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悪役令嬢のお姉ちゃんは決意する!

初めての野外訓練を終え、カレンが我が家に住み始めてから早くも1ヶ月の月日が経過した中、私とカレンは中庭にて剣術の戦闘訓練を行っていた。因みに技術スキルの使用は禁止だ。


セリスティア「たああああっ!!」


木剣で振り掛かるもカレンは木剣を片手に持つと共に力量で受け止める。


カレン「どうしたセリス!?そんな振り方では私には届かないぞ!もう一度だ!!」


セリスティア「は、はいっ!!」


私は再度、木剣でカレンに連続で打ち込み続けていくも全部防がれてしまう始末、やっぱり幾ら大幅にレベルアップをしても力量の差は変わらないか…。


カレン「良い連続攻撃だ。だが、右足の振り込みが足りないぞ!!」


カレンは全体重を掛けた押し出しがてらの横一閃を振り放たれると私の手に持ってた木剣が弾き飛ばされてそのまま地面に突き刺さり落ちる。


セリスティア「す、凄い……。もう1回お願いします!!」


カレン「そうでなくてはな、来いっ!!」


まだまだやる気一杯の私はカレンとの訓練を続ける、互いの木剣を打ち込む音が庭中にて響く最中、我が家の正門前にてエレイナとエリシアが門前の掃き掃除中のメイドに挨拶すると直ぐ様に2人は訓練中の私が居る庭へと向かい声を掛けようとするが止めてしまう。


エレイナ「セリスティア、遊びにってまた訓練してんの?」


エリシア「その、間が悪かった。見たいですね、エレイナ様。」


エレイナ「何かさ、カレン様がクラリスロード邸に住み込んでからは毎日セリスティアの奴が訓練に没頭してて付き合い悪いじゃん。お姉ちゃんとしては何か寂しいしさ…。」


実質エレイナの言う通り、カレンが我が家に居候してからは訓練漬けの毎日の最中、幼馴染であるエレイナとエリシアの付き合いも悪くなってる事に肝心の私は気付いていた。


エリシア「確かに、そうですね、お姉様と最近付き合いは兎も角、挨拶もしてません。何しろ、1日中見かねない時も有りましたから…。」


エレイナ「だよね、ああ、早く訓練終わってくれないかな。」


そう思い込んでいると、エレイナの願いが奇跡的に届いたのか、カレンは木剣を腰に収める、どうやら今日の訓練は終わりの様だ。


カレン「良し、今日の訓練は此処までにしようか。」


セリスティア「その様子だとまたお父様のお仕事の手伝い?」


カレン「ああ、また近くの森の調査にな。本来ならもう少し訓練を続けたいが済まないなセリス。」


セリスティア「謝る必要は無いわよ。国や領土を守るのが騎士であるカレンのお仕事でしょ、私は少し休んでから自主訓練に専念するから行って来て。」


カレン「有難う、では行って来る。」


カレンは私と別れ、近くの森へ向かおうと屋敷内を出ようとする途中、何時の間に来ていたのかエレイナとエリシアの2人とすれ違うと2人はカレンに挨拶する。


エレイナ「御機嫌よう…。」


エリシア「ご、御機嫌よう。」


カレン「ああ、御機嫌よう。」


カレンは2人に向けて礼儀正しく頭を下げて挨拶しながら去って行くと2人はカレンの去る後ろ姿を見つめるとエレイナはこれは好機と察したか直ぐ様にセリスティアの元へと駆け寄る。


セリスティア「はてさて、カレンは仕事に行っちゃった事だし1人で瞑想でもしようかな〜っと。」


エレイナ「セリスティア!」


部屋に戻って瞑想でもしようと移動した途端、聞き覚えのある声が後ろから聞こえ私は振り向くと其処にはエレイナとエリシアが居た。恐らくだが訓練の途中から来ていたのだろう。


エレイナ「やっとカレン様との訓練終わったわね!さあ!久方振りに何時もの場所で私と戦いごっこするわよ!!」


エリシア「わ、私も、お姉様との戦い振り、見てみたいです。」


セリスティア「え〜〜〜〜〜っ。」


今さっきカレンとの訓練終えたばかりなのにエレイナお姉ちゃんと戦いごっこは流石に連戦はきついじゃん、でも、断りたいけれど私の戦いっぷりを直で見てみたいエリシアは眼をキラキラ輝かせて断りづらいし…。


