14 二度目の神託
女性は、朝霞英子と名乗った。長い髪は白髪で、品よく纏められている。
例の、行来姫の夢を見て御堂を建て直した姉妹の、妹のほうであった。
「また、夢を……?」
神主さんが問う。不安そうな声音で。
「はい。その話を、少し詳しく……」
「よかったら、先生方もご一緒してもらって、少し意見を聞かせて頂きたい」
斉藤さんが、懇願する様に眉を下げて見せる。これでは断れない。
「朝霞さんも、お嫌でない様でしたら」
小田が受けると、朝霞さんも同意したとばかりに頷く。
「今回、来たのは私だけですが、前回同様、姉も同じ夢を見ております。姉の蘭子も来たがっておりましたが、すみません。去年の暮れに転んで腰椎骨折してしまって。腰が痛んで、中々長旅に耐えられなくなってしまって」
「それは、大変でしたね。あちらでお元気にされてるなら、良かったです。どうぞ無理をなさらずに」
神主さんの言葉に、朝霞さんは礼を述べる。
「それで、夢とはどんな?」
小田が促す。
神主さんの奥様が、奥から斉藤さんと朝霞さん用に麦茶を運んで来て、無言で会釈して去っていった。
「はい。行来姫様が、大変お怒りになっている夢です。あの様なお姿は、以前の夢ではまったく見られませんでした。しかし、行来姫がお怒りになられているのには、当然理由があるのです」
夢は、前回同様、暗い部屋の中に行来姫が一人きり、美しい着物姿で座っていた。しかし、その目は吊り上がり、怒りで真っ赤に充血していたという。
『私が我が子の如く可愛がっている氏子の娘を、害する愚かな娘がいる。今すぐ血生臭い行いを止めねば、天罰が下されるだろう』
それが、行来姫の託宣であった。
「夢なのに、はっきりとお言葉が聞こえました。そして。目が覚めても、一字一句忘れる事はありませんでした。それは、姉も同じです。なので私達は、またあの夢を見たのだと、確信を得たのです」
ただ、その内容は、よく分からないのだと、朝霞さんは言う。
「だから、せめて私だけでもと思い、直接来たのです」
「なるほど、なるほど……」
頷きながら、神主さんは考え込む。
斉藤さんも、うーん、と唸る。
「誰の事だか、目星が付きますか?」
分かっているのは、氏子の娘、という事のみ。
ただし、行来姫にとって、最愛の娘の如し。
「若い女の子、となれば、おおよそは。悲しい事にこの町に住む、子供は少ないのです」
神主さんが言うと、斉藤さんも「だな」と、頷く。
「んで、お堂やこの神社の近くに住む、氏子といえば、真夏ちゃんの事だろうな」
「可愛がるとなれば、そうでしょうね」
真夏、という名前が上がる。
「神社のすぐ目の前、あの道路向かいの家です。あそこは総代の佐藤行平の家で、14歳の娘がいます。この近辺で、娘と呼べるような子が居る家は、あそこと、もう一軒、近所に佐藤の親戚筋に当たる家があって、そこも同じ年の娘がいるんだが」
斉藤さんが、ちょっと言いにくそうに片眉を上げた。
「その家は、2年前に氏子を抜けたから、氏子には当たらん。だから、真夏ちゃんだけだな」
「その真夏ちゃんとやらを、害する悪い娘がいると。ほっとくと、その悪い子に天罰が下ると」
谷川が、腕を組む。
「血生臭い、となると、おだやかでないですね。真夏ちゃんに話を聞くのが、手っ取り早そうですね」
「そうねー。心当たりがあればいいけど」
小田は頬に手を当てて、目を瞑る。いつの間にか、割烹着を着ていた。
「先生方から見て、どうですか?やっぱりこれは、行来姫様の神託だと思いますか?」
斉藤さんは、小田に問いかける。とはいえ、わざわざ足を運んでくれている朝霞の前で、否定など出来るわけもなく。
「非常に興味深いですね。色々な民族信仰を調査してきましたが、夢でお告げを受ける、と言うのは、初めて直接耳にしました。歴史の中では、巫女に位置付く方が、神託を受けて民に告げる、と言うのは、多く記録が残されていますが」
小田の返答に満足した斉藤さんは、神主さんの方を見る。
「松永さんが、行平さんの所に話しに行ってる。真夏ちゃんは、まだ部活で学校だろうから、帰ってから話聞いた方がいいだろうな」
「そうだね。俺も行ってみるかな。すぐそこの家ですし、皆様も話聞きますか?」
神主さんが誘ってくれるが、流石の小田も困った顔をしていた。
「流石に、この人数で押しかけるのも、気が引けるわねー。私と、了ちゃん……は連れてくとびっくりさせそうだから、古谷君、一緒に行こっかー」
「いいですよ。じゃあ、勢司君の代わりに、記録係もしますよ」
「あざっす。動画、編集して使う事もあるかもなんで、意識して顔映さないようにしてもらえると、助かるっす。万が一映っても、ボカシ入れるんです大丈夫。相手方が録画嫌がったら、無理に撮らなくていいっすよ」
「了解」
「ふふ。なんだか、懐かしいわねー。前は人数も少なくって、二人で調査する事もあったわよねー」
「そうですね。久しぶりだ。じゃ、行きますか」
「他のみんなは、神社の下の、駐車場で待っててくれるー?そんなに掛からないとは、思うけどー」
「はーい」
「ごめんねー、暑い中ー」
「大丈夫です。マグロさんと、遊んで待ってます」
心なしか、うさぎがちょっと嬉しそうに頷く。下の駐車場では、この話が聞こえたかのように、マグロが嬉しそうに尻尾を振っているのが見えた。
あらすじで、痛恨のミス( ;∀;)
もっと真面目に書けば良かった、、、




