悪役令嬢、不思議な夢を見る共に自分の過去を語る。
………此処は一体。
そうだ。私は確か魔力酸欠によって倒れて意識を失ったんだっけ?と、言う事はもしかして此処は死後の世界、じゃないわよね、もしそうだとしたら天使か死神が出迎えて来る筈だけれど…。
と言うか、何で私はワンピース1枚だけの格好をしてるの?まあ別にこう言った服は嫌いじゃないけれど。
セリスティア{取り敢えず、眼の前にあるこの一本道を歩こう。}
私は一本道の先を進み歩く、周りが全て真っ暗闇に満ちており、この一本道以外何も見えやしないけれど私は仕方無くこの道を進むしか無かった。
しかし、進んでも進んでもこの先の道には出口らしき光は何も無い、それ処か…。
セリスティア{可笑しい、進めば進む程に出口は疎か、この先の道に何があるのかも見えやしないのは何故なの?}
何か苛立って来た私は取り敢えず走って見た。しかし、走れば走る程に全く先の道には何も無い、はぁ、どうしたら良いのよと思った矢先に…。
セリスティア「………え?何これ?」
道の前に割れた植木鉢が置かれており、私は突然と足を止めた。
セリスティア「これって、割れてるけれど、もしかして植木鉢?」
どうしてこんな所にあるのかは分からない、しかし、私にとってこれは最初の原点でもあるからだ。
そして私は自分自身の過去を振り返ろうと後ろを振り向く、まだ。悪役令嬢セリスティアになる前の、前世の私の短い生涯の物語を。
*
前世の私は、サラリーマンで営業部長を勤めている父親とスーパーでパート社員を勤めている専業主婦の間に産まれた日本中の何処にでもいる平凡な女の子として生を受けた。
家族は先程言った通りに父と母、そして5つ上の姉、姉妹仲は良好な方、好き嫌いは兎も角、好物と言った物は何も無い。
学校での成績は中の上、運動神経も平均止まり、親しい友達は居ない、けど、私にとって唯一ハマってる趣味が1つだけ存在している。それは、TVゲームであった。
乙女ゲームもとい。『CRYSTAL SYMPHONIA』に出会う前の当時の私はパズルゲームと格闘ゲームに結構嵌まり込んでいた。
実力はと言うと商店街の玩具屋のパズルゲーム大会で高校生相手に優勝する程の腕を持ち、格闘ゲーム大会ではeスポーツの日本代表候補を相手にギリギリで負けてしまう程の腕を持っている。両親曰く『家の娘はこんなゲーム如きで才能を引き出せられてるのに、何故、こんな事を勉強で活かせないのか?』とドン引きする程。
だけど唯一、仲の良い姉からは『別に良いんじゃない?その才能を活かすのはアンタ自身何だからさ。自由にやりなよ。』と言われて私はゲームを、いいや、ゲーマーとしての腕前を磨き極め続けた。
それから中学に進学して、暫く経った頃に姉の御下がりのゲームソフトをプレゼントされた。そのゲームは何でも、数年前から流行ってたRP風のバトル要素を付け加えた乙女ゲームだったらしい。
そう、その人気の乙女ゲームのソフトこそ『CRYSTAL SYMPHONIA』だったのだ。
当初、乙女ゲームに興味の無かった私は試しがてらにプレイした結果、たった数日足らずでドハマリしてしまった。
ストーリー要素、登場人物のキャラデザ、担当声優、各攻略キャラのエンディング要素、イベントCG、主人公の育成要素、ダンジョンRPG要素等などと。全てのシステムを含めて、とても丁寧で、綺麗で、ゲームソフトとは思えない名作品だった。
気が付けばたった1月足らずで、イベントCGコンプリート果たしてしまい、主人公のレベルを99処か、中学卒業するまでは何度も何度もゲームを100回も周回してしまう程。
高校に進学すると、姉からは入学祝いとして続編の『2』をプレゼントされた。
それからは『CRYSTAL SYMPHONIA』の為に私は真面目にテストと大学受験すると共に熱中した。気付くと自分の部屋は推しのゲームのグッズに溢れまくる程になるまで詰めまくった。何そろ貯め込んだお年玉数年分を丸ごと使い切る程にね。
