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神花の契り  作者: 廃人仙女
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蒔かれた帝花種

 翌日辰の刻。渓月は霊力を使って強力な保護陣を神花湖に張ってから、帝花種五粒を全て神花湖に蒔いた。蒔いてから少しすると、それまで水面にぷかぷかといていた帝花種はすべて水中に着地した。すべての種が水中に着地すれば、水中で霊力を溜め込み発芽する準備を始められる。

 すべての種が無事に水中に着地した後、ようやく渓月は一息ついた。

「渓月?」

 湖の傍で座って体を癒そうとした時、二階から散華が空色の服を舞い上がらせながら降りてきた。

「おや。ついに帝花種を蒔いたのですね。いつかは無事に咲きそうですか?」

 渓月は慌てて立ち上がり、壁際にある椅子まで、不安定な歩みを見せている散華を支えた。散華は座ってから、相変わらず神花湖から汲んだ水を飲み続けている。

「ええ。すべての種が無事に水中に着地しました。三日もすれば無事に発芽するでしょう。ところで、本日植えた神花が水面に出てくるまでの間は保護陣が機能するので、湖の水を使うことはできませんが、問題はありませんか?」

「ええ。水は既に多めに汲んでいるので大丈夫です。ですが、それすらもなくなってしまったら、桃源郷の桃でも食べましょうかね。その時は、わたくしの代わりに採ってきてください」

「もちろん」

 不意に訪れた沈黙の中で、渓月はただじいっと、特に何の変化もない神花湖を見つめていた。扉の外からは鳥が大きく鳴く声が聞こえてくる。一体何の鳥なのかしら、と渓月が首をかしげたところで、散華が口を開いた。

「渓月は本日からしばらく天宮へは行かないのでしょう? また引き続きここで禁書を読むのですか?」

「そうですね。禁書を読むつもりではいます。後は、瞑想もしておかないと。いざと言う時に、わたくしの霊力が発揮できなかったら困るでしょうから」

「なるほど。確かに最近は渓月が瞑想をしているところをあまり見かけないような気がします。でも、あまりに瞑想をしていないと、霊力をうまく使えなくなりますが、対してしすぎると、主へ届く霊力の量に乱れが生じるので、気をつけないといけないんですよね」

 散華は嘆きながら、また神花湖の水を飲んだ。

「そういえば、先日穎水にお会いしました」

「どこで?」

「桃源郷です。わたくしに引きを持ち出す他は特に何かをするわけでもなく、ただ話をしながら扇子を作っておられました」

「扇子?」

 散華が不思議そうに顔を歪める。それを見てから、渓月は「これです」と言いながら、袖の中に入っている竹の模様が描かれた扇子を取り出した。

「これの、竹が描かれているところに、桃の花を描いたものです」

「ほう。穎水が扇子を作るなんて意外でした。案外風流なのですね」

「え、師匠はご存じないのですか? 穎水はよく扇子を作られているんですよ。前にこの神花楼に来た時も、調度品を壊すだけ壊して扇子を作っていたじゃないですか。この扇子はその時に作られたもんだというのを、もう忘れたんですか?」

「ああ。そういえば、そんなこともありましたね。確か、渓月が彼の作り話に付き合わなかったせいで壊した調度品を見て、扇子にぴったりだから、とか何とか言ってさらに細かく切ってましたよね。あの調度品は霊力を使って組み立てているわけじゃないのに」

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