起こされ始めた反乱
永池は大殿へと急ぎながら、報告しに来た神官から反乱の詳細を聞いていた。
反乱が起き始めたのは昨夜のことだ。その頭領となっているのは、穎水の腹心とも言われている神官だった。反乱が起き始めてから一刻も経たないうちに妖族との境を接する地域はすでに彼らの手中に落ちたらしい。しかも、勢いに乗るその勢力は衰えることなく、天宮の強い支配下にある地域まで手をつけ始めている状態だ。
「その反乱の頭領が従える集団は一つだけなのか?」
「いえ。頭領となっている者は五人おりまして、彼らはそれぞれ一つの集団を従えています。ですから、現在は五つの反乱軍が天宮周辺の地域を取り囲んでいる状態となりますね」
「じゃあ、天宮の軍は? 動いていないのか?」
「反乱軍の攻撃された場所に駐在している軍に関しては、必死に対抗を試みているところです。しかし、それがどれほど持ち堪えられるかはわたくしもはっきりと申し上げることはできかねますが」
神官がそこまで言い、永池がちょうど絶句し始めたところで、ようやく大殿に到着した。朝議に参加する予定も神官はすでに全員揃っていて、しかも驚くべきことに、穎水までもがそこにいた。
永池が大殿の中に入ると、きれいに整列していた神官たちが一斉にその場に跪いて永池を迎え入れる。ただ、一番奥に見える散華だけは特別で、体調が悪いという理由で立ったままではいるが。
永池はいつになく急ぎ足で歩き、あっという間に玉座に腰掛ける。それからすぐに、神官たちを立ち上がらせ、早速本題に入った。
「ある報告によると、辺境で反乱が複数起きているそうだが、皆は把握しているだろうか」
「はい。わたくしも、昨夜報告を受けました」
一番に答えたのは、紫色のような顔色をした散華だった。それを見てしまうと、永池もついいたたまれなくなってしまって、近くにいた世話係の神官に命じて椅子を彼女のところまで運ばせた。彼女は咳をしながら謝意を述べて、遠慮がちきその椅子に座り、続きを話し始めた。
「聞いたところによると、まず第一の反乱が妖族との境で起きたそうです。奴らは......ごっほん! 妖族との境の地を順調に手に入れました。すると、それに呼応するかのように、今度は別の集団が境の地を同じように奪っていきました。それが四回続き、計五つの集団が、辺境の地を奪い取った結果、天宮の強い支配下にある地域は反乱軍に取り囲まれて......ごほごほ、しまったということです。ですが、奇妙な点が一つございます。げほげほごほごっほん。報告によると、反乱軍の頭領が全て穎水殿の腹心だということですが、穎水殿はこたびの反乱をご存知か?」
「ははっ。前帝神殿は随分と面白い方だ。わたしの腹心の行動を知っていたかどうかを直接聞くとは。ははは。うん。だが、まあ、聞かれたからには教えて進ぜよう。いかにも、わたしは彼らの行動を知っていた」
「それは、あなたが......げっほん! 指示したことですか?」
「いかにも。ところで、質問を続ける前に神花湖の水か桃源郷の桃でも召し上がっては? そんなに咳をされては、聞いている方が心苦しくなってしまう」
「そんなお気遣いは結構。ごほっ。では、最後に一つ。あなたの腹心が行動を起こした、ということはつまり、あなたが長年準備していた謀反が始まった、ということですか!」