大学に進学すると、人気だった準主役のスピンオフ作品が発売、それと同時にアニメ化が決まり生放送を直に観て、録画したアニメを何度も観たりする程に病みつきになってしまう様に。
そして、大学を卒業後、私は内定した中級企業に就職すると同時に実家から自立し、独り暮らしを始めると共に快適な自分だけのお城ライフを満喫しまくった。仕事は色々と大変だけれど、推しのゲームの為ならばどんな苦難な仕事すらもやり遂げた。
就職して数年後、いよいよ念願の『3』が発売した。発売日当日と共に私は朝早くゲームショップへと直行し長い列を長い時間掛けて耐え並び、初回限定版を購入する事が出来た。早速、家に帰ってプレイをしようとした矢先に…。
通り魔に胸を深く刺されて、私は20数年の短い生涯に幕を閉じたのだった。
*
眼を開けると足元に割れ砕かれた植木鉢がある、私の意識は、元の暗闇に満ちた空間の中に戻っていた事に気付いた。
そうだ。私は確か通り魔に刺されて失血死したんだっけ、そして悪役令嬢だったセリスティアの頭に植木鉢が落ちて、私が私になったんだと。
正直、まさか自分が主人公じゃなくて悪役令嬢のセリスティアに転生するとは予期もしなかったけれど、案外、こう言うのも悪く無い気がする、セリスティアは本来なら各攻略キャラの√で主人公アリサの前に立ち塞がり、貴族の立場を使って悪逆非道の虐めを繰り返し続けられた。
しかし、彼女は結局、どの√でも破滅してしまう、だから私が自ら破滅√を避ける為に私は私の覇道を突き進むだけ!!
さて、何時までも立ちっぱなしでいる訳には行かないしそろそろ歩こうって…。
セリスティア「……あれ?」
進もうとした途端、私の目の前に真っ白い両扉があった。あんな扉、さっきまでは無かったのに何だろう、扉が入れと私に言っている気がする。
女の声『___止まりなさい。』
扉に手を触れ様とした瞬間、何処からか女性の声が聴こえ、私は手を下ろした。
セリスティア「誰!?」
女の声『この扉の手を触れた最後、貴女は後戻り出来なくなります。覚悟を決めたら開きなさい、無ければこの場から立ち去るのです。』
セリスティア「立ち去るですって?何よそれ…。」
後戻り出来なくなる?何言ってるのさ、私の考えはもう決まっている。後戻り何てする気は元から無い!!
セリスティア「私はもう、覚悟は決まってんのよ!!」
そう言うと私はその扉をバーンと一気に開けた。開けた瞬間、眩い光が私の視界を塞ぎ出すと共に扉が私を吸い込ませた。
眼を開けると、私は何処かの街の教会の通路に立っていた。いや、違う、此処は意識の中で生み出された空間、決して本物何かじゃない。
セリスティア「此処は…教会?」
女の声『此処は、見定められし試練の場所、貴女にはこれからある物を抜いて頂きます。』
瞬間、祭壇の前に1本の剣が生え現れた。
セリスティア「剣?」
女の声『その剣を抜くのです、擦れば、運命が変える力が貴女に継承されるでしょう。』
運命を変える力、か、もしもそんな力が有るならば、私は自分の破滅√を回避する為に力が欲しい!ただ。力を得る訳じゃない、大切な人達を守る為に、正しく使う為に!
私は迷わずにその剣を握り締めると共に一気に抜き取る、瞬間、剣が突然と光輝き出す。
セリスティア「な、何!この光は!?」
女の声『貴女は選ばれました。セリスティア。』
セリスティア「!?」
女の声『これから近い未来、貴女の前に大いなる脅威が訪れます、どうか、貴女の_』
セリスティア「待って!!貴女は一体何者なの!?」
女の声『私の名前は___。セリスティア、どうかこの世界を、魔王の手から必ず…。』
彼女の声が途切れると私の眼に写り込む全体の視界が剣から放出される、眩い光で完全に塞がれた瞬間、私の意識はフェイドアウトした。
*
意識を覚醒させた事により私は一気に眼を開けるとレイラとエレイナお姉ちゃんの顔が写り込んでいた。2人共何か驚いてるけれど…。
セリスティア「私は、一体……。」
そうだ。私は確か『増加システム』で全MPを消費させて最大級の魔法剣を繰り出した後に魔力酸欠で倒れてそのまま意識を失ったんだっけ?