エリシア「わあっ……。」


セリスティア「……はぁ、分かったわお姉ちゃん、最近付き合いもあんまりしていないし一緒に遊んであげる。」


とまあ、仕方無く私はエレイナお姉ちゃんとの戦いごっこに久し振りに付き合う事となった。


そして場所は変わり、何時もの場所である屋敷近くの草原地帯にて。


エレイナ「なっ……。」


これで5連勝、しかも始めて直ぐ様に秒殺。数回打ち込んでから持ち手の間に釣り上げるかの様に速度重視に打ち込み、槍を弾き落とすだけの流れ作業的なやり方でね。


セリスティア「はい、これでまた私の勝ちね。」


エリシア「凄い、前に戦った時より、またお姉様が強くなってる。」


毎日、カレンとの厳しい訓練の成果なのか、また互いの実力の差が伸びてしまった事に驚くエリシア。


セリスティア「お姉ちゃん、まだ戦いごっこやる積り?」


エレイナ「当たり前でしょ!私がお前に勝つまで諦めないんだから!!」


そう言いながらお姉ちゃんは落ちた槍を拾い取り、再び戦闘態勢の構えを取る。うわ、まだやる気だよこのお姉ちゃんはと呆れる私。


エリシア「お姉様!頑張って下さい!」


セリスティア「はーい、頑張るわねー。」


可愛い妹分の小さな声援に応援され、やる気無くも笑顔で返事をする私。


その後のお姉ちゃんとの戦いごっこはと言うと、まあ、結果は言われるまでも無いけれどね…。





私達の暮らしている領地『ルークディオス領地』にある『ディオス村』はその名の通り、エレイナお姉ちゃんの父親である貴族領主アルフォンズ・G・ルークディオス様が管轄としている。


人口は約200人弱、建物の大半は民家や畑。店は酒場と収穫した農作物を販売とする露店舗しか無い田舎町。


このディオス村の領主アルフォンズ様は昔から村を管理しながら直接、奥さんや使用人の方々と共に畑仕事や収穫の手伝いをしている地域密着型のお人だ。正直、貴族とは程遠いけれど…。


とまあ、そんな私達3人は現在、村の中を歩いていた。とくに先頭を歩くお姉ちゃんは今日の戦いごっこの結果に苛立っていた。


エレイナ「もーーーっ!何でこんなに負けされなくちゃならないのよー!!」


セリスティア「そりゃカレンに滅茶苦茶鍛えられてますからね。」


エレイナ「だからって強過ぎよセリスティア!」


セリスティア「何でしたら、手加減でもする?」


エレイナ「それは止めて!……手加減何かしちゃったら堂々と戦う意味無いじゃないの。」


意外にも私への手加減を断るお姉ちゃん、それもそうだよね、真剣勝負で手加減何かしてしまったら私の方が恥を欠いてしまう始末だよもう。


そんな事を思いながら私達は畑を通ると畑仕事している何人かの農民のおじ様達が私達の存在に気付く。


農民男A「おお、エレイナ様だ。」


農民男B「セリスティア様とエリシア様も御一緒に居るぞ。」


農民女A「お嬢様ーっ!」


何人かの村人達が私達の元へと駆け寄る、私達は一応村の中でもたった2人の貴族令嬢と学園長の娘、とくに領主の娘であるエレイナお姉ちゃんとかは父親であるアルフォンズ様に世話になられている好影響か村人達は尊敬されているからだ。


