ついに起こされた反乱
神花が全て枯れ、渓月が神花楼を出た、という知らせは瞬く間に天界に伝わった。この知らせは天界にいるすべての神官に衝撃を与えたが、その中でも特に驚いたのは穎水だった。
彼は、もともと渓月が面倒を見ていたはずの神花がすべて花を咲かせた時、且つその花たちが戦いを始めるまでの間にことを起こそうと考えていた。なぜなら、その時が一番彼の霊力が高まるからだ。それなのに、それが肝心なところで全てなくなってしまうとは。
彼はひとしきり水蓮園書斎の壁を殴って、心を落ち着かせる。それから覚悟を決めて、永聡が在位していた時から、密かに養成してきた私兵たちを呼び集めた。
穎水が自ら反乱を起こした、と言う知らせが永池の耳にも届いたのは、東桜殿に戻ってすぐの事だった。
「天君! 天君! 穎水殿が反乱を起こし、水蓮園とその一帯、それから事前に彼の手下が反乱を起こした土地を全て掌握しました! 今、穎水殿は、水蓮園と辺境をつなぐ地域に攻め込んでいます!」
と、なぜか乱れ切っている服を必死に抑えながら、永池の世話をしている神官が走ってきた。彼の許可を得るまでもなく扉を開けられたが、とりあえずそのことを気にしないことにして話を聞いてみる。
「では、そこの戦況はどんな状態だ?」
「かなり不利な状況です。既に、穎水殿がほとんどを手に入れたとか。ただ、あとどれほどで掌握するかは分かりませんが」
「そうか。わかった。ちなみに、既に戦地へ向かっている神官はいるのか?」
「それが……先ほど耳に挟んだところによると、散華殿が一人で向かわれたそうなのです」
「師匠が!?」
突然現れた散華の名に渓月がを隠さずに言う。すると、報告に来たばかりの神官は急におびえ始めながら、服を整え始めた。
「は……はい。しかも、散華殿は既に現場へ到着しているそうです」
「今に倒れてもおかしくない状態だと言うのに、戦地へ行ってどうするつもりだと言うのですか! 師匠は一体何のために……」
「帝神殿。そ、それをわたくしに言われましても……。わたくしはただ知らせを受けて報告しただけですので……」
しかし、散華が戦地へ赴いたせいで、不機嫌の絶頂に達している渓月には、神官にも怒りをぶつけるのを止められなかった。
「ぶつぶつと一体何を言っているの! もう報告がないなら、さっさと出て行きなさい! 東桜殿で乱れた服を整えるなんて、言語道断です」
その言葉で、神官は一瞬にして服を整える手を止める。だが、残念ながら服はまだ乱れたたままだ。そのままの格好で神官が外へ出て行こうとした時、永池がそれを止めた。
「ちょっと待ちなさい。服はここで整えてから行くといい。じゃないと、顔に泥を塗ることになるのは、わたしだから」
神官は口では「はい」と小声で言いながら、その両眼は渓月を見上げている。しかし、彼女は神官に一切目を合わせようとしない。
そのぎこちない状況に永池は全く気づいていない様子で続けた。
「ところで一つ聞いてもいいかな……? 君はどうしてそんなに服を乱れさせているんだい?」
「恥ずかしながら、わたくしが穎水殿の知らせを受けたのがちょうど着替えている時でして。知らせを聞いたばかりの時は、ただ一心に天君へこのことを知らせなければ、と言う思いでいっぱいでして、その……ちょうど服を着替えていた最中だったと言うことを忘れてしまっていたのです」
「なるほど。それはご苦労。じゃあ、早く着替えなさい。あ、そうそう。着替えてここを出て行った後で、兵士たちを東桜殿へ読んでくれないか?」




