表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
怪奇浪漫BOX   作者: 座堂しへら
姫君の鬼胎
21/267

21 キャンプ場

 一同を乗せたエスティマは、お堂の横にあるスーパーに到着した。


「あー、これが例のお堂か。俺ちょっと写真撮って来ますね。あと動画で、一周回って撮って来ますわ」


 勢司せじは、遅れて来たのでお堂を見るのは初であった。それはさやかも同じだか、彼女はさほど興味を示さず、さっさとスーパーに入って行く。真夏まなとうさぎも、追いかけるように入って行った。


「了ちゃん、中は鍵掛かってるから、外回りだけでいいわよー」


「うーっす」


 小田も店の中に入ると、冷房が良く効いていて涼しかった。小さなスーパーだが、品揃えはかなり良いようだ。野菜も鮮度良く艶やかで、ついつい手が伸びてしまう。

 大量に肉と野菜とエビを買って、ついでにお菓子を買って袋に詰める。飲み物は、お酒とジュースとお茶と、一通り揃える。未成年者もいるし、七海も車で帰るので、お酒は飲ませられない。

 お金は社会人メンバーが融資してくれるという事で、うさぎやさやか、真夏といった学生達は、支払いを免除された。


「買い忘れないっすか?」


 荷物を車に積み込みながら、勢司は小田に確認する。


「炭は車に積んであるし、大丈夫よー。飲み物もしっかり買ったから、安心してねー、了ちゃん」


「オッケー。じゃあ、キャンプ場に移動しますよ」


「あ、勢司さん。私、バイクそこのスタンドに預かってもらってたので、自分ので行きます」


 うさぎが、スーパーに隣接するスタンドを指差す。


「あ、やっぱ単車で来てたんだ」


 勢司は了解したと、頷き笑みを返す。


「はい。朝ガソリン入れた時に、バイク熱くなると可哀想だからって、松永さんが、コックピットの中に、預かってくれてました」


「へー。こっちのスタンドも、松永さんが経営してるのねー。私も明日、ここでガソリン入れて帰ろー」


「ねえ、何の話?」


 さやかと真夏は話の要領を得ず、首を傾げる。


「何って、うさぎさんのバイクの話。彼女、いつもフィールドワークの時は、自分のバイクに乗って、高速かっ飛ばして来るんだわ。知らなかった?」


「え?穂積さんの車に乗って来てたのよね?え?違うの?」


 さやかは怪訝な顔をする。何か、納得いっていない様だった。


「あの人東京から来てるだろ?うさぎさんは仙台から来るから、逆方向でしょ」


「そうだけど……」


 それでも、甲斐甲斐しく穂積が送り迎えしているのだと、思っていた。それが少し妬ましかったのもあり、さやかも今日はわざと遅れて来て、勢司に迎えに来させたのだ。


「すごい、高校生なのにバイク乗れるんですか?」


 真夏も驚いている。無理もない。うさぎとは、3つ程しか年が離れていないのだから。


「バイクの免許は、16歳から、取れます」


「高校生って、高速道路運転していいの?」


 さやかも、戸惑いながら聞いてくる。


「一応、年齢規制は、無いです。それじゃ、後で」


 うさぎはさっさとスタンドへ入り、奥にいた従業員に声を掛けると、愛車と思しき黒いバイクの元へ行く。何となく、皆無言で、それを眺めていた。


 フルフェイスの白いヘルメットを被り、うさぎは慣れた仕草でバイクに跨る。白いTシャツにデニムパンツ姿が、シンプルだが様になっている。

 小気味良いエンジン音が上がり、長い髪を靡かせて、うさぎは颯爽と走り去る。


「かっこいい」


 真夏がほうっと、溜息を落とす。


「バイク、いいわよねー。特に夏は、気持ちよさそうねー」


 はしゃぐ真夏と小田の後ろで、さやかは真顔で立っていた。


 斎木さんは、車の免許取るご予定は?


 などという意地悪は飲み込んで、勢司は皆に声を掛ける。


「ほら、ガール達、行くよー」


 小田だけが、嬉しそうに振り返って、はーいと返事していた。





 ※※※※


 キャンプ場に着くと、古谷と谷川が手際良くテントを立てて、炭を並べて火を起こし、鉄板を温める所まで終わらせていた。


「相変わらず、手際良いわねー!」


 小田も関心する。


「すごーい。アウトドア得意なんですか?古谷さん」


 さやかは口の前で両手を合わせて、キラキラした目で古谷を見上げる。


「普通ですよ。ああ、炭火は七海さんがやってくれました。早速ですが、斉木さんは野菜洗って、切って来てもらえますか?」


 似非臭い笑顔で、古谷が命じる。


「あ、私も手伝います」


 真夏も買って出てくれる。


「……じゃあ、行こっか、真夏ちゃん」


「はい。えーっと、お姉さんは、何てお呼びすれば良いですか?」


「私?私は斎木さやか。ふふ。さやかで良いよ」


 穏やかに笑む。


「じゃあ、さやかさんで。さやかさん、美人ですね。大学生ですか?」


「やだ、そんな事無いって。今は大学2年よ」


「東京の大学ですか?」


「ええ」


「やっぱり!東京の大学って、こんな綺麗な人ばっかりなんですか?私も東京の大学憧れてるけど、ちょっと行くの怖いです」


「ふふ。普通だよ。人は福島と変わんないよ。違うのは、喋り方くらいかな?」


「それが一番ネックですよ!訛りなんて、一生直らなそうです」


「一生って」


 さやかと真夏は、楽しそうにおしゃべりしながら、野菜を抱えて水場へと向かって行った。


「私、何しますか?」


 うさぎも、自分の仕事を探す。


「じゃ、俺と一緒にエビの背ワタ取り」


「……はい」


「何、その変な顔」


「いえ。料理とか、するんですね。何か、意外でした」


「俺はあれだ。普段やらないけど、思い立った時だけ、急に手の込んだ料理をやり出すタイプだ。急にラーメンとか、鶏ガラから取りだすあれだ」


「面倒臭いタイプですね。何か、納得しました」


「後でXJR見せてよ」


 ヤマハXJR400。うさぎの愛車である。


「いいですけど、お触り禁止ですよ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