エレイナ「村の皆様方、御機嫌ようですわ。本日も畑仕事御苦労様で。」


うわあ、相変わらず性格の切り替えが早い事だなお姉ちゃんは。すると何人かの村人が採れたての野菜を持ってお姉ちゃんに差し入れをしに来た。


農民女A「エレイナ様、本日収穫なされた野菜です。良ければ御屋敷に持って帰って下さい。」


農民男A「こっちの土芋つちいもも採れたでです。」


農民男B「うちで採れた林檎も良かったらどうぞ!」


エレイナ「まあっ!こんなにお野菜を、何時も有難う御座います。後で家の使用人に直接お渡しに向かわせますので。」


そんなお姉ちゃんと村人達との交流する様子をエリシアと共に見つめていた。


エリシア「エレイナ様って村の皆様から慕われていますね。」


セリスティア「まあ、領主の娘だからね。」


うんうん、と私は縦に頷きながらそう答える。暫くしてお姉ちゃんが村人達との交流を終えると私達3人は町方面へと足に着いた。


まあ、町と言っても大半の建物は民家だから町とは言えないからね、大きい建物があるのは古い教会とお父様が経営している工房くらいしか無いけれど。


女村人A「あら、エレイナ様だわ。お友達のセリスティア様とエリシア様も御一緒よ。」


女村人B「本当、何度見てもお綺麗な事だわ。」


この様に私達は歩きながらすれ違う村人達に向けて軽く手を振りながら挨拶をする。


セリスティア「いや〜。相変わらず村の人達からは結構慕われていますな〜。エレイナ様は。」


エレイナ「止めてよもう!そもそもあれは素よ素、貴族たる者、礼儀正しくしなさいってお父様に厳しく言われてるんだから。」


エリシア「それはつまり、エレイナ様の評判が悪くなりますと、お父様である領主様の評判も悪くなる、と言う事ですか?」


エレイナ「そう言う事よ。と言うかさ、そう言うお前等はどうなのさ?」


セリスティア「私?そうだね…昔、頭を打ってからは一時的だけれど両親から過保護状態になってからはあんまり家の事は言われていないわ。」


エリシア「私は、その、お父様からは自由に生きなさいと言われました。」


私とエリシアはそう答えるとお姉ちゃんは不服そうな顔をしながら不満がると同時に町の中心部である広場に私達は足を止める。


エレイナ「何か羨ましいわね、親に何も言われない何て…。」


セリスティア「そう?でも悪い事をしたらちゃんと怒られるけれど普通だよ。」


エリシア「私もです。」


エレイナ「………………あっそ。」


そう返事をするとお姉ちゃんは機嫌悪そうな表情をしながらそっぽを向く。うわあ…やっぱりあの時の戦いごっこで全部秒殺で勝っちゃったのが原因かな…。


そんな事を思っていると私達の元に数人の男の人達が此方に来て話し掛けて来た。


村人男「おや?其処に居られるのはエレイナ様では有りませんか。今日もお友達と御一緒にお出掛けですかい?」


話し掛けて来たこの人はガイアーさん、このディオス村の防衛を役目と自警団の団長を勤めている。他の人達も武器を腰に収めてるこの様子から見て恐らく村の見回りをしている途中だろうと、そんな事を思いながら私はガイアーさんに挨拶をする。


