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第一章 第二話 『悪役令嬢と妹好きな兄者の復興途上』(幕間2/3)

今回は黒シャツ隊視点のお話になります。アデルやパンドラ・ボックスとは対立する立場ですが魅力的なキャラが多数登場しますのでご期待ください!それでは、いい読書を!

『哲学的そして教義的観点から、私は永遠の平和などというものは信じない』

〘"共に死んだもの"ベニート・ムッソリーニ〙


ニテリオロパ-ラヴォア大陸間横断鉄道 線路脇

イタリャーナ十字架連合政権 黒シャツ隊 スコルツェニーFi156作戦遂行部隊 第7特務混成装甲大隊(大隊 コホルス) 歩兵戦闘車 VCCー80 ダルド車内


「被害甚大ぃ!?どうなってるんだ!国連特殊部隊は4人だろ。民間会社の社員など敵にもならんはずだろがぁ!!」

「あらぁ、そんなに怒り狂っていると禿げ上がりますわよ?マッシミリアーノ・サルトゥ・ペレグリネッティ老兵(少佐)?」


俺の前で優雅に紅茶を飲む軍服を着崩しまくった部下…もとい、カーティア・カルミナティが茶化してくる。こいつ状況分かってんのか?


「俺は禿げてるんじゃない!剃っているんだ!」

「うふふ。そうかもしれないわね」


カーティアはティーカップを机の上に置くと、黒のニーハイソックスで覆われたおみ足を艶めかしく組み直す。改めて彼女の格好を頭から見直す。鮮やかなブロンドの髪は首すじにかかるくらいのポニーテールでまとめられうなじがちらちらと見える。その髪の上には黒シャツ隊で支給される黒い帽子が少し斜めにちょこんとのっている。そして、上は都市迷彩の軍服を大胆にも胸元でボタンを止め、あろうことか軍服をオフショルにするという暴挙にうってでたのだ。そして、大きめのサイズの軍服をどうやってかは知らないが支給してもらい、ちょうどミニスカートくらいの丈になるようにワンピースとして使っている!そして、そこから伸びるおみ足!ニーハイソックスによって強調された絶対領域の太もも!うーむ。短パンを履いているのか!いないのか!どっちなんだい!履いてー……ふと、目線をあげると、カーティア・カルミナティ百人隊長殿(大尉)と目が合う。にこやかにこちらを見つめ返してらっしゃる。


「どうかなさいましたかぁ?変態老兵(少佐)さん?」

「カーティア様のおみ足を次の作戦に役立てないだろうかと…」

「ふぅん。さっさと作戦指揮してくださる?」

「あ…はい」


ふむ。少し取り乱してしまったようだ。コーヒーを口に含む。


「ペレグリネッティ老兵(少佐)。隣の軍用トラックからカルーゾ上級中隊長(中尉)が呼びかけております。上で話したいそうです」

「分かった」


呼びかけてきたVCCー80 ダルド の女性車長の服装を上から下までじっくり眺めてみる。一般的な黒シャツ隊の軍服。殆ど着崩すことなくちょっと首元を開いているくらいだ。ちらっと30代くらいの男性砲手の方を見る。まさかの上裸だった。隊の風紀はどうなってるんだ!風紀は!


「ペレグリネッティ老兵(少佐)?」

「あぁ、大丈夫だ」


怪訝そうな女性車長の視線から逃げるようにハッチを開けて外に乗り出す。ダルドの右側に軍用トラックが走っており、幌の上に真紅のシースルーのドレスを華やかに身にまといベレッタAR70/90を手でくるくる回している女性とAR70/90を構えている特殊分隊の兵士、カルカノM1938を構えた狙撃兵がいた。他2人の服装がまともなだけに戦場にドレスを着てくる彼女の奇行が目立つ。


