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怪奇浪漫BOX   作者: 座堂しへら
姫君の鬼胎
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「この後みなさんで、キャンプなんですか?」


 真夏まなはアイスを食べながら、うさぎに聞く。同じチョコレート味を食べながら、うさぎは頷く。


 谷川達がアイスを多めに買って来てくれたので、真夏や松永さん、斉藤さんも一緒に、駐車場でアイスを立ち食いしていた。それでもアイスは多く残っていて、お世話になった神主さんの家に置いて来た。姿は見えなかったが、小学生の子どもが二人いるそうだ。奥様が喜んで受け取ってくれた。


「この後、材料買って来て、バーベキューもします」


「だったら、お堂の横にスーパーあったろ?あそこで肉と海鮮買うといいよ。あんな所にあるけど、あそこの海鮮は、特に美味いよ!」

 

 松永さんは、得意げに言う。隣で斉藤さんが笑いながら、「そりゃ、自分の店だもんな」と言う。


「でも、ホントに魚やエビが、美味いんだよ。良かったら使ってやって。こんな田舎町にしては、頑張ってるから」


「知ってます。ガソリンスタンド探す時、SNSで見ました。すごい、高評価でした。特にお刺身」


 うさぎ情報に、みんな関心の声を上げる。


「あー、刺身は人気ありすぎて、予約制なんだよ」


 松永さんは、申し訳なさそうに言う。


「結構、遠方からわざわざ買いに来る人、多いみたいです。宮城から、来てる人もいます。ちゃんと、ドライアイス付けてくれます。親切」


 うさぎがさらに褒めると、松永さんは恥ずかしそうにほっぺたを染めた。「照れるない」と笑う。


「えー?うさぎちゃん、SNSとかやるんだ。なんか、意外だったな。自分の事とかも呟くの?お父さんとか、お母さん、何にも言わない?」


 今時、高校生のSNS利用など当たり前だろうに、さやかはまるで小学生に対するかのような扱いで、うさぎに聞いて来る。


「父も母も、フォローしてくれてます」


「やだー。可愛い」


 さやかが微笑む。

 笑顔のガールズトークだが、何故か薄ら寒い。


「いいなー、キャンプ」


 羨ましいと、真夏がほっぺを膨らませていた。ヘルメットを被ったままアイスを食べてるのが、何とも可愛らしかった。


「キャンプ、好きなの?」


 古谷が声を掛ける。何だか、面倒見の良い先生の様だった。


「キャンプやった事ない」


「えー?こんなにキャンプ場近いのに?」


 谷川は驚く。


「割と近い方が、やんなかったりするわよねー」


「ウチ、お父さん、アウトドア系全然ダメで」


 行平ゆきひらの、カチッとした服装と、不器用そうな雰囲気を思い出して、小田と古谷は苦笑いする。


「じゃあ、今日一緒にテントで、お泊りしません?小田先生、大丈夫?」


 うさぎの提案に、イチゴアイスを頬張りながら、小田は親指を立てる。


「全然大丈夫ー。女子テント、4人用だからー」


「あ、寝袋の予備、俺持ってるよ」


 谷川も手を上げる。アイスのカップは、すでに空になっていた。


「何かあれば、歩いてでも帰って来れる距離だもの。大丈夫でしょー。親御さんに話して、準備してらっしゃい。準備出来たら、買い出し行くわよー。男子は悪いけど、ちょっと遅くなっちゃったから、先行って、テント立てててくれるー?古谷君、私のジムニー運転出来るわよねー?」


「了解。買い出しの車は?」


「忘れてたー。了ちゃんは買出しチームで、運転手お願いー」


「おまかせあれ」


「やった!準備して来る!」


 真夏は、急いでアイスを食べ切ると、家に向かって走って行った。大人びた子だと思ったが、キャンプに浮かれている姿は年相応だった。


「じっちゃんとマグロは?どうする?」


 七海とマグロは、いつもは活動に参加するのは、午後3時までと決めていて、どんな遠方でも、必ずその日の内に自宅へ帰るのだ。だが、今回は地元の福島であり、ここは自宅からもかなり近いという事で、今日はゆっくりしていた。


「ばあちゃんに、ご飯食べてから帰っても良いって許可もらってるから、バーベキュー参加して帰るよ。あんまり遅くなると、マグロが不機嫌になるから、8時くらいまでかなー」


「やった。じゃあ今日は、ちょっとゆっくり喋れるね」


「優生君に会うのも久しぶりだし、今日は福島で良かったよ」


 あっという間に準備を済ませて戻って来た真夏を乗せて、それぞれの車が目的地に移動する。


「じゃあ、後でねー」


 女子達は勢司のエスティマに乗り込み、後は谷川と穂積と七海が、それぞれの車で移動する。古谷は小田のジムニーのキーを受け取り、キャンプ場へ向かう。女子用のテントが積んであるのだ。


「このポンコツジムニーも、運転するの久しぶりだな」


 相変わらずの車内に、古谷は苦笑いした。後部席には大量の荷物、助手席には大量の書類。車の頭には、テントが積まれている。


「どれ。行きますか」


 キーを回すと、けたたましいエンジン音と、カラカラカラカラっという怪しい音が、エンジンルームから聞こえて来る。これもまた、相変わらずだった。



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