閑話。 動き潜めく者達。
梟達が鳴き続ける真夜中、其々に武器を持ち防具を装備した男達が一本道を歩居ていた。
セトランド王国領地が1つ。アルバ村、現在、道を歩き進んでいるのはそのアルバ村の自警団達であった。彼等はアルバ村を管轄とする領主貴族であるネーマン・アルバ氏の命令で村外れの森へと向かっていた。
彼等は何時もながらの仕事とは違い警戒心が高かった。その理由は…。
自警団員A「なあ、それって本当なのか?『魔獣』が外れの森に現れたって?」
自警団員B「間違いないらしい、昨日キノコ狩りしていたエリックが見兼ねたらしい。黒い何か靄見たいな物が魔物の身体に纏わりつき赤い眼をギラリと輝かせてたって。」
自警団員A「けど何で俺達の村の森に?」
自警団員B「そりゃあ、魔獣の目的は餌探しだろうな、魔獣も魔物と変わらずに飯は食うし糞はするしよ。」
オリバー「おいお前等!余計な話をするんじゃねえぞ!!此方はピリピリしてんだ。」
アルバ村の自警団リーダーであるオリバーは苛立ちながら会話していた自警団員ら2人を怒鳴り叱ると2人は直ぐ様に謝り、大人しく森へと向けて歩き続ける。
オリバー{糞っ!領主の野郎、こんな寝の時間帯に俺達を叩き起こして森へと行けだと!?冗談じゃねえ!魔獣如きに寝の時間を削らせる訳には行かない。一刻も早く魔獣共を片付けてさっさと寝に落ちてやる!!}
自警団員A「お、おい!あれを見ろ!」
オリバー「!」
オリバー達自警団ら一行は突然と足を止め、道外れの草原から此方へと近付く複数の黒い獣の影に気付く。自警団達の何人かはあの獣の影の正体を見て察した。
自警団員B「あれは、ガルフ?森から出て来たのか!?」
自警団員C「け、けど、何か変だぞ?紫の様な毛色が違う、黒くて、眼も赤い!?」
狼型の魔物、ガルフの特徴は紫に近い黒い毛色と黄色い眼をしている。しかし、今、目の前に近づいて来ているあのガルフの群れは全身が黒く眼も赤く輝いていた。自警団リーダーであるオリバーは直ぐ様にあの黒いガルフ達の群れの正体を把握した。
オリバー「まさか、あのガルフ共、魔獣化したのか!?」
魔獣化、魔物が魔獣の闇の魔力に感染され、完全に感染すると魔物の容姿は不気味に黒く染まり、魔王の眷属である魔獣と化する。
自警団員A「ひ、ひいいっ!!」
オリバー「怯むんじゃねえ!!魔獣と言えど元はガルフ、何時も通りに村から追い出す様に対応しろ!!」
自警団員達『おうっ!!』
魔獣化したガルフ達はオリバー達自警団に気付き、新たな獲物を食らう為に一斉に駆け出す。
オリバー「来るぞ!全員、防御体勢!!」
自警団達は木の盾を身構えて魔獣ガルフの突進を防ぐと共に全体重を掛けて押し返す。
オリバー「今だ!掛かれぇ!!」
オリバーの指示の元、自警団員達は一斉に押し倒された魔獣ガルフ達の身体を其々の武器で攻撃して倒す。リーダーであるオリバーも訓練で鍛えた槍術で魔獣ガルフ達を倒して行く。
しかし森の中から新たな魔獣ガルフ達が現れて自警団員達に向かって襲い掛かる。
オリバー「糞っ!次から次へと!ならっ!」
オリバーは左手に魔力を集中させて此方に迫り来る魔獣ガルフに向けて攻撃魔法を唱える。
オリバー「風攻撃魔法。『風刃』!!」
魔力の溜まった左手から魔力の風の刃を増援の魔獣ガルフに向けて撃ち放つ。放たれた風の刃は魔獣ガルフの身体を両断する。
自警団員A「オリバーさんの攻撃魔法だ!!」
自警団員B「俺達もオリバーさんに続けぇぇぇ!!」
オリバーの攻撃魔法の影響か自警団員達も負けじと強気になったのか、自分達が相手している魔獣ガルフ達を押して行く。オリバーも負けじと次々と風の刃を撃ち続けて魔獣ガルフを切り裂き倒して行く。
オリバー「このまま押し切れば、この戦況を打破出来るかもしれない!全員、一気に攻め込む…。」
その時だった。ドォォォォォン!!!
