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夢と現実  作者: 石川技院
2/14

過去と売人:01

2007年夏


水谷は、相手との待ち合わせである駅へと車をはしらせていた。

車は2年前、当時付き合っていた女に中古で買わせたBMWだ。


今日は特に暑い陽気で、気温は30度を上回っていた。

車内の冷房をガンガンにきかせながらも、あちぃ。と呟きながら駅のロータリーへと車をすべりこませた。


駅に着くなり、相手の車が見当たらない事を確認すると、

車内の時計をちらっと見た。そしてゆっくりと深呼吸をした。

まるでここまでの道のり、何者かから必死に逃げてきた。

そんな緊張から解かれたような様子だ。


相手とは午後2時に、ここの駅で待ち合わせの予定だが、

時間はまだ1時半をまわったばかりだ。


水谷は逸る気持ちを抑えつつも我慢ができず、気づくとバッグからケータイを取り出していた。

メモリから小沢という名前を見つけると、発信ボタンを押した。

数秒後、怪訝そうな声で、もしもし。とでた。


「あっ、もしもしー。自分ですけどー。」


「うん、どうした。もう着いたの?」


「ちょっと早く着いちゃいまして、すいません。」


「わかった。あと10分ぐらい待ってて。」


「わかりましたー。すいません、失礼します。」


水谷は苦笑した。言いきらないうちに電話は切れていたのだ。

ケータイをポケットにしまうと、息をはくと、

BMWのシートを少しだけ倒し、本を読みながら相手を待った。

(10分て事は30分は掛かかるな。)

前に、2、30分待て。と言われ、2時間以上待たされた事があった。


少しすると水谷は、ふと思い立ったようにさり気なくBMWから降りた。

そして駅目の前にあるコンビニへ入ると、

雑誌コーナーで立ち読みするフリをして、ロータリーに入ってきた車に注意を払った。

車は新型のスカイラインで、若い男が運転をしており、

40代ぐらいの男が助手席に乗っていた。


スカイラインは駅のロータリーへと入ってくるなり、速度を5~10キロ程度に落としながら周囲に気を配っていた。

休日とあって、ロータリーには10台近くの車が縦列駐車されている。

その中の1台、古い型のセルシオの横腹にスカイラインを停止させると、助手席の男が降りた。

助手席の男はベージュのチノパンにポロシャツといったいでたちだった。

後から運転手の若い男も降りてきた。

若い男は黒のスラックスにワイシャツだった。

年は水谷とさほど変わらないだろう。

髪を立たせ、眼鏡をかけている。一見大学生のようにもみえる。

二人はセルシオに乗っていた若い男に一言、二言交わすと男がセルシオから降りてきた。

セルシオの男は、緊張した面持ちでセルシオのトランクを開けた。

スカイラインの二人はそれを確認すると、トランクの中の何かを探し始めた。

が、ものの1分も経たないうちにトランクは閉められ、

再度言葉を交わすと、二人はスカイラインへと乗り込んだ。


スカイラインは覆面パトカーだった。

覆面パトカーはロータリーを1周すると、何事もなかったように出入り口の信号を左折していった。


水谷はそれを確認すると、缶コーヒーとタバコを買ってコンビニを出た。

コンビニの前で先ほど買った缶コーヒーを開けると、一気に半分程飲み、マルボロに火を点けた。


ポケットからケータイを取り出して時間を確認すると、息をはいた。





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