セリスティア「今日はガイアーさん、何時も村の見回り御苦労様です。」


エリシア「こ、今日は…。」


ガイアーさんの強面な顔付きに怯えたのかエリシアは直ぐ様に私の後ろに隠れる。


ガイアー「ありゃ、もしかして何か怖がらせてしまったかいな?」


自警団員A「そりゃそうでしょ!何たってガイアーさんの顔って魔物がビビっちまう程に怖いっすからね!」


自警団員B「けど女将さんからは尻叱れてんすよね〜。」


ガイアー「お前等なぁ!!」


セリスティア「アハハハ……。」


相変わらず奥さんには気が弱いんだよね、ガイアーさんは。


ガイアー「にしても、エレイナ様は何時もながらにお美しいのは兎も角、セリス様に会うのは何か久方振りな気がしますな。」


セリスティア「ええ、実は先月から我が屋敷に王国から派遣された騎士様が住み込みがてら。私に訓練を受けて下さっていまして。」


ガイアー「騎士様?ああっ!もしかして此処最近良く村で見かねるあの女騎士様の事ですか!どうりで見掛けない顔かと思いましたがあの方はセリス様の関係者でしたか!」


自警団員「どうりで可愛い美女が家の村に歩いてる訳だ!」


おいおいカレン、自分も知らない間に村の男達にモテるとは…。


セリスティア「と、取り敢えず今後共、うちのカレンを宜しくお願い致しますわ。」


カレンの事を宜しくお願いしますと私は本人に代わって自警団の皆さんに挨拶をする。村の人達と仲良く触れ合う。


そんな様子をエリシアは微笑むも、お姉ちゃんの方は何故か喜べずに寂しげな表情ヲしていたのを私はまだ気付かなかった。





side ELAINA


私の名前はエレイナ・G・ルークディオス。

領主貴族である父と母の間に産まれた貴族令嬢だ。先ず最初にこれだけは言っておく。


私は、妹が好きだ。


何時頃そんな事に目覚めたのかと言うと、切っ掛けは2歳の時、弟のノービスが産まれた時からだった。一見からして私は家族が1人増えて喜ぶが何故か私の時は喜べなかった。


両親が村の畑仕事の手伝いの時期が多くなると弟の世話係を任せられ、最初、どう接したら良いのかと考えてる最中、私の頭の中である考えが浮かび出た。


ああ、どうして妹じゃなくて弟なのだろうか…。


それが喜べなかった理由に気付くも手遅れ。靄を掻き消す解決策が見つからずにいたある日、私達家族はある屋敷へと訪れ、その主の貴族夫妻とその娘に挨拶に伺った。


その貴族の家の名前はクラリスロード家。


数百年前から続く武器防具製造を専門とする鍛冶屋上がりの田舎貴族で家族総出でこの村に引っ越して来たそうだ。何でもこの田舎の空気が武具製造の場所に合いそうだと。まあ、私は興味無いけれど…。


屋敷の主であるルーファス様の後ろにひょこっと可愛らしい生き物が私達姉弟をじっと見つめて来た。その可愛らしい生き物もとい少女こそセリスティアだった。


幼い彼女セリスティアを見た途端、私の心に矢が突き刺さりキュンとした。そう、私は一目見て惚れてしまった。


それから私はセリスティアと仲良く遊ぶ様になった。互いの性格が強気なせいなのか、周りを巻き込むかの様にわんぱくに遊び回ったり、時に戦いごっこをして私が勝つ度に自分が強いお姉ちゃんだと意識させた。


そんな幸せな日々が2年も続いたある日、セリスティアが頭を打って倒れた。


原因は何時も通り屋敷の庭で遊んでいた最中、2階ベランダの掃除をしてた使用人が植木鉢を手に取ろうとした途端に滑らせてしまい運悪く頭上に当たったそうだ。酷い出血だったけれど生命に別状は無く無事だと知ったのはその翌日からだった。


彼奴が意識を取り戻してから数日が経った頃に私は数日振りにクラリスロード邸に訪れ、セリスティアに会いにお見舞いに来たら…。


セリスティア「………え、えっと、取り敢えず一言だけ。誰?」


衝撃だった…。まさか私の事を忘れてしまうだけでなく強気だった性格が穏やかで心優しい性格へと変わっていた。


それだけでは無かった。暫くしてからの戦いごっこをしたら、今まで私に一度も勝てなかった筈のセリスティアが私に勝利した。


初めての敗北だった。それからは彼奴と戦う度に負け、負けて、時に勝ち、また負けを積み重ねた。そう、私が負ける度にセリスティアは段々と成長を成し遂げていたんだ。


そして現在、私はセリスティア相手に秒殺した。先月前から彼奴の屋敷にカレンと言うセトランド王国から派遣された女騎士様に戦闘訓練を受けているそうだ。どうして彼奴が訓練を受けているのかは分からないけれど。


正直、彼奴に、セリスティアに嫉妬してしまった…。


けど、敗因は自分でも分かってる、それは……。


その時、何処からか悲鳴が響いた。


ガイアー「な、何だ!今の悲鳴は!?」


自警団員A「お、おいっ!あれを見ろ!!」


1人の自警団員の指差した方向を眼にした瞬間、登街道に1匹の馬が広場の方へと疾走する。しかも誰も乗馬していない状態で此方に突っ込んで来る!!