「ペレグリネッティ老兵(少佐)。そろそろ総攻撃を仕掛けない?」


この戦場にそぐわないドレスの女性はトリトル=サブリナ・ロウン・カルーゾ。ホモ=エルヴッシュ族の女性兵士だ。どれどれ、ドレスのデザインは…緑色の髪にワンポイントとしてデイジーをモチーフとしたカチューシャをつけている。髪はお団子でまとめられており、ホモ=エルヴッシュ族の特徴である長くとんがった耳が強調されている。首元には美しい刺繍が施された赤いレースのチョーカー。細い肩紐に繋がれたオフショルのシースルーのドレスと淡い青色がかった白色のランジェリー。機能性を兼ね備えていながら美しさを損なわないデザインだ。ドレスの殆どの部分の素材は真紅のオーガンザでありランジェリーが大胆にも透けて見えていた。全体的に刺繍で覆われているため、大胆でありながら決して下品さを感じさせない。腕にはオーガンザの肘上まである長手袋がはめられている。それによってある種のエレガントさが演出される。ドレスのスカート部分は前部分が短く、後ろ部分が長い、ハイローヘムラインと言われる構造をしていた。前部分はオーガンザでありシースルーになっている。後ろ部分は真紅の表面に裏地に群青色を採用しており対照的な色合いでありながら鮮やかさを引き立てている。…ペレグリネッティです。明らかに隊の風紀を乱している奴がいるのにいいデザインすぎて注意できません。俺が変態なのでしょうか。…ペレグリネッティです…ペレグリネッティです…ペレグリ…


「老兵(少佐)~?大丈夫?何か悩み事があるならお姉さんに相談してね?」

「見た目20代の女性に50手前のおっさんが言われることじゃないんだよ。それ」

「おぉ~。240歳も若く見てくれるんだ?」

「そりゃ、長命種族なんだからそうだろ!」

「んー…あ、そうだ。老兵(少佐)。第22特殊分隊が壊滅したようだよ」

「それを早く言え!何に殺られたんだ!」

「対物ライフルに銃剣つけた変な奴だね。どする?総攻撃かける?」

「…そろそろ、リギンボグエンからSNNか、騎士団が来るだろう。それを迎撃してからじゃなきゃまずい」

「なるほど。じゃあ、お姉さんは迎撃準備を整えるから何かあったら呼んでね?」


そんな話をしてると左側からL3が近づいてきた。上には数人のカルカノを持った歩兵と深緑のバンドゥブラにデニムのホットパンツという出で立ちでイタリャーナ軍支給のトレンチコートを羽織っている。彼女はメーガン・ディ・ルケッタ 中隊長(少尉)。彼女の顔をじっと見る。黒いショートヘアーにインナーカラーでくすんだ青色が混じっているかっこいい髪色をしている。その少し下に目線を向けると…何故か、目隠しをしている。これには聞いちゃいけない理由があるかもしれないので聞かないが…彼女はスナイパーでとんでもない命中率を誇っているのは確かだ。一番の謎は彼女が持っているカルカノM1938にはスコープがついている。先程の2人に比べたらまともな服装だろう。よくよく考えてみたらとんでもない服装なのにまともだと思ったのなんでだろう~♪なんでだろう~♪ななななんでだろ…


「ペレグリネッティ老兵(少佐)。2キロ正面に敵戦車及び騎兵部隊です。おそらく、秋津洲軍とホファンブルク騎士団の混成部隊です。秋津洲の戦車は10輌ほど、騎士団は100騎ほどです」