突然と地面を踏みつける何らかの強音が森の方へと響かす。
オリバー「な、何だ!今の音は!?」
闇に静まった深い森の中から、先程の地面を踏みつける音が此方へと来るかの様に近付いて来る、また魔獣ガルフの増援なのかとオリバーは槍を握り締めて警戒すると茂みが動く音が響かす。
森の中から新たな魔獣ガルフの群れの姿が現れ、オリバーはホッとした最中、木々をへし折る音と共に森の中から巨大な黒い影の獣の姿を現す。
その巨大の影の出で立ちは鋼をも貫き刺す双角を生やした。ガルフと同じく毛色は黒く紅い眼がギラリとしていた大猪だった。
自警団員達『うわあああああっ!!!』
突然現れた巨大な魔獣に自警団員達は一斉に恐怖する。唯一恐怖していなかったオリバーは新たな大型の魔獣を見てあの魔獣の正体が何なのか直ぐ様に察した。
オリバー「まさかあれは、ビッグボア、いや、更なる大型系統のジャイアントボア!?」
しかし、オリバーは違和感を感じた。このアルバの森にはそもそもビッグボアとその小体であるリトルボアしか生息していない。
オリバー{だが、どうなっているんだ?あの森には生息していない筈のジャイアントボアがどうしてこの森の中から現れたんだ!?}
戦いの最中、オリバーはある1つの可能性が浮かんだ。
オリバー{まさか、あのボアは誰かが意図的に森の中に放ったと言うのか!?}
考えてる最中、魔獣ジャイアントボアは雄叫びを上げながら、自警団リーダーであるオリバーに向かって突進して来る。恐らくオリバーがこの自警団のリーダーだと悟っての攻撃だ。
自警団員A「オリバーさん!!」
オリバー「奴は俺が対応する!お前等はそっちを頼むぞ!!」
自警団員達『おうっ!!』
オリバーは魔獣ガルフ達を自警団員達に任せて単身、突進して来る大型魔獣に向かって駆け出す。
オリバー「うおおおおおっ!!!」
オリバーは左手に装備した木の盾で魔獣ジャイアントボアの突進を全体重を掛けて防ぐも体重の差が大きいせいか、オリバーは吹っ飛ばされる。
オリバー「ぐあああっ!!?」
魔獣の重量の衝撃で吹っ飛ばされたオリバーは酷く地面に打たれるも何とか立ち上がる。
自警団員A「オリバーさん!!」
オリバー「俺の事は気にせずに目前の相手に集中しろ!!此奴は、俺が殺る!!」
オリバーは槍を握り締めながら魔獣ジャイアントボアに向かって突撃する。しかし、突きを決められるも魔獣ジャイアントボアの防御力が高いのか槍の耐久力は持たずに圧し折られる。
オリバー「何て防御力だ!?ならっ…。これならどうだ!!」
自分の槍が武器として使えなくなったオリバーは折れた槍を捨て、右手を『風刃』で連続で放つも、風の刃はジャイアントボアの皮膚は疎か、頑丈な毛すらも斬れずにいた。
自警団員B「そ、そんな、オリバーさんの風攻撃魔法が通らない何て…。」
オリバー(不味い、後ろの団員達の士気が減って来やがった。どうする、槍はもう使えないがまだ剣がある…。残りは……もうあれしかない!!)
