第一話 アヴィオール魔法学校
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「魔法使いの諸君、アヴィオール魔法学園入学おめでとう。君たちはこれからこの学園で多くのことを学び、多くのことを経験する。そして、卒業するころには偉大な魔法使いになって世にでることになる」
300人のアヴィオール魔法学園の入学生の前で、熱心な演説をしているのは学園長だ。
そして、俺もその入学生のうちの1人。
あ、でも、さっきの学園長の話は299人に向けた演説だったのかもしれないな。
だって、『魔法使いの諸君』って言ってたし。
俺、魔法使いじゃないし。
「ハイレベルな入学試験を突破した君らならこの学園の生活も楽しめるはずだ。
是非、頭と、魔法を使って、良き学園生活を」
不敵な笑みを浮かべて、去っていった。
「すごい迫力だったな」
「かっこよかったなぁ」
「『頭と、魔法を』ってわたし頭悪いのにどーしよー」
他の新入生たちは学園長の演説を聞いて学園生活に期待を抱いているようなつぶやきが聞こえてきた。
もちろん俺も学園生活を楽しみにしているさ。
メインではないがな。
「なあなあ、お前何クラスだった?」
演説中に隣の席に座っていた男子生徒に話しかけられた。
この学園には五つのクラスがある。
上からS,A,B,C,Dと分けられ、入学試験の成績によって振り分けられる。貴族や王族だったりすると忖度されたり、なんてことはないようになっている。
「Dだったよ」
「Dか、あんま魔法が得意じゃないんだな、まあ頑張れよ。俺はBだったぜ、じゃあな!」
マウントを取りたかっただけだったのか、
自慢してすぐにどこかへ行った。なんだったのだろう。
俺がDクラスに配属された理由は明快。
魔法が使えないからだ。
そう、俺はいわゆる劣等生。
いや、それを名乗ることも許されないかも知れない。
この国はほとんどの人が魔法を使うことができる。だが稀に、全く魔法の使えない人がいる。
それが俺だ。
魔法の使えぬ人間など人間では無い、これがこの国での常識だ。
魔法が使えない人間は生まれつき人権が保障されない。奴隷としようが、殺そうが、新たな魔法の実験台にしようと勝手だ。
俺は生まれた時から“忌み子”だった。
高貴な貴族、ベルベット家に生まれた俺は一族最大の汚点となった。
親も、召使も、兄弟も誰一人として俺を人間として見てはくれなかった。俺はいつも疎まれてきた。
だから、変えてやる。
この世界の仕組みを。俺自身の力で。
「D組の皆さん、こんにちは。私がこのクラスの担任、クリスです。よろしく」
教室についた俺たちは担任の自己紹介を受ける。
「貴方達はこの、アヴィオール学園の最下層、D組に属しています。世間一般からすれば、この由緒ある名門校、アヴィオール学園に入学した時点で凄いことですが、貴方達はそのことにあぐらをかいてはなりません。
貴方達はもっと貪欲に知識を吸収し、もっと強くならなければならないのです。そのことが、貴方達生徒の“義務”なのです」
うざい教師だ。俺は直感で理解する。
「二カ月に一度進級テストがあります。そのテストで成績トップだったものは、一つ上のクラスに上がることができます。心してかかるように。
そして、Sクラスで成績がトップのものは、この国の魔法競技大会への出場権を手に入れることができます」
おぉ、とクラスがざわめき立つ。魔法競技大会は多くの学生にとっての夢であり、憧れである。
勿論、魔法の使えない俺だって憧れていた。そして、魔法競技大会で優勝すると……
「統一魔法連盟の入会試験を受けられる」
思わず、俺の口から言葉がこぼれる。統一魔法連盟ーこの国での最高機関であり、全ての権力を握る連盟。
俺は絶対にそこに入る。そして……
「この国の体制を変えてやる」
それが俺、ルーク・ベルベットいや、ベルベットはもういらないな。
それが俺、ルークがここに入学した理由だ。