「よく見えたね?」

「それは…遠いというお話ですか?それとも、この目隠しの事でしょうか?」

「それは…どっちもと言うか…目隠しの問題にどっちも内包していないか?」

「今までの指揮官は私の目隠しについて話す事はありませんでした」

「そう…なんだ…聞いちゃいけなかったか?」

「ペレグリネッティ老兵(少佐)は私に興味がおありですか?」

「まぁ…部下だしな」

「メーガンは嬉しいです」

「嬉しいんだ…」

「しかし、教えられません。解答をするとしたら第六感と説明します」

「教えられないんだ…」


そんな他愛もない会話をしていると、物珍しそうな表情でサブリナがこちらを見ている。なんだ、俺は見世物じゃないぞ?俺は見る側だ。


「どうした?サブリナ」

「いやぁ、メーガンが私たち以外にこんなに喋ってるの初めて見たよ。懐かれてる」

「懐かれてるんだ」


感情の起伏は表情が動かないからよく分からないけど懐いているのなら可愛く見える。頭を撫でてみる。


「メーガンは22歳です。子供扱いしないでください」

「こうは言っていますが喜んでます」

「喜んでいるんだ…」


メーガンは怒っているのか、サブリナの方をじっと見ている。こんなことをしている場合じゃないな。指揮をしなければ。


「サブリナ、君は第2自動車化歩兵百人隊で突入していない第8、第9、第12、第14自動車化歩兵分隊の指揮権を預ける。迎撃態勢を整えてくれ」

「はーい」

「メーガン、残った狙撃兵たちで騎兵を狙えるか?」

「メーガンなら戦車の操縦者すら撃ち抜けます」

「そうか!がんばれよ」

「はい」


とりあえず、サブリナとメーガンに迎撃態勢を整えてもらい、俺は一旦、車内に戻ることにした。が、戻ってみると、さっきまで車内の端で体育座りをしていた女性がこちらを泣き腫らした目で睨んでいる。


「えーと、どうしたのかな?スザンナ」


私は最後のカヴァッロ・ゾーネに属する部下の名前を呼ぶ。カヴァッロ・ゾーネというのは今まで会話していたカーティア、サブリナ、メーガン、そして、スザンナが所属する黒シャツ隊の特殊部隊だ。全世界各地のイタリャーナが抱える戦争において特殊作戦を遂行している。そして、この作戦にも上層部はカヴァッロ・ゾーネを派遣してきた。それが、彼女たち4人だ。


「…なんでそんなに楽しそうなんですかぁ」

「楽しそう?」


とりあえず、銃弾の準備をしているカーティアの方を見る。俺の視線に気づいてこちらを見て微笑む。いや、何があったか聞きたいんだが。


「スザンナはねぇ、マッシミリアーノ・サルトゥ・ペレグリネッティ老兵(少佐)さんが外で遊んでたのが気に食わないらしいの」

「あー…」


俺と会話している間に、スザンナが立ち上がる。彼女の身長は2mあるので腰を曲げて立っている。彼女の服装は黒いドレスであり、少し威圧感がある。オフショルの背中が腰の部分まで大胆に開いたドレスで腰より上あたりにリボンがあり止められている。それのお陰でセクシーさの中に可愛さが現れているのだろう。ドレスの上にボレロを羽織っており、上品さを感じさせる。更に、ボレロの袖口はふわっと広がっており華やかさがある。ドレスのスカート部分はアシンメトリースカートになっていて、左足を大きく露出させたデザインになっている。スカートの縁が灰色のシフォン生地になっており、柔らかな印象を受ける。スザンナの頭に視線を戻す。明るい茶髪をツインテールにしており、その房はゆるく巻いてあり、ふんわりと胸の辺りまで伸びている。前髪は片目を覆い隠しており、スザンナの泣き腫らした目は片方しか見えなかったが、その片目は少し戸惑いを帯びているようだ。もしかして、俺が黙っているからだろうか?でも、そんなの関係ねぇ…まだドレスを眺めていたいから。そんなのかんけぇねぇ!そんなのかんけぇねぇ!はい、オッパッ…


「どこを見ているのですか…」


彼女は包帯でぐるぐる巻きの手を俺に伸ばしベネリ M1 ショットガンの銃口を向ける。おっと、もしかしてなくても人生2度目の死の危機か?3度目は嫌だぞ?車長が拳銃をスザンナに向ける。カーティアの方を見るが、紅茶を嗜んでいるようだ。今、気づいたけど、スザンナが前かがみになっているせいで、ちょうど横乳のホクロがちらりと見えている。ふむ。いいな。


「どこを見ているのですか!!」

「ふははははははは!!」


スザンナが咄嗟に腕を胸の前に持ってきたところで笑ってしまった。カーティアが紅茶を持ったまま固まっている。こちらを見て目を丸くしていた。出会ってからそんな顔を見たことはなかった。


「ペレグリネッティ老兵(少佐)!!スザンナは前任の指揮官を撃ち殺しているのよ!気でも狂っているの!?」

「何が!何が!面白いの!?人がいっぱい死んでるの!ここでは!敵も味方も!それなのに!なんで笑えるの!」

「ははははははは!!面白いからだ!」


スザンナのショットガンを持つ手が震える。俺が今までにないタイプだったからだろうか?


