿意とかで目覚めたんじゃなくて、ただ単に起きてしまっただけに過ぎない。私は周りの皆が寝てる姿を眼にする。
良かった。ノービスも久し振りの息抜きのお陰なのかぐっすりと眠っている。隣にはエレイナお姉ちゃんが木に背を乗せたままノービスを守るかの様に眠りに堕ち。
エリシアは私の事を呼び呟きながらスヤスヤと微笑みながら私の隣に眠り、レイラも後ろ姿で顔は見えずに寝息を立てずに地面に寝伏せている。どうやら私以外は皆寝てるのかと思ったら、肝心の彼女の姿が居なかった。
セリスティア{………あれ?カレンの姿が居ない、何処かに行ったのかな?}
辺りを見渡すがカレンの姿が何処にも居ない、何かあったのかなと思った私はキャンプ地点を後にし、カレンを探しに向かった。
………。
セリスティアがカレンを探しに向かった最中、寝息を出さず伏せ寝している筈のレイラはゆっくりと瞼を開ける。
レイラ{………少し前に鎧を着込んだカレン様がこの場から出て行かれるのを見掛ねましたが、お嬢様までもが同じ方向へと行かれるとは、まるで出会った頃と同じ出来事の様に…。本来でしたらお嬢様を見守りたいのですが。}
流石のレイラも眠っているエレイナ達を置いて、カレンを探しに向かったセリスティアの後を追うわけには行かないと判断し、留まる事にしたのだった。
レイラ{お嬢様とカレン様、2人きりでどの様なお話をするのでしょうか。メイドとして、些か気になりますが…。}
自分が仕える主と彼女の師匠である女騎士が2人きりでいる光景を想像しながら、複雑な気持ちを胸に抱くレイラであった。
*
ザッ、ザッ、と茂みを退かしながら森の中へと私は進み歩く、獣の雄叫びも無く、静寂と不気味に満ち溢れていく。
初春に合わぬ寒風が身に感じるも、上皮の鎧を着込んでるお陰なのか少しは寒気は耐えられそう、川の流れる音が近付いて来る、それは川場が近付いてる事を意味している。
セリスティア「………あれ?」
川場が見えた途端、誰かの声が聴こえ私は歩く足を止める。
カレンの声『フンッ!フンッ!フンッ!』
良く聴くとカレンの声がする、私は茂みの近くへと隠れながら覗き見る、何とカレンは鎧を着込んだ状態で剣と大型盾を装備しながら自主訓練をしていた。
まあ、何にせよ心配する必要は無くなった見たいだね。そう思いながら私は微笑みながらカレンの元へ向かおうと茂みを退かして進むと、茂みの揺らす音に気付いたのかカレンは直ぐ様に音の方へと振り向いた。
カレン「っ!誰だ!!」
セリスティア「私よ、カレン。」
カレン「な、何だ。セリスか、驚かさないでくれ。」
そう言いながらカレンは自ら警戒を解き、剣を鞘に納める。
セリスティア「御免なさい、カレンの姿が無かったからもしかして何かあったかと思ってつい、貴女を探してしまったの。」
カレン「そうか、それは悪い事をしたな。」
セリスティア「それにしてもカレン、貴女、こんな夜更けに騎士としての訓練をしてるの?」
カレン「ああ、何時如何なる場合でも敵の襲撃に備えられる様にね。そう言うセリスもちゃんと剣を持っている事は君も訓練をしにか?」
セリスティア「へ?訓練?」
私の左腰に剣を背負ってる事にカレンは眼にする、確かカレンを探す為にキャンプ地点から出て行く際に持ってきたんだっけ。念の為、魔物に襲われない対策の為に。
セリスティア「まあ、そんな処かしら?どうするカレン、このまま始めちゃう?」
カレン「フッ、そうだな、折角だし行うとしようか。」
私とカレンは互いに離れた位置に付くと同時に剣を抜かずに鞘のままの状態で構える。
カレン「さぁセリス、今の君の実力を全て見せるんだ!」
セリスティア「お望み通りに!!」
私は爪先を大きく曲げると共に眼にも見えぬ速さでカレンに向かって特攻しながら鞘を振り下ろす。
セリスティア「はぁぁぁっ!!」
カレン「むんっ!」
しかし、鞘で打ち込むと共にカレンは速い動作反応で盾で防ぐ、しかし私は鞘を盾に打ち込み振れたと同時に身を回転させながら、カレンの右横に回り込んでから、攻撃を仕掛ける。
