悪役令嬢は妹分の父親を交渉しに行く。
エレイナお姉ちゃんとノービスの父親であるアルフォンズ様と母親のマリアンヌ様との交渉を行い、苦難だったけどカレンの助力のお陰で見事、お姉ちゃんとノービスこ2人のキャンプ参加の許可を貰った翌日。
私はカレンと共にレリウス様とエリシアの暮らしている貸別荘に向かって湖へと続く道を歩いていた。
カレン「セリス、この辺りにエリシアの住んでいる貸別荘があるのか?」
セリスティア「間違い無いわ、湖の見える所だって前にエリシアから言ってたから。」
カレン「そうか、それにしても、私達が歩いている一本道なら兎も角、辺りには木と湖しか無い見たいだな。」
セリスティア「何でもこの辺りは元々、色々な貴族様の別荘地にする予定だったけれど土地の地盤が悪くて別荘地にする計画が白紙になったって前にお父様から聞いたのよ。もし、地盤が良かったら私達の村は貴族様達の憩い場になってたかもしれないわね。」
カレン「ああ、だから一帯一帯何か建設跡らしき所があるのか。」
周りに木々で囲んだ所に大きなコテージらしき建物が見えて来た。恐らく彼処だろう。
セリスティア「そう言えばカレンはレリウス様と知り合い何だっけ?」
カレン「ああ、城の記念パーティーで何度も対面でお会いした事があってな。」
と言う事はカレンはレリウス様だけでなく攻略キャラの1人であるクロノの事も面識が有るって事よね、そんな事を思ってるとコテージの玄関前に私達は足を止めた。
セリスティア「レリウス様が居れば良いけど…。」
私は玄関扉のドアノックを4回叩いてから声を掛ける。
セリスティア「レリウス様ー!エリシアー!セリスティアとカレンが参りました。居ませんでしょうかー!」
パタパタと玄関へと近付く足音が聴こえると玄関の扉が開き、ライムグリーンのドレスワンピース姿のエリシアが笑顔で出迎えて来た。
エリシア「お待ちしておりました!セリスお姉様、カレン様。」
セリスティア「お待たせエリシア、予定より早く来ちゃったけれど大丈夫?」
エリシア「いいえ、寧ろ大丈夫です。お姉様達の為に朝早く紅茶とお菓子の準備を致しました!」
流石はエリシア、何て用意周到なのよ私の妹分はもうっ!取り敢えず私達2人はコテージの中へとお邪魔する。エリシアに居間へと手引きされると4人分の席があるテーブル席へと案内される。私とカレンが座る。
エリシア「今からお父様をお呼びしますのでお待ちしてて下さい。」
そう言うとエリシアはレリウス様を呼びに仕事場らしき部屋の扉へとノックしてから入室して行く、暫くしてエリシアが部屋から出て来てレリウス様を連れて戻って来た。
レリウス様が見えた瞬間、私とカレンは直ぐ様に椅子から立ち上がり礼儀正しくレリウス様に挨拶をした。
セリスティア「御機嫌ようレリウス様、此度は私達の話し合いを受けて下さって、誠に有り難う御座います。」
レリウス「やあ、私達の我が家に良く来てくれたね、セリスティア、元気そうでなりよりだ。ん?隣に居るのはもしや、フレイローズ家のカレンではないか!?」
カレン「お久し振りです、レリウス様。」
カレンは久し振りの知人であるレリウス様との再会を喜ぶ。レリウス様とエリシアは私達の向かいの椅子に座り出すとレリウス様は微笑みながらカレンの現状を伝える。
レリウス「いやはや、ルーファスから聞いているよ。クラリスロード邸に住みながら、セリスティアに戦闘の訓練と騎士としての仕事を務めている様だね。」
カレン「ええ、お陰様で私の身体が今にでもはち切れそうな程に忙しいもので。」
レリウス「そうか、それほ何よりだ。おっと、客人が訪れたとは言え茶の用意を忘れるとは」
エリシア「はい、お父様!」
エリシアは席を立ち、茶の用意をしに向かった。その最中、先程から微笑んでいたレリウス様の表情は真剣な顔付きへと変化する。
レリウス「さて、君達2人が此処へ訪れた理由はエリシアから聞いているよ、昨日、エリシアから直接伝えられたが、一応、2人にも聞いておこうと思ってね。」
私は内心、改めてレリウス様の基本的な情報を確認しよう。
レリウス・S・シルフィード。
乙女ゲーム『CRYSTAL SYMPHONIA』の舞台である『エンディミオン魔法学校』学校長にしてセトランド城に仕えし魔導宰相。言わば城の魔術師達を率いる部隊長と言う事、エリシアとその兄で攻略キャラの1人であるクロノの父親。
誰よりも生徒思いで如何なる身分も問わずに接する学生達の憧れの的、ゲームでは各攻略キャラの√内にて発生する重要イベントにて何度も活躍する場面を見せるシーンが多い。
そして私の父であるルーファスとは学生時代の友人でもある。私とカレンは現在、そのレリウス様を相手にエリシアのキャンプへの参加を許可を取りに交渉するのだ。
セリスティア「はい、エリシアからお話は伺っていると思いますが、私達は村外れの近くの森でキャンプをする予定でして。本日お会いしたのはエリシアをそのキャンプに誘おうと思いまして、レリウス様の御許可を貰いに。」
レリウス「ふむ、成る程、エリシアをね。」
するとエリシアが人数分のティーカップと紅茶の入ったポッド、茶菓子を用意して戻って来た。
エリシア「皆様、御紅茶と茶菓子を御用意致しました。」
人数分のティーカップを目前に置いて紅茶を注ぎ淹れるエリシア、その姿を見たカレンはレリウス様に褒め言葉を良い様に扱う。