自警団員B「暴れ馬だ!!」


ガイアー「不味い!武器を構えろ!」


ガイアーさんの指示で自警団の人達は一斉に武器を構える!私も遅れて背中に背負った槍{長い棒}を抜き構えようとするが馬は一直線に駆け出した筈が自警団達の武器を構える姿を眼にして怯んだのか前足を上げ彼等とは別方向へと道へと駆け出す。


その先には散歩帰りの子連れの母娘おやこがいた。母親は迫り来る足音で馬の存在に気付いたか直ぐ様に子供を守ろうと抱き締める。


エレイナ「っ!!」


私は直ぐ様に槍を持ちながらあの母娘を守ろうと走ろうとするが脚が動けないでいた。馬はそのまま母娘の元へと突っ込もうとする。駄目!あのまま馬と衝突したら2人の身が…。


お願い、動いて、動いてよ私の足ぃ!!


セリスティア「『加速』&『跳躍』!!」


瞬間、何かが眼にも見えない速度で私を通り過ぎ、暴れ馬の左側へと接近する。


あれはもしかしてセリスティア?さっき私の近くに居たのに、何時の間にあんな所まで走って、いや、馬に追い付いている!?


母親「きゃあああああっ!!!」


暴れ馬が母娘の前で前足を上げた瞬間、何時の間にかセリスティアは馬の背後に飛び込み木剣を振り掛かった!


セリスティア「技術『剣術・峰打ち』!!」


眼にも止まらぬ速い一閃で馬の首筋に打ち込んだ途端、馬は横から地面に倒れ伏せてそのまま泡を吹き出しながら気絶した。な、何て攻撃の速さなの?あれが今のセリスティアの強さなの!?


そんな事を思いながらも、セリスティアは木剣を腰に収めて巻き込まれた母娘に声を掛ける。


セリスティア「大丈夫ですか!?」


娘「うわあああああん!!」


母親「有難う御座います!お嬢様、有難う御座います!」


助けた母娘はセリスティアに涙を流しながら礼を言う。対して彼奴は微笑みながら母娘の無事を確認する。


ガイアー「す、凄え……暴れ馬を一瞬で気絶させやがった!?そ、それよりもおいっ!大丈夫か!!」


自警団の人達が母娘の元へと無事かどうか確認しに駆け出す。集まった村人達はセリスティアへの歓喜と感謝の声が響かす。


それに対して私は動けなかった。いいや、見ている事しか出来なかった。


エリシア「凄いですお姉様!あの様な暴れ馬を一瞬で気絶させて母娘を助ける何て素晴らしいですっ!!」


エレイナ「………。」


エリシア「エレイナ様?」


悔しい、私はお姉ちゃんなのに…。本当に悔しい!そんな思いを胸に秘めながら私はこの場から離れた。


エリシア「エリシア様、ど、何方へ?」


エレイナ「………御免、帰るわ私。」


エリシアに謝ると私は別れた。お姉ちゃんなのに……。気付けば私の可愛い妹、セリスティアは強くなった事に対して私は弱くなっていた。


なら、これからどうする?そんなの決まってる。私がお姉ちゃんとして出来る事は……。



side out





夕方時。


今日の森の調査と見回りの仕事を終えたカレンは単身、ディオス村に戻ると共にクラリスロード邸に向かって歩きながら今日の調査状況を頭の中で整理していた。


カレン{今日もまた収穫は無しか……やはりこの様な田舎領地には魔獣の被害は無い。だが、平和な頃合いに、主に油断がした瞬間に現れても可笑しくも……ん?}


1人の人物がカレンの前に姿を現し立ち止まる。現れたのはエレイナだった。


カレンは彼女がセリスティアの友人の1人だと言う事は知っている、この村の領地を仕切る領主貴族の娘だと言う事は野外訓練から帰還した日と派遣初日に領主の屋敷で直接、挨拶に伺った為か2度面識がある。