レイラ「お嬢様!眼が覚められたのですか!?」
エレイナ「セリスティア、大丈夫なの!?」
セリスティア「レイラ、エレイナお姉ちゃん、どうして2人がレリウス様の御自宅に?」
2人は慌てながらも、どうして自分達がレリウス様の貸別荘に居るのかと答えた。
レイラ「私の元にカレン様から直接、お嬢様が倒れたと聞きまして…。直ぐに駆け付けて来たのです。」
エレイナ「かく言う私の方は自室でキャンプの準備してた矢先にエリシアが急いでやって来て。お前が倒れたって聞いたんだよ!?」
セリスティア「そ、そう何だ。心配して御免なさい。」
私はレイラとお姉ちゃんに謝ると、レリウス様とエリシア、カレンが部屋に入室して来て私の意識が戻った事に気付いた。
エリシア「お姉様!」
エリシアは両手に持った水の入った硝子のポッドと空のワイングラスを載せた御盆をレリウス様に受け渡して急ぎ、私の元へと抱き着く。
セリスティア「エリシア…。」
エリシア「セリスお姉様、本当に無事で良かったですぅ……。」
身を震えながらエリシアは泣き出していた。私としては何て事を、エリシアを泣かせてしまった…。
レリウス「気分はどうだ?セリスティア。」
セリスティア「レリウス様…。」
私はベッドから起き上がろうとした途端、レイラとお姉ちゃんに止められる。
レイラ「まだ起きてはなりませんお嬢様!」
エレイナ「そうだよセリスティア!まだ寝てないと!」
レリウス「いや、出来れば上半身だけ起きたままで構わない。」
私はレリウス様の言う通りに大人しくベッドに寝ながらで上半身だけ起こして対応する。
セリスティア「あの、私はどのくらい意識を失くしてたのですか?」
レリウス「ざっと2時間少しだ。君は全魔力を使い切り魔力酸欠で倒れた事は覚えてるか?」
セリスティア「………覚えています。」
縦に頷きながら私は正直に答える。
レリウス「それもそうだ。全ての魔力を使い切ってしまう程だからね。」
そう言いながらレリウス様はお盆を片手に持ちながら、懐から青い液体の入った小瓶を私に受け渡される。
セリスティア「レリウス様、これは?」
レリウス「魔力回復薬だ。飲みなさい。半分程だが魔力が回復する。」
セリスティア「えぇ、有り難う御座います。」
私はレリウス様から受け取った魔力回復薬を一口飲む、うわぁ、ゲームではアイテムとして使われる事が多いけど、味はその、苦味のあるミントティー見たいな味がするけど、少しだけどMPが回復して気が楽になった。
今度からはこのシステムは慎重に使おうと考えてた矢先、レイラが微笑みながら私に言った。
レイラ「とは言え、相も変わらずにまた家のお嬢様の悪い癖を起こした事には変わりませんですからね。」
セリスティア「レ、レイラ?それはその、アレよ!全身全霊の賭けと言うか…。」
何だろう、レイラの微笑ましい笑顔に激しいオーラを感じるのは気の所為だろうか?焦りながら私は言い訳をしようとするがレイラの
レイラ「お嬢様、私はお嬢様ともう3年近い付き合いなのですよ、主の言葉の裏側に何か隠された物が何方が嘘か誠かはそれくらい見破れるのですよ、今までは何も言いませんでしたがね。」
え、嘘、それってもしかして…。
エレイナ「今回はレイラの言う通りにセリスティアのやり過ぎが原因かな〜。」
カレン「まあ、戦いの師匠である私からしても、あれは流石に危険過ぎるな。」
お姉ちゃんは兎も角、カレンまで!?ま、まさかとは思うけれどエリシアは私を責めないよね!?
エリシア「え、えっと、あの、その……。」
目線をエリシアに向けた瞬間、エリシアは顔を真っ赤にしながら何も言わない、嘘でしょ!?