カレン「それにしてもレリウス様、御令嬢様にこの様な御教育されているとは素晴らしいです。」
レリウス「いやはや私は何も、あれはエリシア自身が行ってる事何だよ。」
セリスティア「驚きました。私はてっきりレリウス様自身が教えてくれたのかと…。」
人数分の紅茶と中央に茶菓子の皿が入ったケーキスタンドを置くとエリシアはレリウス様の隣に座る。
セリスティア「あ、何これ、美味しい。」
エリシア「本当ですか!?はい、先週、お父様にお願いをして本国から取り寄せたのを用意致しました。菓子もどうぞ。」
天使の様な微笑ましい笑顔をするエリシア、本当に私の妹分は可愛すぎる!そう思いながら私はエリシアの可愛さに飲まれたのか無意識に茶菓子をパクパクと食べてしまう。
カレン「セ、セリス?」
カレンの呼び掛けにハッと我に返った私は茶菓子を摘む手を止める、わ、私としたら、何て恥ずかしい事を…。
セリスティア「えっ!?わわっ!も、申し訳有りません!!美味しくてつい…。」
レリウス「ハッハッハ!君の礼儀さとは真逆に意外な一面を見せてくれる何てね。」
私の予期せぬ姿を見て笑い出すレリウス様、そんな最中、カレンはレリウス様に笑うのを止める。
カレン「レリウス様、本題を。」
レリウス「え、ああ、そうだね、さて話は戻るとして。セリスティアは既に存じていると思うが、最近王国周辺の各領地にて魔獣被害が多発している。まだ8つになったばかりの幼いエリシアを村の外へと連れ出す訳には…。」
そりゃそうだよね、やっぱりレリウス様もアルフォンズ様と同じ考えとして自分の子供は大切なのは致し方無い、だけどそう安々と私は諦める訳には行かない、アルフォンズ様との話し合いの経験を少しでも役に立たないと!
セリスティア「……レリウス様がエリシアを大切にしている気持ちは充分に分かります。どうかお願いです、エリシアのキャンプ参加の許可を下さい。」
エリシア「お姉様…。お父様!私からもお願い致します!私、お姉様と一緒にキャンプをしたいのです!!」
レリウス「エリシア…。」
8つになったばかりのまだ幼い自分の娘がまさか我儘を言って来る何て、流石のレリウス様も驚きを隠せずにいた。この気を私は逃さずに追撃を仕掛ける。
セリスティア「レリウス様は近い内に此方でのお仕事を終わらせてエリシアと一緒に本国へ帰ると聞いています、ですので、少しでも多く私とエリシアとの思い出を作りたいのです。どうか再度、お願いします。」
カレン「私からもお願いします。」
私とカレン、そしてエリシアは椅子から立ち上がり、頭を下げてレリウスに向けてお願いする。
実の娘を含めた3人に頭を下げられお願いされ驚くも、レリウス様は直ぐ様な表情を整え直し平然とさせながら私達3人を椅子に座り戻す様に伝える。
レリウス「……取り敢えず3人共、座りなさい。」
セリスティア「は、はいっ…。」
私達が大人しく着席すると、レリウス様は少しだけ声を出して笑った。
レリウス「一度に3人相手に頭を下げられてお願いするとなると、流石の私も反対させる処か断る訳には参らないからね。」
エリシア「お父様、それじゃあ!」
レリウス「ただし、1つだけ条件がある。」
セリスティア「条件ですか?それは一体…。」
レリウス様は突然と席を立ち玄関口へと少し移動してから私達の方に振り向いて足を止めてから言った。
レリウス「何、これから少し私との暇潰しに付き合って貰うだけが私の条件さ。」
レリウス様は外へ出よう玄関口の方へと向かう、何故外に出るのか分からない私達3人は席を再び立ち、レリウスに連れられて跡を追う事にした。
*
貸別荘のコテージから外に出た私達はレリウス様に連れられて、近くの湖の付近へと足を止めた。しかもレリウス様は何時の間にか右手に自身の武器である大型魔法杖『運命の叡智』を握り締めている事に。
セリスティア「レリウス様、これからお付き合いする暇潰しとは一体?」
レリウス「……」
瞬間、レリウス様の身体から黄緑色の莫大な魔力のオーラが全身に纏うと共に魔法杖を持ち上げると金色の球体が輝き出し、周囲の風を集める、集められた風は魔力で操作され竜巻を模した大きな魔法剣を生み出した。
エリシア「うわあ……。」
カレン「凄い、何て魔力質量だ…。」
セリスティア「まさか、あの魔法って…。」
レリウス「『風王の聖剣』!!」
刹那、レリウス様の風の剣が振り下ろされた瞬間、地面底が現れる程に湖の水を両断する。かなりの距離での斬撃はまるで十戒のモーゼの海割りの様を実際に眼にする見たいに…。
いや違う、そもそもこの魔法は発動方法は違うけれど間違いない、あれは…。
セリスティア「『魔法剣』…。」
レリウス「仕事ばかり専念していると魔法を扱う時間が少なくなってしまってね、時折、こうやって身体と魔力を鈍らせ無い様に湖に攻撃魔法を使っているんだ。」
そして私は理解した。レリウス様の暇潰しもとい条件、それはレリウス様自身の口から私に言い放った。
レリウス「セリスティア、今から君にあの湖の水を割れるかどうか試させて欲しい。」
微笑みの裏側に纏う魔力のオーラが威圧の様に私の全身を震えさせて来る、ああ、何だろう、武者震いは疎か恐怖も感じて来ない、私は今、強者に挑む好奇心に満ちているから。
だから敢えて心の中で答えよう。
上等だ!!とね。