紅心花の候補者
沙煙は宝座に座り、少しの間だけ夜空を眺めると、再び永池に向き直って聞いた。
「ところで、天君の占いたい方は誰なのですか?」
「少なくともわたしのことだ。その、わたしの本物の紅心花がどこにいるのかを探して欲しい」
永池の要望を聞くと、沙煙はいつになく真剣な面持ちをして、再び夜空を見上げる。そこには一体何があるのかさっぱりわからないが、永池は辛抱して彼を待った。
それから一体どれくらいの時が経ったのか。永池のぼんやりとした頭の奥からは、しきりに彼を呼ぶ声だけが聞こえてきた。急速に頭を起こし、いつの間にか閉じてしまっていたまぶたを開ける。すると、視線の先には、疲労を帯びた沙煙が立っていた。
「天君。ようやく起きましたね。それとも、わたくしがずいぶんと長いこと天君を待たせてしまったのでしょうか?」
と、やけに遠慮がちに沙煙が尋ねる。今の様子では、ただの一言でも、彼を責めるような言葉を使ってしまっては、自害にでも追い込んでしまいそうだった。
「いやいやいや! そんな事はないんだ。ただ、わたしが勝手に眠たくなっていただけ。わたしがどれくらい待ったとしても、司命が占いの結果を出すことの方が大切だから」
「すみませんね。わたくしがまだ修行不足なせいで、一人の命運を見るだけでこんなに長くかかってしまいました。やはり、これからはさらなる修行に励むことにしますね。ところで、天君がおっしゃっていた件ですが、結果が出ましたよ。……少し休んでから聞きますか? それとも今すぐ聞かれます?」
沙煙は気を遣って聞いてくれたのかもしれないが、永池からすると、彼の言った「結果が出た」という言葉だけで、既に目が冴えてしまっていたので、ちっとも再び休む気にはなれなかった。永池は彼に結果を話すように促すと、彼は小さくうなずいてから言った。
「占いの結果、天君と命運を共にする予定の紅心花はどうやらまだ紅心花の修行を終えていないようです。しかし、その者は既に世の中に姿を現しており、しかも強力な霊力を持っているとか。ですからもしかすると、その者は何らかの手違いで紅心花の修行ではなく、別の修行をしてしまったのでしょう。でも、今回はその者がどこにいるのか、と言うご要望でしたので、その理由までは探ってはおりませんが。話を戻しますね。その、別の修行をしたと見られる紅心花の姿は、神花域に近づけば近づくほど強くなります。ですから、天君の紅心花は、普段神花域に住まう者と言う結果になりますね」
「……ということは、やはり帝神がわたしの紅心花ということか……?」
「さぁ。そこまでは分かりませんが、その可能性は極めて高いといえますね。さらに時間はかかるかもしれませんが、帝神の命運も占ってみられますか?」
そうした方が永池にとって一番欲しい情報が手に入る事は間違いがないのだろう。しかし、占い相手は自分を導いてくれた師匠だ。そんな人のことを、勝手に隅々まで見てしまってもいいものだろうか。散々葛藤した結果、永池は返答した。
「うん。占って欲しい」