レリウス「まあ、兎にも角にも君が無事で本当に良かったと言いたい処だが、少しお痛が過ぎてるから、ゆっくりと話をしようか?」
セリスティア「は、はい……。」
こうして私はレリウス様による有り難いお説教を30分程受ける事となったのだった。後、お説教が終わる後にてレリウス様から『増加システム』の使用を禁じられた。何でも10歳の常人の子供の場合だと全身の骨が砕けてしまう程の致命傷を食らっていたのかもしれないと、幸い、私の場合は『強化』を始めとした幾つかの補助系の技術によってカバーされたけれどね。
大きくなるまで使用禁止か、また魔力酸欠になったら困ると思うし、暫くは使わないでおこう、と私は内心、決意したのであった。
*
別れ際にて私達は貸別荘の前でレリウス様とエリシアに見送られる最中、レイラ共々私は2人に謝罪をした。
セリスティア「今日は本当に御迷惑を掛けてしまい申し訳有りませんでした。」
レリウス「いやはや、君がもう謝る必要は無いよ、元はと言えば、今回の問題を起こしたのは他ならぬ私のせいだからね。」
セリスティア「本当にすみませんでした。えっと、それでそのレリウス様、エリシアのキャンプ参加の件なのですが…。」
数秒、沈黙の空気は走るも、レリウス様は微笑みながら返答した。
レリウス「ええ、条件通りに私の暇潰しに付き合ってくれたから、約束通りにエリシアの参加を認めるよ。」
エリシア「お父様!有り難う御座います!」
自分のキャンプ参加が認められて喜び出すエリシア、本当に良かったね。
レリウス「セリスティア、君は危険な行為をしたとは言え、湖の水を割った事には変わり無い。だから君にこれを授ける、受け取ってくれ。」
レリウス様は左手に持ってた本を私に受け渡される。私はこの本が何なのか知って驚愕した。
セリスティア「これはもしかして…。魔導書!?」
しかもこれは中級の魔法が記された奴だ。
レリウス「独自で生み出した自己流魔法。確か『魔法剣』と言ったね、これと基本魔法の『火球』の2種類だけでは少ない。禁じられたあの技能を使えずとも幾つか強力な魔法が得られるだろう。君の魔術師としての可能性がある。」
セリスティア「!」
それってつまり、私自身にあらゆる魔法の可能性を広めて欲しいと言う意味って事なの?そう考えてるとレリウス様は話を続ける。
レリウス「特に君に渡したこの魔導書には自身に装備している武器に魔力を纏う事が出来る『属性付与』の強化魔法が載っている、例の倍の魔力消費より此方の方がカバー出来るよ。」
確かに『属性付与』の魔法効果なら一時的だけれど魔法剣同様に属性を付与するけど、此方は魔法剣とは違って武器の耐久性に影響は無い。つまり攻撃力+炎属性による通常攻撃が出来ると言う事だ。これも一応、戦法の1つに加えておこう。
セリスティア「有り難う御座います、レリウス様。」
レイラ「お嬢様、そろそろ陽が暮れますのでそろそろ御暇を。」
セリスティア「そうね、それじゃあエリシア、また明日ね!」
エレイナ「じゃあねエリシア!」
エリシア「お姉様!エレイナ様!カレン様!レイラさん、今度のキャンプ宜しくお願い致します!」
エリシアは礼儀正しくペコリと去る私達4人を見送る最中、レリウス様はエリシアの頭を優しく撫でる。
帰り道、私達は屋敷にへと向かって歩いてるとお姉ちゃんは姉として妹である私に楽しく話し掛けた。
エレイナ「それにしてもセリスティアったら凄い物を貰ったじゃないの!お姉ちゃんとしては羨ましいわ。」
セリスティア「何ならお姉ちゃん、私が読み終わった後に貸してあげる。」
エレイナ「ええっ!?か、貸しても良いの?」
セリスティア「魔法学校通う際に少しでも成績付けないとでしょ?」
エレイナ「うっ、そ、それは確かにそうだね…。でも妹が読むならお姉ちゃんである私も読まないとね!」
カレン「さて、キャンプは確か来週行うのだったなセリス。それまでは毎日訓練を受けて貰うぞ。」
うわぁ…。まあ、カレンの厳しい訓練は受けるけれどキャンプの為ならば頑張らないとね、それからと言うと私は屋敷に帰宅した際にレイラはお父様に鋼の剣をまた壊してしまった事と私が魔力酸欠で倒れてしまった事を伝えられ、結果、こっぴどく叱られました。
何せ鋼の剣を壊したのはこれで3本目だからね…。トホホ、暫くは剣無しの生活を送っておこう。
さて、アルフォンズ様とレリウス様の許可は得た。さぁ、後はキャンプの準備をしないとね!
セリスティアは新たに、コマンド。『増加システム』を会得した。