「俺は平和な国に産まれたんだ。70年前の敗戦以降、戦争を絶対にしないって言う面白い国にな。俺は青年の頃、そんな国で他国の戦争に力を貸した政府が許せなくて警察相手に戦争ごっこをしたんだ。あまりにも平和な話だ。本当の戦争を知らなかったんだから。今、思えばいい国だったよ。問題は多かったが、平和だったんだ。多くの人が笑っていた。面白いギャグとかでな!」


「知らないよ!そんな何処かも知らないような国の話!!」

「はははははは。まあ、そう、焦るな」

「………」


車内が一瞬、静かになる。カーティアはこちらの目をじっと見つめていた。スザンナはまだ銃口を下ろしていない。車長もどうすればいいか迷っているようだった。


「それから、我らが頭領に拾われて俺は軍人になったんだ。この国のな。多くの国の住民が面白いギャグで笑えるような素晴らしい世界を創る為に」

「無辜の市民を殺してまで?それで笑えるの!?」

「笑えるさ。こんな地獄みたいな世界でも笑うんだよ。誰か泣いている人の分まで面白かったら笑うのさ。俺らの心を押し殺しながらじゃ素敵な世界は創れない」


スザンナが銃口を下ろす。車長はまだ警戒しているのか、まだ銃口を向けている。


「車ちょ…いや、カトリーヌ上級分隊長(曹長)。武器を下ろしてくれ」

「はっ」

「マッシミリアーノさん…私は…そんな簡単には笑えません…」

「そうか。俺が絶対に笑わしてやる。だから、生き残れよ」

「…」


スザンナはこくりと頷いてくれた。雨降って地固まるかな?これは。そろそろ、接敵する頃合いだろう。


「スザンナ!カーティア!君たちは遊撃だ。無茶はするなよ」

「…はい「了解しました」」

「カトリーヌ。俺は全体の指揮を取る。君にこのダルドの差配を任せる」

「了解」

「フランコ、ダニエーレ。戦闘準備はバッチリか?」

「もちろんだぜ!「っはい!!」」


俺はダルド備え付けのマイクを手に取る。


「「敵の戦車騎兵の混成部隊が接近中だ!!諸君らにはこれを打破してもらう!我らが頭領(ドゥーチェ)の平和を創る為に!」」


「「我らが頭領(ドゥーチェ)の平和を創る為に!!!」」


ーーーーー

ニテリオロパ-ラヴォア大陸間横断鉄道 線路脇

黒シャツ隊 前面2㎞地点 日本神聖神州皇国秋津洲連邦 日本皇国 陸軍 サンスカリア領界方面軍 第壱百五十六機甲旅団 飛田支隊 とホファンブルク王国騎士団 4番隊 合流地点


九十七式中戦車。チハ。帝国の稲妻と称されるこの戦車は他の超大国諸国の戦車と比べると弱い方だとされている。だが、対人においては悪くない選択肢だと言える。


「飛田2等陸尉。ホファンブルク騎士団が合流しました」

「そう…」


右隣のチハに乗る新納3等陸尉の報告を聞きながら双眼鏡を覗き込む。遠くに黒煙が上がる列車が見えた。それを囲むように敵の車両部隊が展開している。イタリャーナの黒シャツ隊だ。頭領(ドゥーチェ)と呼ばれるイタリャーナの指導者の私兵みたいなもの。


