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神花の契り  作者: 廃人仙女
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破門、桃源郷にて

 永池が渓月の右腕を握りながら、彼女の顔を覗き込む。彼女は永池の緩みきっている顔を見ながら、左手で霊力を宿していった。

「あなたを破門するためですよ」

 と、言うや否や、渓月は左手を永池の顔の前で一振りする。

 見事、一瞬にして永池が気絶したところで、渓月は立ったまま行った。

「あなたは天界の後継者で、わたくしの主君となるべきお方。それ以外の関係になることなど許されていない決まりです。ですが、あなたが起きている間に破門の宣言をしてしまったら、きっと拒否されてしまうでしょう。ですから、気絶させてしまいました。でも、安心してください。一刻もすればあなたは目覚めます。その時が来たら、あなたはわたくしの主君、わたくしはあなたの神花となります」

 渓月は桃源郷を見回しながら、涙を一筋だけ流して言う。

「でも、その前に、あなたと思い出のある場所に来たかった」

 彼女は右手に霊力を宿しながら、永池のそばに小さくなる。それから、右手を彼の額に当てた。すると、たちまちこれまでただの一度も浮かんでこなかったはずの師弟の証である蓮の花の形をした光が、額の中央に浮かび上がった。

「永池。目を覚ましたら、ちゃんと戻るのですよ。わたくしは一旦天宮へ向かわなくてはならない」

 蓮の光が渓月の霊力に触れてから少しすると、その光は瞬く間に消えていった。それを見た刹那、渓月は永池を桃源郷に放置したまま、天宮へと向かった。


 永池が目を覚ました時、桃源郷には人影が一切なかった。

「師匠......?」

 つぶやきながら、ぎりぎりと痛む背中をさすりながら、ゆっくりと立ち上がる。すぐに視線の先にあった桃の木に、竹色の短冊の形をした紙が一枚吊るされているのが見えた。

『先に神花楼に戻っていなさい。わたくしの帰りを待つこと』

 渓月の従い、永池はまっすぐ神花楼に戻る。そこにはやはり、誰もいない。もう日も沈みかけていると言うのに、散華も渓月も帰ってくる気配が一切なかった。

 することもないので、彼はとりあえず神花湖の隣で瞑想をし始める。

 渓月との修行が正式に始まってからひと月が経った頃、永池はようやく自分の霊力が体内で動いているのを感じ取れるようになった。それでもその霊力では、自分の命を守ることなど、到底できないほどわずかなものではあったが。

 しかし、それから彼の霊力が成長するまでは大して時間がかからなかった。十日で自らの怪我を治せるようになり、二十日で攻撃から身を守れるようになったのだ。

 半刻ほど瞑想したところで、ようやく外から人の足音が聞こえてきた。それからまもなく、神花楼の扉が開き、渓月や散華と共に、紫紺の鎧を見にまとった背が高く、体格の良い男たちが一斉に入ってきた。

「し、師匠......?」

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