真の紅心花の行方を探して
瑠璃が出て行ったのと同時に、散華もまた屏風の後ろから出てくる。霊力が低いためか、かなり簡単に気配を消すことができるようだ。
「天君、あの紅心花もまた随分と奇妙な者ですね」
と言いながら、永池の前に腰掛ける。だが、永池にはその言葉の真意が全くもってわからなかった。
「散華殿。それは一体どういう意味なのですか?」
永池が何気なく聞くと、散華は言葉を探しているのか、首を捻りながらゆっくりと話し始めた。
「本来、天帝と命運を同じくする紅心花が天帝の前に現れたら、その紅心花の瞳には桃色の光が宿るはずなのですが、彼女にはそれがありませんでした。もしかすると、あの者は天君と命を共にする紅心花では無いのかもしれません」
「じゃあ、それはどうやって確かめたら良いのでしょうか……?」
「司命を頼ってみてはいかがですか。星運閣なら、誰であろうと、その命運を全て見ることができますから」
散華の助言通り、永池はその日のうちに星運閣を訪ねることにした。星運閣に訪れるのは帝神任命式以来だ。星運閣に入ると、儀式の時に使われる際には、なぜか新旧の司命が並んで座っていた。
彼らは永池が入ってくるのを見ると、慌てて立ち上がるが、礼をするのには寸でのところで間に合わなかった。
「ててててて天君。どうされたのです、急に」
先代の司命は歳のせいなのか、顎ががくがくと揺れているおかげで、発されたすべての言葉までも震えている。
「いや、少し気になることがあっただけなんだ。その、司命殿に、わたしの命運を見てもらいたいと思ってね。それで、ここに来たんだ。司命は、普段四六時中、ここにいるって聞いたから」
と、永池が言うと、反応を示したのは今度こそ沙煙の方だった。
「かしこまりました。天君の命運を見るのは構わないのですが、そのためには、この場所から離れなければなりません。星運閣はあくまでも儀式を行う場所で、命運を占う場所ではありませんから」
「ということは、命運を占うためには別の場所へ行かなければならないのか?」
「はい。星運閣の北側に観星堂というのがございます。命運占いはそちらでおこないます。……あの、占うにあたってなのですが、わたくしでは不安でしたら、師匠が占いましょうか……?」
「おいおい、沙煙。君は、一体何を言っているんだ。このわたしがお前は既に司命にふさわしいと思って、司命の位を君に譲ったんだ。何を今更そんなことを言うんだ。自信を持ちなさい、自信を!」
それから少しの間、沙煙らは微笑ましいような言いや争いを繰り広げた結果、沙煙が永池の命運を占うことになった。
星運閣から北に少し歩くと、楼のような建物が現れる。その扁額にはしっかりと、観星堂と書かれていた。中に入ると、中央の宝座を龍の彫刻が、施された、柱四本に囲んでいるだけだった。
その宝座に沙煙が座ると、ただ黙って目を閉じながら上を見た。それに続くようにして永池も天井を見上げる。すると、観星堂は中央が吹き抜けになっていて、あろうことか。そこは、屋根がなかったのだ。