「敵の豆戦車は15輌、軍用トラックも10輌ほどです。そして、中央に歩兵戦闘車…VCCー80 ダルドです。まあ我々の相手にならんでしょうな」

「油断しない方がいいです…ダルドの機動性はこのような平原で真価を発揮します…」

「しかし、たった1両ではありませんか」

「ダルドの正面装甲は私の新砲塔チハでも貫けません。ダルドの機動性では側面や後部に狙いを定める事は難しいです」


「うぃーす。君が秋津洲の隊長さんすか?」


チハの間に割り込んできた騎士は会話にも割り込んできた。白馬に乗ったその男はこちらを見てヘラヘラと笑っている。正直に言って関わりたくないタイプの人間だ。


「なんだ貴様は!口の利き方がなっていないぞ!!後進国の騎士ごときが飛田2等陸尉 相手に対等に会話できると思っているのか!」

「…別に気にしてない。新納3等陸尉。少し黙っててください」

「…しかし」

「私がこの飛田支隊を指揮している日本 皇国陸軍のノミャ・バルクァナ・飛田 です」

「いいね、秋津洲人は杓子定規な人が多いから困るからね。植民地人ってのは助かるぜ」

「貴様ぁぁ!!!飛田2等陸尉を愚弄するか!」

「作戦に不必要な発言は控えていただけますか。騎士団4番隊 隊長さん、新納3等陸尉」


はっきり言って面倒くさい。騎士も新納3等陸尉も。敵は決して弱くない。こんな我々じゃ勝てはしないだろう。


「はいはい、わかりましたよっと」

「貴様ぁぁ!!グダグダ言っとらんで名乗れ!!」

「そっちから名乗ったらいいんじゃないすかぁ?」

「貴様ぁぁ!既に飛田2等陸尉は名乗っているだろう!」


面倒くさい。


「………名乗ってください」

「おけー、ホファンブルク王国 騎士団 4番隊 隊長 ハンス・クリスド。よろしくー」

「ふん、小官は新納 昭太郎3等陸尉だ」

「クリスド隊長。そちらの戦力は?」

「100騎ほど。他の隊よりかは装甲戦力に対する備えはあるぜ。十三年式村田銃が40丁に、対戦車槍が5本、RPGー2が2丁。後はランスや剣、クロスボウくらい。それと秘密兵器がある」


クリスドは秘密兵器という時に にやりと笑った。面倒くさい人だ。彼は人や彼自身の命を大切にしないタイプの指揮官だろう。


「わかった。我々はこの丘に布陣し、敵の豆戦車の射程外から砲撃しつつ、ある程度まで削れたら突貫する。4番隊はその攻撃と合わせて突貫してもらいたい」

「りょーかい」

「通信機を持っていてください」

「お、あざす」


敵はもうすぐそこまで来ている。数十秒もしたら砲撃の合図を出さなければ。初めて人を相手にして殺し合いをする。蛮族相手とは違う命の奪い合い。


「全車!停止!!砲撃用意!目標、黒シャツ隊 豆戦車!!」

「敵歩兵戦闘車!ミサイル発射!!」

「気にしてはいけません。まだ撃たないように…」

「3番車大破!騎士団にも甚大な被害が!」

「まだですっ…」

「再度、ミサイルです!!」

「今です!撃ち方はじめ!!」


体がカッと熱くなる。これが戦争ですか。震える足を抑えるようにしっかりと足を踏みしめる。


「敵豆戦車6輌撃破!軍用トラック戻って3輌破壊!」

「2号車大破!応答ありません!7号車履帯破損!前進できません!」


次々と報告が入ってくる。ここで止まったのは間違いだったかもしれない。次々とダルドのミサイルにやられている。


「全車前進っ!各車、自由に発砲してくださいっ!」

「じゃあ、俺らも行くんで…あ、そうだ。個人防御魔法札くれません?」

「…何故ですか?」

「ふざけるな!貴様ごときに陛下から賜った装備品を渡すわけがないだろ!そもそもあれは我が国のような超大国ですら殆ど支給されない高級品だ!」


いつの間にか近くに来ていた新納3等陸尉が口を挟む。別に私が持っていても意味が無いし渡すけど。


「…別に渡すのは構いません」

「まじ?あざーす。じゃ、騎士団前へ!侵略者どもを皆殺しにしろや!」


味方と敵が交差する。ハッチを閉めて戦車内に入る。視界は限られるが一応見えはしている。敵の豆戦車 L3 /33の8mm重機関銃ではチハは倒せない。しかし、こちらの57mm砲ではダルドを倒せない。思ったよりダルドは素早くこちらは一方的に撃破されている。騎兵たちも奮戦して豆戦車を2輌撃破、軍用トラックを1輌乗っ取ったようだが…それ以上に損害が出ている。豆戦車たちや敵の歩兵は騎兵狩りに専念しているようだ。