カレン「君は確か、この村の領主殿の娘でセリスティアの友達の…。」


エレイナ「はいっ!エレイナ・G・ルークディオスと申します。カレン様。」


カレン「もう子供が家に帰る時間帯の筈だが?どうして此処に?」


エレイナ「貴女を待っていたからです。っ………お願いがありますカレン様!どうか私を貴女の弟子にして下さいっ!!」


エレイナは思いっきり頭を下げてカレンに自分を弟子にして欲しいとお願いする。突然の事にカレンは驚くも、何故エレイナが弟子になりたいのかをカレンは聞き出した。


カレン「………ちょっと待って欲しい、えっと、いきなり弟子にして欲しいって言われてもだな、コホン、エレイナだったっけ?君はどうして私に弟子入りしたいのだ?」


エレイナ「そんなの決まっています!私、強くなりたいんです!!」


強くなりたいと願うエレイナ、しかしそれだけでは納得出来ないとカレンは判断するも、エレイナに質問する。


カレン「ただ強くなるだけでは意味が無い、だから質問を変えよう、何故、君は強くなりたい?」


すると、拳をぎゅっと握り締めながら、エレイナは自分が強くなりたい理由をカレンに話し始めた。


エレイナ「私、彼奴の、セリスティアのお姉ちゃん何です。」


カレン「…お姉ちゃん?」


エレイナ「でも、気付けば私はセリスティアより弱くなっていた事に気付いていたんです。悔しくて、本当に悔しくてっ!今にでも手が届かなくなりそうだから!!」


眼から涙を零し、嗚咽しながらエレイナは今の自分の実力がセリスティアの手に届かない所にまで遠退いてしまう事に…。


そんなエレイナの姿を見てカレンは昔の自分の姿を重ねていた。


エレイナ「だからお願いします!どうか私をセリスティア見たいに強くして下さいっ!!」


再度カレンに弟子入りをお願いし頭を下げるエレイナ。しかしカレンは子供相手とは言え少しながら厳しく口調で


カレン「………君の強くなりたい事情は良く分かった。」


エレイナ「でしたらっ!」


カレン「だが駄目だ。生憎と私の様な騎士団員だとセリス1人だけ教えるのが限界でな。まあそう言う事だから諦めて欲しい。」


そう言うとカレンは屋敷に戻ろうとエレイナと別れ素通りした瞬間、エレイナは大きな声である事をカレンに向けて叫んだ。


エレイナ「私が領主の娘だからですか!?」


カレン「………何?」


カレンはエレイナの方を振り向くと彼女は悔し泣きしながら同じ事を再度カレンに向けて叫んだ。


エレイナ「私が、この村の領主の娘だから、カレン様の弟子には、なれないのですか!?」


カレン「………確かに、エレイナ、君が領主の娘だと言う事は一理に有る、もし君の身に何かあってもしたら私が領主に怒られるからね。それじゃあ、私は屋敷に帰るから君も暗くなる前に早く家に帰るんだぞ。」


そう言うとカレンは今度こそエレイナと別れクラリスロード邸へと向かって帰って行った。


エレイナ「私、まだ貴女に弟子入りする事!諦めていませんからっ!!」


カレン「………。」


叫ぶ最中、彼女の去る後ろ姿を見つめる事しか出来なかった。1人になったエレイナは涙を拭き流してから自分の屋敷へと帰って行った。


エレイナ「………強くなりたい、私がもっと強くなるには。」


このディオス村にて代々領主貴族を勤める一族。ルークディオス家は生まれながらにして地の魔力持ちであると同時に槍の達人の出が多い。一族の中にはセトランド王国に将軍となった者も居たと現在いまでも記録されている。


無論、攻略キャラであるノービスとその姉のエレイナも同じく地の魔力持ちで槍使いである。


しかし、ルークディオス家にて槍を教えられるのは1人、主に()に産まれた男児にだけ与えられる事、故に一族代々に伝わりし秘伝の槍術そうじゅつを受け継ぐのはノービスのみ、それはつまり女児であるエレイナには与えられないと言う事を意味しているからだ。


この世界の貴族社会は主に男が活躍し、女が表立つ事は余り見れない男尊女卑だんそんじょひで成り立っている、前世で言うならば古い事しか考えられない昭和意識の頭の固い人間で構成されてると言う事を、この時の私はまだ知らないでいた。