セリスティア「貰ったあ!!」
カレン「甘いぞっ!!」
しかしカレンは左半身を前に移して振り下ろされた私の鞘での打撃を盾で防ぎ切る、だけどこのままでは終われない、私は全身を使ってカレンを押しだそうとする。
カレン「成る程、そう来たかっ!」
対してカレンも自身の力で私を押し返そうとする、互いの力と力を押し合うも、お互い笑顔のまま互いの実力を上げた事を褒め合う。
カレン「中々上達したな、セリス。」
セリスティア「そう言うカレンこそ、防御の隙が全く見つからないわ!」
カレン「当たり前だ。伊達に私も騎士は勤めてはいないさ!『シールドバッシュ』!!」
瞬間、カレンは技術『シールドバッシュ』を使用し。自身の大型盾で私を押し出すがてら吹っ飛ばそうと仕掛ける。カレンがそう来るなら私は…。
セリスティア「『剣術・受け流し』っ!」
カレンのバッシュを受けると共に私は『受け流し』の技術で上空へと身を回転しながら高く飛び、そのまま降下と共に鞘で振り下ろす。
しかし、カレンだって伊達に私の行動範囲を確実に見切っている。振り下ろされた私の攻撃を自身の剣で受け防ぐ。
カレン「そう簡単には当たらせる訳には行かないぞセリス!」
セリスティア「だったら当てるまで攻撃を続けるまでよ!!」
鞘で振り下ろす、盾で防ぐ、受け流して真横に回り込んで仕掛ける、己の動作反応のみで見切らせながら剣で防ぐ、受け流す、振り下ろす、そして盾で防いで私はそのまま押し出そうとする。
カレン「おいセリス、戦いの最中に何笑っているんだ?」
セリスティア「カレンの方こそ、結構良い笑顔してるじゃない。」
気が付くと、私とカレンは訓練中の最中なのにお互いがニヤリと笑い合っていた。どうしてなのだろうか?そんな事はどうでも良い、今は目前のカレンとの打ち合いを楽しむのみ!
私は攻撃が再びカレンの大型盾に防がれそのまま押し出そうとしたら、カレンは直ぐ様に私を吹っ飛ばそうとシールドバッシュの体勢に入ろうとした途端、私は直ぐ様にカレンから距離を取ってから、剣を構える体勢に入り、対してカレンもバッシュの体勢を止めて私と同じく剣を構える体勢へと切り替える。
セリスティア「はぁ……はぁ……。」
カレン「ふぅ……。」
お互いが息を切らすも呼吸で整えさせ、微笑むと共に剣の持ち手を強く握り締めてから、真っ向から飛び出す。
そして両者は剣を振り下ろされ、互いの鞘と鞘がぶつけ合う打撃音が川の水流と共鳴し、大きな波紋を作り出したのだった。
*
ほんの少しの一時の訓練を終えた私とカレンは川の水に脚を浸かりながら、休息を取っていた。
セリスティア「んーーーっ!気持ち良いーっ!!」
水の冷たさが脚に感じて来たのか、私は両腕を一気に上へと挙げ出してしまう。そんな私の姿を隣で脚を浸かりながら見ていたカレンはクスリと笑う。
カレン「フフッ、やっぱり子供らしい部分もあるんだな、セリスは。」
セリスティア「え?私ってそんなに子供らしかった?」
カレン「普段のセリスって何故だか大人しく感じていたからな、出会った当初はどうしてこの森の中で似合わない何処ぞの貴族の令嬢とそのメイドが夜営したのは驚いたからね。」
セリスティア「そう言うカレンだって、自分の身分を隠していたからね。」
カレン「あの時は任務の為に致し方無く隠していたんだ。まあ、そう言う私の方こそ、セリスがクラリスロードの御令嬢だと気付かなかったから、お互い御相子様だよ本当に。……でもまさか、出会ったばかりの君からいきなり私に弟子入り志望して来たのは驚いた物だ。最初はただの令嬢が興味本位でお願いしたのかと思ったが、本気とは思わなかったからな。」
セリスティア「アハハ…。」
カレン「しかも出会って数日程度で上達してしまう始末。」
セリスティア「この頃は色々と御迷惑を掛けてしまい大変申し訳有りませんでした。」
そう言いながら深々とカレンに向けて頭を下げなぎら謝罪するセリスティア。
カレン「何、セリスが謝る必要は無いさ。」
川の流れる音を感じる最中、カレンは川場にて行った自分とセリスとの初めての訓練の日々を思い出し、頭の中に浮かび現れる。