特に都市迷彩の軍服を気崩している敵の女性兵士が騎兵に襲いかかっては馬を奪ってまた襲うというのを繰り返している。優秀な敵兵だ。主砲で援護したいが、味方に当たる可能性の方が高いだろう。


「奥田 陸士長。あの馬を奪った敵兵の近くに寄れますか?佐藤 2等陸士。機銃で狙えますか?誤射はしないように留意してください」

「はっ。分かりま…ごはっ」


バシッという音と共に操縦手の奥田 陸士長が倒れる。血をだらだら流しながら浅く息をしている。


「私が操縦しますっ!」

「ね、狙われています!危険ですよ!」

「誰かが操縦しなきゃいけないのです」


奥田 陸士長を通信手の山野 2等陸士に任せ、操縦席に座る。スコープのきらめきが見えた。トレンチコートを羽織る敵の女性兵士と目があったような気がした…が、彼女の銃が吹き飛ばされる。どうやら、列車の方から援護射撃が入ったようだ。


状況は悪くなる一方だ。チハもこの車両を含めて3輌しか残っていない。騎士団も半分くらいだろう。と、少し考え事をしていたら対向するように向かってきていた敵の軍用トラックにぶつけられる。もちろん、押し負けることは無いが、それと同時に銃弾の雨を浴びせられる。赤いドレスを着てアサルトライフルを持った敵の女性兵士が的確に開口部を狙ってきていた。


「っ…うぐ…」

「飛田2等陸尉!!」

「大丈夫です。このくらいっ…」


外を見るとさっきのアサルトライフルを持っていた兵士とクリスドが戦っているようだ。拮抗していてどちらが勝つかは分からないが危険な状態ではありそうだ。


「佐藤 2等陸士!操縦お願いいたします!」

「はっ!」


ハッチを開けて顔を出して拳銃を構える。ナイフと短刀でもつれあっている。こちらの存在に気づいたのか、敵の女性兵士はサッと離れてこちらに警戒しつつ下がる。他の敵兵もこちらを撃ってきたので咄嗟に車内に引っ込まざるを得なかった。


「これはきつそうすね~」

「撤退しましょう」

「それでも、いいんすけどちょっとやりたいことがあるんで残ってもいいすか?」

「援護は必要ですか」

「いや、なんとかなるよ」


やはり、彼は死を恐れていない目をしている。クリスドと一緒にいるものは命がいくつあっても足りないだろう。


「…ご武運を」

「うぃー」


軽めな返事を残してクリスドは馬をかって、敵へと向かっていく。


ーーーーー


敵味方の残骸が列車の進行に合わせて線となって伸びている。ただただ悲しい。ダルドというこの戦場で最も強いものはこの悲惨な場面を見回す特等席として機能していた。


「Hourrrrra!!!」


敵の騎士が単発式のボルトアクションライフルを持って突貫してくる。慣れてないのかなかなか当たらない。冷静にベネリ M1の照準を合わせて処理する。


「おっぐ…」


騎士は眉間を貫かれて絶命する。主を失った馬はそのまま走り抜けていった。私は平和に恋焦がれている。しかし、今の自分はこの世界の偉大なるイカれた機構の一部として機能しているだけにすぎない。


「Noad allso!Kar!」


また別の騎士がこちらに向かってくる。照準を合わせる。そして、撃つ。だが、敵は銃弾を槍で逸らすと馬を乗り捨て、ダルドに飛び移ってきた。


「Hourrrrrrrrra!!!」


鋭い突きが来る。咄嗟に体勢を低くして避けるが、私のでかい背丈が仇となり、肩をサッと少し抉られた。


「っぐ…」


ただ怯んではいけない。だから、距離を詰める。槍は取り回しが悪い。だから、懐に潜り込んで…!騎士の顎にベネリM1を突きつける。グレートヘルムの隙間から恐怖を浮かべた目が見えた。


「いつかあなたが平和な世界で産まれますように…」


息絶えた騎士を突き飛ばし、地面に落とす。転がっていく死体を見ていると空に上がっていく1本の煙のようなものが視界にうつる。どうやら、敵の信号弾のようだ。事前情報によると撤退の合図だったと思う。