屋敷に帰宅したエレイナは屋敷内のとある場所へと目指して歩いていた。


エレイナ「確か、この扉だったよね…。」


足を止めた先にはもう何年も前から鍵穴の寂れ、古びた木製の扉があった。幼い頃、一度だけノービスと共に屋敷内で追い駆けっこして時に偶然見つけたのだ。何でもあの部屋には強力な武器や道具を管理する貯蔵庫だったらしく扉を開けると室内の火薬粉が木の粉末が触れて粉塵爆発を起こすから開けてはならないと父に強く言われているからだ。


そんな父の言葉を信じろと?実の子供相手にあんな脅しめいた言葉を、馬鹿げていると思ったエレイナは自ら父への禁を破り貯蔵庫の扉を開けて中に入った。


粉塵爆発は起きなかった。しかし…。


エレイナ「嘘でしょ!こ、此処って…。」


そう、エレイナが入った場所は武具庫ぶぐこであった。有るのは飾られた古びた甲冑を始め、ホコリまみれの壺と模様皿、壁側に横列に揃えられた槍。そして1番奥の壁には軍服を着込んだ槍持ちの男の肖像画が飾られていた。エレイナはこの肖像画の男が誰なのか直ぐに把握した。


エレイナ「もしかして、この絵の男の人って、私達の御先祖様?」


前に父から聞いた事がある。自分達の御先祖様は槍1本のみで敵陣に向かって数多の敵兵を討ち倒しながら王陛下から貴族へと成り上がったと言われている。エレイナは御先祖の肖像画を見つめる。


エレイナ「………御先祖様は1代で貴族へとなったんだ。私だって、セリスティア見たいに!!」


ぎゅっと拳を握り締めながら、もう後戻りは出来ないと覚悟を決めたエレイナは壁側に揃えられた槍の所へと近付き、1本の槍を手に掴み取ったのだった。





翌日。

本日のセリスティアの戦闘訓練の指導を終わらせたカレンは今日も村外れの近くの森の調査へと向かおうと歩いていた。


カレン{セリスの剣の筋も少しずつながらに伸びて来たな。明日からはより少し難易度を上げるとして……む?}


カレンの前に1人の人物が姿を現し立ち塞がる、現れた彼女、エレイナの姿を見たカレンは溜息をする。


エレイナ「お早う御座います、カレン様。」


しかも彼女は槍を背負い、革の鎧と篭手を身に着けた姿のままエレイナはカレンに礼儀正しく挨拶をする。


カレン「お早う、と、弟子入りは駄目と言いたい処だがその格好は一体…。」


エレイナ「お願いがあります!どうか私をカレン様のお仕事に同行させて下さい!!」


カレン「いやいやいやいや、ちょっと待ってくれないか?成程、その手で来たか……。エレイナ、君のその格好を見て私は後の事を言いたい処だが念の為に言おう、どうして私の仕事に同行を求める?」


エレイナ「そんなの決まっています!!私もセリスティア見たいに強くなりたいからです!!」


カレン「はぁ、昨日も言った通り、私の様な何の実説も無い一騎士相手に教えられるのはセリスティア1人が限界だ。」


エレイナ「それは分かっています!だからセリスティアの訓練の()に私はカレン様の指導を受けに参ったのです。ですので、カレン様のお仕事の邪魔は致す気は有りません。どうか、間で構いませんのでこの私に戦い方を教えて下さいませ!!」


そう言うとエレイナは思いっきり頭を下げてお願いする、カレンは頭を抱えながら考えた。仮に自分が駄目だと口で言ってもエレイナはどの道、次の日に現れて同じ事を繰り返すのだろう。


