67 図書館7階
地蔵調査から1月程が経ち、高校はそろそろ冬休みに入る時期だった。
「あと2日で冬休みだなー。猫、クリスマスのご予定は?」
ここは学校の敷地内なので、古谷はうさぎを『猫』と呼ぶ。うさぎが猫村を名乗っているからだ。
「そうですね。クリスマスは、いつも通り、ぼっちの予定です。せめてケーキくらいは、食べたいですね」
仙台聖華学院高等学校の図書館、最上階の7階。古谷はいつもの掃除当番、うさぎは机で資料を見ながらの執筆作業。タブレットにキーボードを繋ぎ、細い指が軽快にキーを叩く。他に人影は無い。いつもの事だ。古谷は適当にカウンターを拭きながら、うさぎのその指を眺めていた。
「さみいなー。雪降んのかな?」
「そういえば、今夜は雪の予報、でしたね」
「ホワイトクリスマスになるかな。一緒に過ごさない?」
「クリスマス、ですか?」
「そう。イヴ。実はケーキを、ホール買いしている。しかも6号。一人で食うのは悲しすぎる」
「二人で食べる量でも、無いですね。谷川さんも呼びます?」
「あいつは彼女がいる」
「え?そうなんですね。知らなかった」
「うん。大学から付き合ってるから、もう奥さんみたいなもんよ」
「すごい。結婚しないんですか?」
「昔から、28歳の11月に結婚式するから、ご祝儀準備して予定空けとけって言われてる」
「わあ、来年じゃないですか」
「たぶんお前も呼ばれるだろうから、予定空けとけよ」
「ホントですか?私、親戚以外の結婚式、初めてです」
「次は俺達だな」
「気が早すぎて、想像もできません」
「俺は白無垢でもウエディングドレスでも、どっちでもいいぞ。なんなら両方やろう」
「とりあえず、学校でする話じゃないですね」
「で?クリスマス、俺の為に空けてくれるの?」
「一応、今のところ、予定は無いですよ」
「夕方、車で迎えに行く。いつもと同じ、宮城図書館前な」
「はい」
約束を終えた所で、古谷のスマホに着信が入る。
「お?噂をすれば、谷川だ。もしもし」
『あ、優生?今どこいんの?』
「俺?学校の図書館だけど」
『また?いっつもそこいんな。じゃあさ、今日の新聞読めるだろ?地方紙。できれば東北新報。地方の事件事故のページに、日理地区の交通事故、大きく載ってるから見てみて!後でまた電話するわ!』
「日理地区?この間の、地蔵調査の所だよな。新聞見ろだって。下行ってみるか」
「あ、じゃあ、私そのまま帰るんで、荷物まとめます」
うさぎは帰り支度をして、古谷と一緒に一階のロビーへ向かう。ここに各社の新聞が置いてある。
地方紙の東北新報。広いテーブルの上で、誌面を広げる。事件事故のページ。
「あ、これじゃないですか?」
うさぎは眼鏡越しに古谷を見てから、誌面を読む。
『12月21日午後5時20分頃、日理地区町道にて、乗用車2台が衝突事故。墓参りから帰宅途中の四人乗りのワンボックスカーが、自宅から出ようとしていた乗用車に横から衝突。乗用車に乗っていた三浦剛史さん(54歳)が病院に運ばれたが、およそ2時間後に死亡が確認された。ワンボックスカーの運転手、70代男性も胸などを強く打ち、病院に搬送されたが、命に別状は無し。他3名の同乗者も軽症で済んだ。ワンボックスカーの前方不注意とスピード違反の両面で、警察は調査している。事故現場は、見通しの悪いカーブ道で、近所の住民は常々危険だと思っていたと語っている』
「これって、例の、呪いのお地蔵様の家、ですかね?」
「ぽいな。確か、三浦邸だったはず」
「お地蔵様を壊したから、呪われたんですかね?」
「さあ。もともと見通しの悪い場所では、あったからな」
「でも、こんなに続きます?」
これで、何人目の犠牲になるのだろうか?
うさぎは不安そうな顔で、古谷を見上げる。古谷はその視線を受けて、片眉を上げて見せる。
「そんなに心配なら、今度見に行ってみるか?」
「はい」
この目で見た所で、何も分からないかもしれないが。なんとなく、放って置けなかった。
2章、残りラスト3話です(。・ω・。)