「スザンナ。大丈夫か?」

「ぅえ?」


視線を空から戻すと、指揮官であるマッシミリアーノさんがハッチから顔を出してこちらに笑いかけていた。また笑ってる…


「マ…マッシミリアーノさん…まだ戦闘中です…車内にいてください…」

「いや、少し心配でな。どうやら、他の奴らも無事みたいだな」


見ればカヴァッロ・ゾーネの他の人達も元気そうだった。メーガンさんが右手をケガしてるくらいみたい。


「スラムを強襲してる空挺部隊の方には従軍司祭がいる。合流したら回復魔法をかけて貰えるだろう」

「……はい」


「残存敵騎兵数十騎!こちらに接近!目標はダルド!」


近くにいた軍用トラックの兵士が叫ぶ。見れば残った敵戦車と半数くらいの騎士がこの場を離れようと撤退戦をしているにも関わらずこちらに向かってきている騎士たちがいた。


「対戦車槍を持っているぞ!ダニエーレ!車体を敵と相対するようにしろ!」

「了解!」


対戦車槍…このような後進国にて発展した技術で爆発物や魔法によって先端を戦車にぶつけると爆発するようになっている。安くて効果的な為に、多くの国が配備している。でも、敵は殆どそれを装備しているようには見えない。撤退を援護する為とも思えない。


「敵を追撃しようとこちらの戦力が分散したのを突きにきたか」

「しかし…無謀すぎませんか…?」

「ダルドを破壊したいんだろうな。手柄をとるために気持ちがはやっているのがわかる」


敵はどんどん削られていく。ダルドの機銃掃射だけでなく、こちらの一般兵の銃撃も合わさっている事で弾幕は厚くここを突破するのは至難の技だろう。


「スザンナ。来るぞ!」

「Hourrrrra!!!」


同時にダルドを囲むように騎士が3騎飛び込んでくる。対戦車槍を持ってるのが1人。ライフルを持ったのが1人、クロスボウを持ったのが1人。脅威である対戦車槍を持った敵兵の頭を吹き飛ばす。その間に、ライフル兵の胴にマッシミリアーノさんが拳銃を命中させる。クロスボウを持っていた敵兵がマッシミリアーノさんの方へ向けて発射する。私は冷静にその矢を撃ち抜いた。


「ありがとう!スザンナ!」

「しゃがんでっ!」


マッシミリアーノさんを貫く直前のライフル弾をショットガンの弾ではじき飛ばす。撃った敵の方を睨みつける。そいつもマッシミリアーノさんのように戦場で笑っていた。いや、マッシミリアーノさんは渦中に笑っていたわけじゃない。こいつとは違う。こいつはこの戦場のど真ん中でにやりと口を歪めて笑っていたのだ。


「Hou?Tdou bs ene rteker eindriliing」


敵が何かを呟く。ホファンブルク語だろう。彼はそのまま馬を巧みに操り遠ざかる。それと同時にまだ敵兵が数人が弾幕を突破して飛び込んでくる。冷静に対処すれば問題は無い。しかし、最後の1人を始末した時、遠くからさっきの敵兵がこちらに向かって馬の横腹に括り付けていた対戦車槍をぶん投げる。しかし、大抵の対戦車槍はしっかりと押し込まないと起爆しない。超大国が製造している最新のものなら兎も角、ホファンブルクで生産されていたであろうこれでは爆発なんてしないはず。


「まずい!先端に投擲爆弾が括り付けられ…」


マッシミリアーノさんのその言葉が聞こえた直後、ダルドを激しい揺れが襲う。振り落とされないように車体をぎしっと掴む。


「カトリーヌ!被害報告!」

「損害軽微!内部に損傷無し!」

「外から見ても装甲板が凹んだ程度だ!スザンナ!奴を殺れ!」

「了解しましたっ」


既にさっきの敵兵は距離を詰めてきていた。5m程の距離。間違いなく外すことは無い。射撃の反動が腕に伝わる。敵は馬から飛び降りるとダルドに向かって跳躍してきた。ライフルを弾にぶつけて相殺すると、そのまま乗り移ってくる。


