悪役令嬢、お姉ちゃんと最初で最後の姉妹喧嘩と言う名の真剣勝負をする。{前編}
私が知らない間に、エレイナお姉ちゃんがカレンの仕事に同行するがてら自らの戦闘経験を積み重ねを行い初めてから早くも数日が経った頃。
今日の訓練は珍しくも屋敷の庭では行わない野外訓練、珍しくも鎧防具と実剣を装備した私はレイラとエリシアと共にカレンに釣れられて近くの森の中を歩いていた。
エリシア「お、お姉様、こ、怖いです…。」
茂みの揺れ音に魔物が飛び出て来そうな気がしたのかエリシアは私の左腕にぎゅっと抱き着く。
セリスティア「大丈夫だよエリシア、そんな怖がる必要は無いわ。もし魔物とか出て来たら私がやっつけちゃうんだから!」
エリシア「お姉様に守られるなら、私、嬉しいですっ!」
そう言いながらエリシアは私の左腕に抱き着く力を増して行く、痛い…。
セリスティア「それにしてもカレン、今日の訓練は森でやるのは兎も角、武器防具を装備何て…。」
カレン「……ああ、そう言えばまだ伝えていなかったな、今回の訓練は実戦形式で行うからな。」
実戦形式!?となるとまた全力でカレンと戦うって事になるんだよね。けど、カレンの盾は未だに修復は完了していないって前に聞いていたし。一応聞いておこう…。
セリスティア「実戦形式?それってつまりまたカレンと戦うって事なのかしら?」
カレン「いや、今回は残念ながら私ではなく別の相手と戦ってもらう事となった。」
セリスティア「別の相手?それは一体…。」
カレン「それはだな、お、そろそろ着く頃合いだな。」
相手が誰なのかを伝える前に私達が前に野外訓練で使われた川場に到着すると、私達よりも先に誰かが訓練をしていた。
エリシア「彼処に居るのはもしかして…。」
エリシアが先に来ている誰かの名前を言おうとした途端、彼女は私達の気配に気付いたのか此方を振り向いて私を呼び掛けた。
エレイナ「待っていたわよセリスティア!!」
川場にて待ち兼ねていたのは何とエレイナお姉ちゃんだった。しかもお姉ちゃんは私と同じく皮の鎧と篭手を装備して。いや、それは兎も角さ、どうして彼女が此処に…。
セリスティア「えっ!?エレイナお姉ちゃん!?どうしてお姉ちゃんが此処に居るの?しかもその格好は…。」
エレイナ「まだ分からないの?それはね、今日のお前の実戦訓練の相手がこの私だと言う事だからよ!!」
私は驚愕した。まさかお姉ちゃんが今回の実戦訓練の相手になるとは…しかしレベルと総合値の差では私の方が有利でこの前の戦いごっこで秒殺されて全戦全敗したばかりなのに…。
まあ一応聞いておこう。
セリスティア「えっと、それは理解したわお姉ちゃん、けど、今のお姉ちゃんの実力だとた直ぐに一瞬で終わっちゃうわよ?」
エレイナ「……確かにそうよね、何時もの戦いごっこならねっ!!」
そう言うとエレイナお姉ちゃんは槍を上下左右に振り回し始める、それだけじゃない、お姉ちゃんは槍を両手持ちから片手持ちへと切り替えてからのその繰り返し、周辺の川の水と眼にも見えない風を切り裂く。切り裂いた風が圧となって私達に襲い来る!
え?何これ?お姉ちゃんってこんなに槍捌きが上手だったっけ!?
エレイナ「驚いた?カレン様の仕事に同行しながら魔物退治をして戦闘経験を積んでたのよ!!」
槍を向けながら私に言うお姉ちゃん。ちょっと嘘でしょカレン、こんなの聞いていないよと目線をカレンの方に向けるとカレンは眼を逸らしながら私に謝罪した。
カレン「…済まないセリス、まさかこの様な事になる何て思いもしなかったんだ。」
レイラ「………苦労、致しましたね。」
カレン「ああ、だがセリス、これだけは言っておくぞ。何時もの遊び相手をしているエレイナと対応するな、強さも違うと思え。」
セリスティア「分かったわ、それじゃあ行って来るわね。」
カレンに見送られ、私はお姉ちゃんの元へと向かいながら剣を抜く。
レイラ「お嬢様、御武運を。」
エリシア「お姉様ーっ!頑張って下さーい!」
2人の声援に背中を押されたのか私はお姉ちゃんに剣を向け構え、同じくお姉ちゃんも槍を私に向け構えながら、互いに対峙し合う。
エレイナ「そう言えば私達ってさ、今まではずっと遊び感覚で戦いごっことかしていたじゃない。こう言った本気の勝負って初めてだよね?」
セリスティア「…そう言われて見ればそうだよね。処で、お姉ちゃんは魔物退治をしただけで何処まで強くなれたのかな?」
エレイナ「フフッ、試してみるか?お前の身体で?」
そう言うとお姉ちゃんの身体から強いオーラが現れその身に纏い感じ取る。どうやら嘘偽りは無い見たいだ。秒殺では終わらせない見たいだ…。でも、やるしかないっ!!