オリバーは全身に緑色のオーラを纏わせ、両手を重ねると共に残った魔力を全て重ねた両手に集める。
オリバー「正直、これは未完成だが、もうこれしか無い!!」
重ねた両手を広げると大きな魔力の風の刃を生み出し、再びオリバーに向かって突進する魔獣ジャイアントボアに向かって構える。
オリバー「風属性中級攻撃魔法!!『風魔斬』!!」
残り全ての魔力の込めた疾風の斬撃が魔獣ジャイアントボアの右角を両断と共に右半身を毛ごと皮膚を斬り付け、ボアは突進出来ずに片足のまま地面に崩す。
この好機を逃さないオリバーは素早く剣を抜いて、自分の攻撃魔法で受けた魔獣ジャイアントボアの傷跡目掛けて一気に突き刺す。
オリバー「貰ったあああああっ!!!」
オリバーは剣を突き刺したまま、ジャイアントボアを深く斬り込んで突破すると共に剣を抜くと共にボアの体内から多量の血飛沫が吹き出すとボアはそのまま横側に倒れ伏せる。
自警団員達『うおおおおおおおっ!!!』
自警団員A「やったぞ!オリバーさんが大型魔獣を倒したぞ!!」
自警団員B「俺達もオリバーさんに負けずにこのまま攻め込むぞ!!」
オリバーの活躍により士気を取り戻した自警団員達は次々と魔獣ガルフを倒して行く。
オリバー「彼奴等、俺も負けじと頑張らないと……。」
しかし、予期せぬ事が起きた。オリバーの背後に自分が倒した筈の魔獣ジャイアントボアが平然と立っていた。
オリバー「えっ?」
背後を振り向いた瞬間、視界は突然と一瞬だけ宙に浮き、そのまま地面へと転がり倒れる。
オリバー{な、何が起きた?な、何で、俺が倒した筈のボアが生きて…。しかも、あんなモノが身体に付いてる何て聞いてねぇぞ!!?}
そう、ボアの体系統には無い筈の不気味に満ちた両腕があった。まるで伝説の聖獣ペガサスや東方の神龍が1体、ギラフ見たいに翼を生やすかの様に。
そう考えてる内に倒れたオリバーの周りに魔獣ガルフ達が近付いて来る。
オリバー{ま、不味い、身体が動けない…。しかも、魔力酸欠まで……。糞っ、お前等来るな!}
自警団員達は魔獣を倒しながらオリバーを助けようと駆け出すが、魔獣ガルフ達はオリバーを食い殺そうと一斉に飛び掛かる。しかしこの距離では間に合わない。オリバーは眼を瞑って自分の死を覚悟した。
早馬が疾走する足音が鳴ると共に何かを斬り込む斬撃音が聴こえ、誰かが自分の身体を担ぐ感覚を感じたオリバーは眼を開けると自警団員が自分を担いでいた。
自警団員A「大丈夫ですか!?オリバーさん!!」
オリバー「お、お前等、どうして?」
自警団員A「助けが駆け付けてくれたんですよ!!ほら!!」
オリバーは団員の指差した先を眼にすると、馬を掛けながら魔獣達の群れを剣で斬り込んで行く3人の騎士の姿があった。
鎧の胸元に記された。炎の紋様を見てオリバーは彼等が何者なのかを察すると、オリバーは助かったと理解した。
オリバー「炎の騎士団、来てくれたのか!!」
魔獣ガルフ達を倒して行くと、直ぐ様に馬を引いてオリバー達の元へと駆け付し騎士の1人がオリバー達に村の自警団か聞き出した。
炎の騎士団員A「オルバ村の自警団か!?」
オリバー「は、はいっ…。」
炎の騎士団員A「此処まで良く頑張ったな、後の対処は我々が引き受ける、この隙にお前達は其々の家に帰還し家族を守る様にしろ!」
自警団員A「し、しかし、リーダーのオリバーさんが負傷して動けない状態で…。」
騎士団員は馬から降りてオリバーの元へと駆け寄り、オリバーの怪我の状態を見て直ぐに把握した。
炎の騎士団員A「これは不味いな、特に右腕の部分は骨を殺られてるかもしれん!馬を貸してやるから直ぐに彼を連れて村に戻り治療させるんだ!」
自警団員A「分かりました!さぁ、オリバーさん。」
自警団員は負傷したオリバーを背負って馬に搭乗すると、騎士団員は彼等を村へ送る様にと馬に命令するとオリバーは魔獣ジャイアントボアの異常な姿の事を伝えた。
オリバー「気を付けて戦って下さい、あの魔獣は、何か異常過ぎる!」
炎の騎士団員A「了解した。頼んだぞ!」
そう言うと騎士団員は自分の馬の身体を軽く手で叩くと馬は雄叫びを上げながら、オリバー達をアルバ村へと向かって疾走した。
それと同時に自警団員達も騎士団の言う通りにアルバ村へと向かって駆け出した。しかし、この様子を魔獣ジャイアントボアは逃がしはしないと逃馬に向かって突進をする。
炎の騎士団員B「まさか大型魔獣と遭遇する事になるとは…。」
炎の騎士団員C「魔獣め!此処を突破したければ我ら炎の騎士団の防御を崩して見ろ!!」
炎の騎士団員B&C『炎属性防御魔法、『炎壁』!!』
2人の騎士は大型盾を地面に叩き付けると共に2人の前に炎の壁が出現すると共に2つの炎の壁が1つの巨大な壁へと変貌する。
魔獣ジャイアントボアは突然と現れた炎の壁を背中の大きな異形の両手で押し潰そうと壁に触れた瞬間、当然と両手が燃え始める!!