「Wiue get ds?Ma kaan kglun niceit abschivend. Abal ma kaan sih lieston.sie abzuslagon」


敵は何かを喋りながら拳銃を撃とうとしていたマッシミリアーノさんの手にナイフを投げつける。


「うぐ!貴様…!」


マッシミリアーノさんが崩れ落ち、車内に落ちるように消えていった。中の様子を確認したいが、それよりも先にやるべきことがある。

その間に弾込めを終えた私はショットガンの銃口を敵に向ける。彼は腰にぶら下げていた投擲爆弾を投げようとしている。今度こそ当てられるだろう。だが、彼は余裕の笑みを崩さなかった。


銃弾が彼に到達する直前、白い半透明の盾のようなものが出現する。それは銃弾の勢いを殺し切ると役目を終えて割れた。


「個人防御魔法札!?」


おそらく秋津洲製の超高級装備を彼が持っているのは何故かは知らないが、確かにそれは効力を発揮した。


「うっ…爆弾はっ!?」


彼が放り投げた爆弾はダルドの車体を通り越し車体の脇に転がる。あの程度の爆発力では履帯すら引きちぎれない。どん…という音とともに車体が少し浮き上がり、車体の方向が変わる。被害の小ささに安心しつつショットガンを地面に落ちた敵に向かって構える、が、他の騎兵の中から一騎がすり抜けてくる。その騎兵は秋津洲の将校服を着ており、彼を引っ張りあげた。更に目線を向こうにやると機関車からスコープの光が見える。そして、そこからまっすぐ先程、対戦車槍の弾痕まで射線が通っている。まさか…狙いはマッシミリアーノさん!?


「対物!狙撃!」


私の言葉が車内に届く。それと同時にバシッと音が聞こえてきた。砲塔が回転してスナイパーの居たところに主砲を叩き込む。


「マッシミリアーノさん!!?」


急いでハッチを開けて車内に飛び込む。車内は真っ赤に染まっていた。砲塔が動いていたところから砲手のフランコさんは生きているだろう。車内の真ん中で2人ほど重なり合って倒れている。血溜まりの中に肉片が浮いている。


「マッシミリアーノさん!」


操縦席の方を見ると車長であるはずのカトリーヌさんが操縦している。上に倒れ込んでいたダニエーレさんの遺体をどかして起き上がる。


「ダニエーレ…すまない…!」


マッシミリアーノさんが拳を床に叩きつける。ピシャッと血がはねる。


「カトリーヌ。全車に通達。総攻撃をかけるぞ」

「はっ」

「…スザンナ。総攻撃だ。やれるな?」

「…っはい。了解しましたっ」


ハッチを開けて社外に顔を出す。後ろを振り返ると死の線がさっきよりも長くなっている。そろそろ終わらせなきゃいけない。私は空を睨みつけた。

読んでくださり、ありがとうございます!感想、募集してます!今回は黒シャツ隊 特殊部隊『カヴァッロ・ゾーネ』視点がメインのお話でした。次回は国連特殊部隊『パンドラ・ボックス』と黒シャツ隊 特殊部隊『カヴァッロ・ゾーネ』の面々がそれぞれ一対一で戦います!乞うご期待!今回のおまけは黒シャツ隊の車両襲撃部隊の編制を記しておきます。


黒シャツ隊 列車強襲部隊


第7特務混成装甲大隊(大隊 コホルス)


+第1戦車小隊(小隊 マニプルス)

L3 /33 15輌 (30名)

+第2自動車化歩兵百人隊(中隊 ケントゥリア)

VCCー80 ダルド 1輌(3名)

司令部要員 (1名)

軍用トラック 18輌 (234名)

+第19降下狙撃猟兵分隊(分隊 スクァドラ) (6名)

+第20降下狙撃猟兵分隊(分隊 スクァドラ) (7名)

+黒シャツ隊 カヴァッロ・ゾーネ(師団)

第21特殊分隊(分隊 スクァドラ) (4名)

第3特殊小隊(小隊 マニプルス)

軍用トラック 4輌 (52名)

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