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怪奇浪漫BOX   作者: 座堂しへら
シャマンの戯れ
117/267

117 嫌な事件

 うさぎ達の参考人聴取は、結局日が暮れるまで続いた。解放されたのは、5時を過ぎた頃。長い時間拘束してしまった事を、刑事さん達は丁寧に詫びて労ってくれた。


「いえ。お昼ご飯までご馳走になってしまい、すみませんでした。ご馳走様です」


 うさぎも礼を言うと、途中から同席していた弁護士の先生と一緒に先に帰って行った。


「彼女は、良いとこのお嬢様とかなんですか?」


 康太は笑顔で見送りながら、隣の谷川に尋ねる。聴衆は、三人別々の部屋で行われたので、彼女らがどんな話をしたのかなどは、分からなかった。


「まあ、そんなとこかな?」


 谷川が笑って答えると、スマホを見る。


「さて、こっちもそろそろお迎えが来るんだけど、康太君、家まで送ってこうか?ついでに、焼肉食べて行かない?」


「え?いんすか?焼肉なんて、実家以来です!」


「今日一番の、功労者だからね。君のおかげで、彼女を無事に帰す事ができた。優生もダメとは言わないでしょ」




 ※※※※※


「一体全体、どうなってんだ、この事件は?」


 頭を抱えているのは、仙台東警察署の刑事達だった。まもなく警視庁から担当となる刑事達がやってくる。そうすれば向こうに主導権は移るので、まあ、肩の荷は下りるわけだが。


「容疑者の家から発見された遺体は、彼女の供述通り現在行方不明者届けが出されている大西空愛羅おおにしそあら18歳と見て、確認を進めています。母親に遺体確認を要請しているのですが、何故か家から出るのを渋ってるみたいで、少し時間が掛かるかもしれませんね。DNA鑑定も進めます」


「なーんか、訳ありの家庭なのかね。まあ、いいや。容疑者は、残りの遺体の事、何か話した?」


「はい。今の所は素直に、聞かれた事は何でも答えてくれています。供述によると、腕2本は仙台港から海に投げ捨てたそうです。先日発見された女性の腕が、それに当たるのではないかと思われます。胴体から下も、細かく切って海に捨てる計画だったそうですが、ナタニアは車を所持しておらず、交通手段は自転車しか無かったようで。思いの外腕が重かった事と、海までだいぶ距離があった事から、海に遺棄するのは諦めて、残りの遺体は近所の山に埋めたそうです。場所も明確に聞き出してありますので、本庁が到着次第、現場の捜査を開始します。ナタニアも落ち着いてますので、現地立ち合いをさせようと思います。まあ、本庁の返事次第ですが」


「近くの山?まさか岩森遺跡のとこか?」


「まさに、です。発掘調査が終わり、保全した区画に埋めたそうです。重機で掘り起こした後だったから、土が柔らかくて埋めやすかったそうです」


「大胆だな。発掘調査中なら、すぐにまた掘り起こされる可能性も高いだろうに」


「詳しくは分かりませんが、ナタニアの話では、何も出なかった区画なので、再び掘り起こされる可能性は低かったそうです。ナタニアは、遺跡の発掘調査ボランティアに参加していて、事情に詳しかったようです」


「はあ。なるほどね。で?肝心の先生は?無事にお帰り下さった?こっちで送らなくて、大丈夫だったの?」


「あ、はい。宇崎清流先生は、弁護士の先生と一緒に帰られるという事で、送迎は断られました。問題ないとの事です」


「びっくりしたよな。今をときめく人気作家、宇崎清流が現役女子高生だって。しかも仙台在住。そんな話ある?俺、それ聞いた時、生首出て来たのとおんなじくらい、びっくりしたんだけど」


「ホントですよね。しかも本名って。そりゃ弁護士も飛んで来ますよね」


「大丈夫だとは思うけど、関係したやつら全員、緘口令敷いとけよ。弁護士先生も、その辺しっかり書面にとって行きやがったからな」


「いくら何でも、ベラベラ口外する警察官なんていませんよ。とは言え、気を使いますねー。それでなくても、神経使う事件なのに」


 見つかった遺体は未成年で、加害者は外国人留学生。しかも有名国立大に在学中。これだけでも胃が痛い内容なのに、事件に著名人が巻き込まれただなんて。マスコミには、少なくとも宇崎清流の関与だけは、何としても隠し通さねばならない。さもなくば、あの怖い弁護士がまた来てしまう。


「まあ、菊池のファインプレーのおかげで、野次馬どものSNSに素顔を上げられる心配もなさそうだし、ホント助かったわ」

 

 現地に同行していた女性警察官が、被害者と第一通報人が未成年であろう事を考慮して、すぐ様警察車両の中へと移動させていた。移動の際も、二人とも彼女の指示でフードを目深に被り、マスクをしていたという。現地に到着して5分という、僅かの時間で判断して動いた事が功を奏して、野次馬が集まる前には、無事車両に身を隠し署内へと移動してこれた。


「また、『はぎの月』買って来てやんねーとな」


  萩の月は、有名な仙台銘菓だ。


「最近は、カヌレにハマってるみたいですよ」


「女子かよ」


「女の子は、ずーっと女子なんですって」


「カヌレでもトゥンカロンでも台湾カステラでも、何でも買ってやるさ」


「お、さすが女子高生を娘に持つ父親は、張ってるアンテナが違いますね」


「おう。あいつらは、すぐに古いって馬鹿にして来るからな。上回るくらいじゃねえとな」


「ははっ。良い父親なんすか、それ。でも、熊谷さん的には、嫌な事件でしたね、今回の」


「まあなぁ。遺体の娘は、ウチの子と同い年だしな。殺人なのか、自殺幇助じさつほうじょなのか、まだ分かんねえけど。何が一番切ないって、親が真っ先に駆けつけてくれねえ事だよな。家でゴロゴロ寝てて、来たくねえって、何でだよ。娘、可哀想じゃねえのかよ」


 大西空愛羅おおにしそあらの母親が、家を出たという知らせは、まだ来ない。父親に関しては、どこにいるかすら分からない。


「お姉さんとは連絡が取れて、すぐにこちらに向かってくれるそうです。熊本から新幹線で来るそうなので、半日は掛かりますね」


「そうか。姉ちゃん、辛いな」


「ええ。嫌な事件ですね、ホント」


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