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神花の契り  作者: 廃人仙女
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反乱の終結

 永池は穎水の目の前に立った。すると、穎水はただ鼻で笑っただけだった。

「ははっ。まさか、こんなことになるとはな。思ってもみなかったよ。まさか、散華がわたしが所有するあれだけの軍を倒すだけの力を持っていたとはな。ただでさえ霊力が低くて、今にも死にそうな様子だったのに。まさか、あの空咳は偽りだったのか……?」

「そうではないと思いますよ。散華殿は確かに体調が悪そうでしたし。それに、叔父上がいない場所でもよく空咳をしていましたしね」

「ということは、あいつがわたしの兵と戦う前にここへ来たのが、結果的に、お前たちにとって功を奏したと言うことか」

 穎水が絶望したかのように笑いながら、少しずつではあるが、血を吐き出していた。

「散華殿が事前にここへ来ていた、と言うのは事実なのですか?」

「そうだ。ちょうど、わたしが辺境へ向かってる間に水蓮園へ来ていたらしい。おそらく、ここに咲いている蓮の花を自らの体内に取り込んだか、蓮の実を食べたんだろうな。だが、あいつの霊力を考えると、後者が妥当だろうが」

 自らの霊力を高めるために、霊力を宿す植物を体内の霊脈内に取り込むことはよく見られる。そして、その植物から採れる実や水分を摂取することもまた、霊力を高める方法であることに間違いはない。とはいえ、水蓮園の蓮にもそれに類似する効果がある、というのを永池は聞いたことがなかった。

「ここの蓮の実を食べると、本当に見違えるほど霊力が強くなるのですか?」

「うん。なるよ。わたしもよく食べていたから。この戦いの直前にも食べたくらいだし。だが、今の蓮の実を食べてはだ」

「なぜです?」

「今は、この蓮池には、邪術をかけられた兵士たちが沈んでいるからな。散華が沈めていただろう? ったく、余計なことをして。あいつが兵士たちを沈めて、それを蓮が纏わせていた霊力で、奴らの邪気を中和させようとしたんだ。しかも、その企みは見事に成功してしまった。だから、今この池に咲く蓮には、もう霊力がなくなってしまっている」

 その時、穎水が急に空咳をし始めた。しかも、それはあっという間にひどくなっていく。どうやら、彼にも死期が迫ってきているらしい。

 と、永池が思い始めたところで、穎水の空咳が急に止まった。かと思うと、彼の体が力なく兵士たちの山の中に沈んでいった。

 永池はようやく落ち着きを取り戻した水蓮園を見渡すと、そこにはもう美景のかけらすらも残ってはいなかった。


 穎水の反乱が失敗に終わってからひと月が経った頃、天界もようやく以前の様子を取り戻しつつあった。反乱の後処理が終わり、秩序を失いかけていた環境にも朗らかな活気が取り戻されていた。

 そんな中、永池だけはまるで楽しみを失ったかのように鬱々とした様子で東桜殿に閉じこもっていた。

 閉じこもっている間、永池はただひたすらに書物を読み漁っていた。そのうち、東桜殿に置いていた書物を全て読み終えたので、天宮内を散策してみる。何気なく散策していたはずなのに、永池には天宮内の何も変わらない光景から、自らの幼少期を思い出していた。

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