カレン「今でも思い出す、私の指導による訓練の日々を…そしてセリスにとって初めての実戦訓練の記憶を。」
その言葉を聞き、私はこの川場にてカレンとの実戦訓練を思い出す、あの頃の私は実力不足ながら、カレンの圧倒的な防御力に押され気味で攻略する方法が難しかったからね…。あれは奇跡的だったよ本当に。
カレン「とくに最後に繰り出したあの『魔法剣』と言う技術。私の全力の『力の盾』をも打ち破れる処か、私の盾を半壊してしまうとは、まだ10歳にもなっていない少女がこんな予期しない力を出して来る何て誰もが思わなかったよ。」
セリスティア「あれは本当に一か八かの賭けだったよもう…。」
もし、魔法剣を会得していなかったら今頃の私はカレンに敗北し不合格になっていただろう、本当に会得して正解だったかもしれない、そんな中、私はある事を思い出した事をカレンに伝えた。
セリスティア「そうそう、一緒に裸になってこの川の水に浸かった事があったよね!」
カレン「っ!?」
セリスティア「あの時の私ったら恥ずかしかったなあ〜。カレンの大人の身体に興味本位で触りまくった事を……って、あれ?」
私は目線をカレンの方へと振り向くと、カレンは顔が真っ赤にして微笑みながら、プルプルと全身を震えさせていた。
カレン「………………。」
セリスティア「……カレン?何かさっきから顔赤くなってるけれど、大丈夫?」
カレン「へ?えっ?だ、大丈夫だとも!そ、それよりもセリス、そろそろ寒くなったし皆の元へ戻ろうか!!」
そう言うとカレンは急ぎながらと川の水の中から脚を出して布タオルで拭き、慌てながら靴を履くを履こうとした途端、カレンは慌てて転倒してしまう。
セリスティア「カレン危ないっ!!」
私はカレンを助けようと手を掴むも力量の差で押し出されてそのまま私諸共、川へと向かってドボンと一緒に落ちてしまう。
セリスティア「………。」
カレン「………。」
お互いがずぶ濡れのまま、川の浅い所にて私はカレンに押し倒されていた。
そうだ。私確か一度脚を引っ掛けて深い所に溺れて、カレンに助けられたんだっけ?
けれど、そのカレンは今、私を押し倒してる事に開いた口が塞がらずに驚愕していた。私、何かしたのかな?と言うか、このシチュエーションって…。
セリスティア「カ、カレン?」
カレン「セ、セリス、こ、これはその、す、済まない!決してわざとじゃ…。」
顔を真っ赤にしながら、あたふたと私から退いて離れるカレン、私はゆっくりと自分から川の水の中から起きて立ち上がると、彼女は私を見つめていた。しかし、何時ものカレンの眼ではない、騎士には見合わぬ誰かに恋する乙女の眼差し、赤面しながら何か覚悟を決めたのかカレンは私に伝えた。
カレン「セリス、き、君の様な10歳の子供相手にその、こんな事を言う積りは無かったが、あ、敢えて言わせてくれないか?」
セリスティア「な、何を言うの?」
緊張が突き走る、こんな展開は前世の私の学生時代でも一度も無かったが、テレビドラマや少女漫画は疎か、CRYSTAL SYMPHONIAにさえもこんなシーンは1つも無かった。
そんな事を思う最中、カレンは口を開いた。
カレン「セリスティア、私は、君の事が…。」
唾を飲み込み、その言葉を聞こうと私は受け入れる覚悟をした。
しかし、その言葉をカレンは言わなかった。いいや、言えなかった、突然予期せぬ展開がカレンの告白を遮ったのだ。
エリシアの声『キャアアアアア!!!』
キャンプ地点の方向から誰かの悲鳴が大きく私達の耳元へと確り聴こえたのか、カレンは我を取り戻し正常へと戻ると共に目先を私と同じ森の方へと向けた。
セリスティア「今の声って、エリシア!?」
カレン「尋常じゃない悲鳴だった。急いで戻ろう!何かあったのかもしれない!」
セリスティア「ええ、行こうカレン!」
私とカレンは急ぎ、キャンプ地点の方角へと駆け出し森の中へと戻って行った。
エリシア!レイラ!エレイナお姉ちゃん!ノービス!4人共どうか無事でいて!!