52 プロローグ
それは、『祈り』なのだと、彼女は言った。
「とげ抜き地蔵、子安地蔵、子育て地蔵、身代わり地蔵、しばり地蔵、しばられ地蔵、水子地蔵。果ては祟り地蔵でさえ、生まれた理由は、そこに祈りがあったから。祈りがあるという事は、先に悲劇があるという事。そういったプロセスを含めて、お地蔵様の謎を解いていくのは、ドキドキするわ。この可愛らしいお地蔵様は、その悲劇にピリオドを打って、収めてくれる蓋のような物よ。だから、コルクを抜けばシャンパンが溢れ出る様に、お地蔵様をどかせば、封じていた禍いが溢れ出る。当たり前じゃない。閉眼供養したって無駄よ。禍いの元は、お地蔵様じゃないんだもの。『悪い何か』は、お地蔵様が収めていた、その地にあるのだから」
萌音の言葉に、太郎は首を傾げる。
「でも、ずっとそこに置いておくってのも、現実問題難しくないですか?土地開発や道路拡張などで、どうしてもそのお地蔵様を退かさなきゃいけない事って、ありますよね?」
「そうなのよねぇ。甘んじて祟りを受けるか、或いは」
萌音は人差し指を立てる。
「何故、その場にお地蔵様を置いたのか。誰が、何の目的で置いたのか。その辺りをよーっく確認して、目的に反らないようにお地蔵様を移動する、または撤去する事が、大事なのよ。そのお地蔵様のお役目が終えているなら、閉眼供養して撤去しても、問題ないわ」
だつてそれは、誰かの加持なのだから。
第二章に入ります。本日は、21時に次話もアップします。