カレン「………仮に連れてったとしても君がセリスティア同様に強くなれる保証は無いらそれでも付いて行く積りか?」


エレイナ「はいっ!!」


大声で返事をするとカレンは内心、この世にはセリスティアを含めた貴族令嬢は凛々しさを大きく外れて強気な者しか居ないのかと苦労した。


カレン「………」


エレイナ「あ、有難う御座いますっ!!」


こうしてエレイナはカレンの仕事の付き添いもとい弟子見習いと言う立場としてカレンの仕事へ同行する事になった。


2人は近くの森の中を歩きながら、カレンは森での注意事項をエレイナに伝えた。


カレン「良いかエレイナ、私が仕事している合間は自由に動いても構わないが、もし魔物とかを見かけたら直ぐ様に戻って私に報告をって!?」


瞬間、ガルフの群れに気付いたエレイナはカレンの話を遮って直ぐ様に速攻で飛び出した。


カレン「お、おいっ!エレイナ!!」


エレイナ「でやあああああっ!!!」


ガルフの群は突然、茂みからエレイナが飛び出し強襲に掛かって来たのか動作反応が遅れてしまうと同時にエレイナの槍は1匹のガルフの脳天に深く突き刺し絶命させる!!


エレイナ「先ずは1匹目!」


1匹目を倒すとエレイナは槍を抜こうとした瞬間、2匹のガルフがエレイナに飛び掛かろうと襲い掛かる!!


カレンは後から駆け付けた最中、上からの襲撃をエレイナに叫んで伝える。


カレン「上だエレイナ!避けろっ!!」


エレイナ「っ!?うわあああああっ!!!」


飛び掛かって来た1匹目を素早く顎の下から脳天まで深く突き刺すも、もう1匹飛び掛かったガルフはエレイナの腹目掛けて突進を繰り出す。


エレイナ「かはっ!?」


魔物の攻撃をモロに食らったエレイナは吹っ飛ばされ地面に倒れるも、痛みに堪えながらゆっくりと立ち上がると共に血反吐を吐き捨てる。


エレイナ「つぅ……けほっ、かはっ、くっ!!」


痛い……こんなに痛い事は生まれてだと言う事を、しかし立ち上がったのも束の間、ガルフはエレイナの顔を噛み付こうと飛び掛かろうとする。瞬間、エレイナはセリスティアとの戦いごっこ秒殺された事を思い出す。


自分の悔しさが、強さへと変え、勇気が炎の様に湧いて出たのか。エレイナは抵抗の咆哮を叫び放った。


エレイナ「うわあああああっ!!!」


噛み付きに掛かったガルフの顎目掛けて左膝蹴りを繰り出すと同時に倒したガルフの頭に突き刺さった槍を素早く抜き取り、別のガルフに向かって斬り込む。


有り得なかった。連れてけば痛い思いを済んで自分の弟子入りを諦めると考えていたカレンはエレイナの戦う姿を見て驚きを隠せずにいた。


カレン{信じられない、口だけの強気なお嬢様かと思ったら逆に予想外な展開になるとは。エレイナ、彼女はもしかしたらセリスと同じく戦士の素質があるとでも!?}


そんな事を考えていると新たなガルフの群が茂みの中から姿を現すとカレンはエレイナに戦うか逃げるかの何方かを聞き出す。


カレン「増援か、どうするエレイナ?このまま村へ逃げるも良し、痛い思いをしながらあの魔物共と戦うか選ぶんだ。」


エレイナ「逃げる?何を言ってるんですか、私はお姉ちゃん、こんな魔物何かに負けるものなんですか!!」


包囲のガルフ達を見つめ、エレイナはニヤリと笑って槍を振り回しながら魔物達に向けて槍を構える。


エレイナ「さあ掛かって来なさい魔物共!全員纏めて私の槍の餌食にしてあげるわ!!」


確して、1人の姉もといお姉ちゃんは愛する妹の為に強さを目指すのだった。

エレイナ・G・ルークディオスの現在の総合値ステータス

基本情報

名前:エレイナ・G・ルークディオス

性別:女

年齢:11

属性:地

職業:貴族令嬢

総合値

Lv:5

HP:131/131

MP:46/46

攻撃力:21

魔法力:10

器用力:19

防御力:15

機動力:12

所有技術しょゆうスキル

『地耐性{弱}1』『地魔法{下}1』

『読書5』『槍術4』『槍術・乱れ突き3』

『槍術・一点突き4』『突撃アサルト1』

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『推しの乙女ゲームの悪役令嬢に転生するも攻略キャラが全員ヒロインなのが間違っている!?』小説家になろう及びカクヨムにて兼任連載中! 感想も宜しくお願いします!m(_ _)m
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