予期せぬ反撃を受けた魔獣ジャイアントボアは巨大の両手を燃やしながら後退して行くも。2人の騎士の背後の間にもう1人が駆け付ける。
炎の騎士団員A「魔獣如きが我等の『炎壁の陣』を破れると思ったか!?防御から始まると共に繰り出すこの一撃を受けて見ろ!!」
騎士の両手に握り締めた剣の刃に魔力を集め炎を生み出し纏う。
炎の騎士団員A「魔剣術!『剛炎破斬』!!」
炎の魔力を得た剛破斬。剛破炎斬による炎の斬撃が放たれると共に炎の壁と衝突した瞬間、斬撃が壁の魔力を全て吸収させて巨大な斬撃へと変えて魔獣ジャイアントボアへと向かって放たれ直撃し、ボアの肉体を燃やして行く。
炎の騎士団員B「やったのか!?」
炎の騎士団員A「ああ、このまま焼け死んでくれれば良いが…。」
燃え行くボアの姿を、3人の騎士はボアの生死を見届ける。このまま焼死体になって欲しいと願うその時だった。
突然とボアは大きな遠吠えを叫ぶと異常な両手から魔力を集中させて緑色のオーラを纏わせると自身の周りに竜巻を囲ませる。
炎の騎士団員A「ば、馬鹿な、魔獣が!?」
炎の騎士団員C「ま、魔獣が、魔法を使っただと!?」
瞬間、囲んだ竜巻を掻き消し、全身が火傷まみれのまま立つ魔獣ジャイアントボアの姿があった。
魔獣が自分から魔力を通して魔法を使用した。こんな予想外な事が起きるとは思わなかった3人の騎士は大型盾を構えて防御体制に入る。対してボアは再び突進の体制に入ろうとする。
対立する双者。騎士達は魔獣ジャイアントボアの突進に警戒しながら盾を強く握り締める。
その時だった。魔獣にしか聴こえない鈴の音が聴こえ、魔獣ジャイアントボアは自ら突進の構えを止めて落ち着く。
炎の騎士団員A「な、何だ?突然と攻撃を止めた!?」
すると魔獣ジャイアントボアはそのまま騎士達とは戦わずに森の中にへと走り去って行った。
炎の騎士団員C「て、撤退を、したのか?」
炎の騎士団員B「分からん、だが何故…。」
炎の騎士団員A「そんな事は良い、それよりも我々はアルバ村へ向かうぞ、村にも魔獣の襲撃がある可能性があるかもしれん。」
2人の騎士は賛同すると、3人は直ぐ様に馬に乗り、アルバ村の方角へと向かって早速に駆け出して行った。
セトランド王国から離れた先にあるアルバ領地、そのアルバ村の自警団達が魔獣達に襲撃された事件が私達の住む、ディオス村にも通達サれて来たのは数日後の事だった。
突然と現れた魔獣ジャイアントボア、その身体に生やされた謎の異形なる魔力の両腕。魔力が魔力を、魔法を発動した例は一度も無かったと言う予想外を含めて。
この乙女ゲーム『CRYSTAL SYMPHONIA』の世界には、私の転生の様に予期せぬ展開が訪れるかもしれないと、この時の私はまだ知らなかった。
そして、魔法を使う魔獣ジャイアントボアが近い内に私達の前に現れる事を、まだ知らないでいた。