カレン「実戦訓練を始める前に先ずルールを説明する!先に意識を喪失または自らが降参を宣言した方が負け、尚、実戦な為に無論、魔法と技術の使用も認める!!それでは両者、準備は良いか!?」
セリスティア「………。」
エレイナ「………。」
カレン「始めぇ!!」
カレンの掛け声と共に実戦訓練が始まる!
エレイナ「強くなったお姉ちゃんの実力、今この場で見せてあげるわ!!」
先に仕掛けたのはエレイナお姉ちゃん、お姉ちゃんは槍を構えながら真っ向から私に突きを仕掛ける!しかし!
セリスティア「『剣術・受け流し』!!」
私は『剣術・受け流し』の技術でお姉ちゃんの突きを左へと流すと同時に右側へと回り込みながら、お姉ちゃんの背後を剣で斬り掛かる!
セリスティア「卑怯とか言わないでよね!!」
そう言うと私はお姉ちゃんの背中を斬った。筈だった。何とお姉ちゃんは左片手で槍を大きく半周に振り回しながら、背後への斬撃を受け止めたのだった。
セリスティア「嘘でしょ!?」
エレイナ「残念だったわねセリスティア!生憎と背後からの不意討ち対策は魔物退治の最中で身に着けたのよっ!!」
セリスティア「きゃっ!!」
お姉ちゃんは力で私を押し出すと共に追撃を仕掛ける、何て攻撃の速さなのよ!
エレイナ「技術『槍術・乱れ突き』ぃ!!」
瞬間、私の視界から乱れた突きが上下左右に連続で繰り出される!!もしやと思うけれど、お姉ちゃんは総合値だけじゃない、技術までもが成長をしている!!
セリスティア「『受け流し』っ!!」
命中される前に私は『剣術・受け流し』の技術でお姉ちゃんの『槍術・乱れ突き』を次々と左右へと受け流し続けて行く、しかし、私は相手の攻撃を防ぎながら押し出されてる始末。兎に角、この状況を何とかしないと…。
エレイナ「たあああっ!!」
次なる突きが放たれると同時に私は一気に後退をして距離を取るもお姉ちゃんはそのまま追撃しに掛かる。突く、避けて退く、追撃するの繰り返し、どうする私?此処は魔法攻撃で油断をさせて反撃に掛かるしか…。
セリスティア「ファイヤー……。」
お姉ちゃんが突きが繰り出すと共に私は後退と同時に左手を背に隠しながら左掌に攻撃魔法を発動しようとした。
その時だった。
セリスティア「………えっ?」
突然と私の視界が変わって行く、いや違う、私が宙に浮いたままの状態になり、今にでも川の水の中に落ちようとしていた。
けど、お姉ちゃんは右手持ちのまま半周に振り回してから槍の柄の部分を私の腹目掛けて直撃させる。
セリスティア「かはっ!?」
一体何が起きたのか予想だにしなかった私は思いっきり吹っ飛ばされながら、そのまま川の中へとドボンと落ちる。
セリスティア「けほっ」
川の水を飲んでしまい途中吐きながら私はゆっくりと立ち上がろうとするが、何時の間にか私の前に立っていたお姉ちゃんは槍の穂を私の首元に向け、ニヤリと笑いながら言った。
エレイナ「おいおいどうしたんだセリスティア?そんな実力じゃあ今の私には届かないわよ。」
セリスティア「っ………。」
正直、こう言う絶体絶命な状況って野外訓練の実戦訓練でカレンと全力で戦って以来なのだろうか。
でも、何でだろうか、ピンチなのは私の方なのに逆に負ける気がしない!!