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夢と現実  作者: 石川技院
11/14

売人と仲間:04



「もしもーし」


数回コールの後、明るい口調で男が出た。長妻だ。


「あっ、ショウくん?着信あったんだけど、どうしたんですか。」


前原も負けじと明るい口調でいった。


「何回も電話したんだけど。」


声のトーンが一気に下がった。


「ごめん。いま「dove」に行っててさ、ケータイを車に忘れちゃって。」


「それで?」


長妻が冷たくいった。


「それで、折り返しが今になったんですよ。」


わざと苛立ちを見せるかのように、前原は言い放った。


「そっかそっか。つーかさ、ネタが切れてんだ。今からうちまで持ってきてよ。」


「今からですか?」


「そう、今から。」


この野郎。胸の奥で前原はいった。


「いいですけど量は、今2gしかないですよ。」


「いいよ、それで十分だよ。」


明るい口調に戻った。


「じゃあ今から向かいますよ。」


「どれくらいで着くよ。」


前原はわざと聞こえるように、チッと舌うちをした後、10分もあれば。と答えた。


「じゃあ待ってるよ。」



通話が切れると、助手席のドアに携帯電話を投げつけた。


長妻の様子が明らかにおかしい。

長妻はシャブにハマっている。が、何かいつもと違うことが電話の声から伝わった。


長妻は前原の3つ年上で、数か月に「dove」で知り合った。

他の客と同様に、長妻が話かけてきたのだ。


長妻は週に一度3~5gを買ってくれる「太い客」であり、シャブ中にはめずらしい金の払いいタイプの人間だった。

太客が故に、扱いも他の客とは違い、今回のように家まで配達することが多々あった。

だが、仮に客の家まで配達をしたいといったとしても、住所を知られるのを嫌がり、拒むのが普通だ。

長妻という男はそういった事を一切気にしない。

毎回取引もスムーズで、こっちの事も変に詮索をしてこない。

その長妻が少しおかしい。


シャブに狂い始めたか、家に行ったらなにかマズイ事になりそうだ。

いや、気のせいだ。


前原は自分に言い聞かせた。

今日、長妻に2gを出せば、明日にでも「目隠し」でオーナーからネタを仕入れることができる。


なに、いつものように玄関先でさっと済ませて帰ればいい。


前原はメルセデスの速度を上げ、長妻の住んでるアパートへと向かった。




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