散華の疑惑
二日後、沙煙はその師に代わり、司命に就任した。それと同じ日の夕方に、散華が東桜殿に参宮した。
「てんく……ん。ごほっごほっ。失礼いたしました。聞くところによると、ごほっ、渓月に聞きたいことがあるそうですね。ただあいにく、ごほっごほっ、渓月は今新しく芽生えた神花の様子を見ているところなので、わたくしが代わりに参りました。一応、渓月のことであれば、ごほぉっ、師として普通の者よりは理解しているはずです」
永池は、散華の渓月に対する理解度に関しては、微塵も心配していなかったものの、彼女の異常なまでの咳き込みぶりについては、つい心配してしまう。彼は、昨日人に採りに行かせたばかりの桃源郷の桃を一つ、散華に渡した。彼女はありがたそうにそれを受け取り、黙々とそれを食べ始める。すると、それだけで彼女の咳が止まった。
「わざわざすみません。帝神は息災にしていますか?」
「ええ。もちろん。まあ、最近はあの子の弟子となる。神花が芽生えたおかげで、その面倒を見るのに忙しそうにしていますが。ところで、言った彼女に何の用があるのですか?」
永池は数日前に天宮内の庭園で穎水に告げられたこと、それに関して緒明にも言われたことを簡潔に散華へ伝える。すると、彼女は桃を食べていた手を止めて、なぜか扉へと目を向けた。
「散華殿?」
「ん? ああ、失礼いたしました。しばらくの間忘れていたことだったので、渓月は確かに、普通の神花とは異なります」
と言ってから、散華は桃を食べ続けながら話し始めた。
渓月は、帝花種が植えられてからに関しては、特に何の異常もありませんでした。異常があったのは、彼女が花開く前のことです。
帝花種は、先代の天帝と帝神が逝去したときに、神花湖に浮かんでいる蓮の弁に出現します。渓月の時もそうでした。その後、厳選された五粒の帝花種には神花の霊力の源が注ぎ込まれ、残りの種には紅心花の力の源が注ぎ込まれます。これは、我々神花のしきたりとされているもので、渓月が今見続けている神花もまた神の霊力の源が注ぎ込まれました。
たさ、渓月の時は、帝花種が神花湖の蓮弁ではなく、穎水の居住場所である水蓮園の蓮池に浮かぶ蓮の弁に現れたのです。しかも、その当時師となるはずのわたくしの霊力が劇的に低かったのもあり、当時現れた種には、穎水がそれぞれ霊力の源を注ぐことになったのです。穎水の霊力の源が、たまたま我々神花と同じところを源にする、と言うこともあったので。ですが、その際に何か間違いがあったのではないか、とわたくしは疑っているのです。なんとなくですが、渓月に紅心花の力が漂っているような気がして。




