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怪奇浪漫BOX   作者: 座堂しへら
シャマンの戯れ
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90 一緒に帰ろう

 いつもの様に、うさぎが学校の図書館で本を選んでいると、古谷が階段を上って来てうさぎに声を掛けた。少し、息が上がっている。


「今日、何時頃帰る?」


「今日は、もうそろそろ、帰ろうかと。何か、用事がありましたか?」


「さっき、仙台港あたりで、高校生くらいの若い死体が上がったらしい。他殺の可能性がある為、かなりの警察が出てるって。物騒だから、家まで送るよ。あと30分くらい待てるか?」


「大丈夫ですけど、いいんですか?生徒と一緒に下校なんてして」


 この場合、古谷の立場上まずいのでは。うさぎが案じると、古谷は眉を上げて見せる。


「まあな。さすがに肩を並べて帰るわけにはいかないから、俺は偶然を装いながら、少し後ろを歩くとするよ」


「あ、なるほど」


「終わったらLINEする。図書館の入口あたり集合な。勝手に先帰るなよ」


「はーい」


 いつも穂積を過保護だと揶揄しているが、古谷もあまり人の事が言えないとうさぎは思っている。


ー港に、高校生の遺体、か。


 まるでミステリー小説の冒頭のよう。


ー何か、情報出てるかな?


 SNSを見てみると、憶測から色々な情報が上がっていた。発見された遺体は、S高校の男子生徒か、M高校の女子生徒のどちらかだろうと囁かれていた。どちらも数日前から行方不明になっていて、捜索願いが出されていたとか。


「S高もM高も近いな。他殺の可能性って。目立つ外傷でも、あったのかな?」


 あるいは、死体隠蔽の痕跡など。可能性は色々考えられる。


 そんな事を考えていると、外で騒々しい音が響く。サイレンカーの音だ。パトカーが二台、サイレンを鳴らして走り去るのが見えた。生徒が数名、門の辺りに集まって去り行くパトカーを眺めていた。


『現在、部活動や自主学習で残っている生徒の皆様、ただいま警察より、不審者目撃の連絡がありました。本日の活動は直ちに終了し、帰宅方向が同じ生徒は、なるべく集団で下校して下さい。公共交通機関を利用出来る場合は、なるべく交通機関を利用して下校するなどして下さい。また、保護者の送迎を待つ場合は、本校図書館エントランスを利用して下さい。これらの方法が難しく、自宅まで長時間、徒歩で帰る必要がある生徒は、個別に対応しますので、図書館エントランスに集合して下さい』


 長い校内放送が流れた。これは只事ではない。うさぎも身支度を整えると、7階の戸締りをして、1階のエントランスへ向かう。かなりの生徒がまだ残っていたようで、ざわついていた。


「あ、猫村さんも残ってたの?帰りどうするの?」


 同じクラスの女子生徒が、うさぎに気づいて声を掛けてくれる。マキという女子で、うさぎの後ろの席で、比較的親しい。


「マキさん!そう、ですね……あまり、ここから遠くはないのですが、あまり一人では下校しない方が、良さそうですよね」


 古谷に待っていろと言われたが、さすがにその話は出来ない。


「そしたら、ウチ、お母さん迎えに来てくれるから、一緒に帰ろうよ」


 マキは優しさから、そう言ってくれる。


「ありがとう。でも、ホントに、そんなに遠くないんです」


「そっか。猫村さん、家どの辺?」


「ウチは、高森です」


「あ、ホントに近いんだね。でも、ウチは古内だから、帰り道だし、乗せてくよ?」


「そうですね。同じ方面で帰る人、見つからなかったら、お願いします」


「あー、マキちゃん、猫村さん!良かった、知ってる人いた!ねー、これ何の騒ぎなの?何かあったの?さっきパトカー通ったよね」


 部活を終えて来たクラスメイトが、エントランスに入ってすぐ、うさぎ達を見つけて駆け寄って来る。


「藤崎さん。部活だったんですか?バスケ部でしたっけ?」


「うん、そー。今日はホントだったら、今から8時まで練習だったのに!他の部活メンバー全員寮生だから、帰宅するの私だけなんだよね」


 ここ、仙台聖華学院高等学校は部活動も強豪で有名な高校である。特にバスケバレー、水泳、柔道、レスリング部は全国クラス。とはいえ、マンモス校であるが故、部活動の数もマンモス級。いかに巨大な体育館が二つあるとはいえ入り切らず、体育館の使用は、前半の部と後半の部に分かれて行っているのだとか。バスケ部は、今日は後半の部で、やっと部活を始めた矢先、中止させられてしまったらしい。


「何か、近くの海で、高校生の遺体が上がったらしいよ。殺人だって」


「うっそ!マジで?ウチの生徒?」


 マキの言葉に、藤崎は驚いた顔を見せる。藤崎は、ショートカットで、そばかすが印象的な少女だった。


「噂では、S高じゃないかって」


「あー、S高ね」


 藤崎の顔には、納得と書いてある。S高は、この辺りでは、あまり素行が良くないので有名な高校だった。噂では、名前さえ書ければ、誰でも入学できるとか言われている。


「藤崎さんは、家、どの辺りですか?」


「ウチ、近いよ。寺岡。でも今、家におばあちゃんしかいないから、迎えに来てもらえなくて」


「あ、私の家、高森なので、近いです。一緒に帰りますか?あ、でも、途中から一人になっちゃいますね」


「へー、猫村さん、ウチ近かったんだ。知らなかった。さすがにそれくらいなら、ちょっとの距離だし大丈夫じゃない?ウチの方は、車通り多いし」


「他、近い人探してみますか?この際、別のクラスの方でも、構いませんよね」


 そう言って、うさぎが周りを見渡した時、入口に古谷の姿を見つけて、ほっと胸を撫で下ろす。


「おーい、徒歩組で、寺岡6丁目、1、2丁目、高森方面のヤツ!俺と一緒に帰るぞー。家に誰もいなくて1人になるやつは夜間まで食堂開放するから、このまま残ってもいいぞ。ハゲっ…校長先生が何か夜食用意してくれるってさ。あと地下鉄乗るヤツも、俺と一緒に行くから準備してー!」






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