表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
怪奇浪漫BOX   作者: 座堂しへら
シャマンの戯れ
105/267

105 可愛い人

 谷川とあさみと合流した後は、手早く食事を済ませて、帰路に着いた。あさみは見た目通りの、快活な女性だった。かなりの健康志向の持ち主で、うさぎの食べる物にも、色々アドバイスしてくれた。これまで、食べる事は好きでも、さほど栄養や健康について考えた事が無かった為、かなり参考になった。いつどこで、小説の話の種になるか分からない。


「こいつは常々、健康の為なら死んでも良いと豪語する変態だ。あまり参考にし過ぎないように」


 古谷が苦言を呈する。


「もはや、本末転倒ですね」


 そして車の中では、またナタニアの話になった。


「今週の土曜日、一緒に発掘作業する約束してるんでしょ?なんか粘着質そうだし、断った方が良いんじゃないの?」


 心配して、谷川が言うと、古谷も同意見だと言った。


「そうですね。私も少し悩んだのですが、やはり発掘調査は参加しようと、思います。調査ボランティアには、かなりの人数が参加しているようなので、二人きりにはならないでしょうし、ご友人のダリアさんもいらっしゃいますし、あまり心配は無いかと、思います。すぐ近くに、古谷さん達もいる訳ですし。今回を逃すと、次いつ発掘調査なんて参加する機会があるか、分かりませんし」


「そう言うと思った」


 隣で古谷は、諦めたような声で応える。


「それでも心配なら、参加は午前中だけにして、午後は大人しくしてようと、思います」


「まあ、それなら。穂積さん呼んだら?」


 谷川の提案に、うさぎは慌てて首を振る。


「今回は、ZAIYAの活動から逸脱しての、ボランティア参加ですし、あまり不要にお呼び立てするのも、気が引けます。それでなくても、お仕事、激務のようですので」


「そっかー。東京のサラリーマンは、忙しそうだよね」


「ごめんねー、タイミング悪くて」


 あさみが謝ってくれる。都合が良ければ、あさみが一緒に来るつもりでいてくれたようだが、丁度仕事のミーティングが入ってしまっていたようだった。


「とんでもない。心配して下さり、ありがとうございます」


 話をしている内に、車はうさぎの住むマンションに到着する。入り口前まで車をつけてくれて、わざわざ部屋の前まで、古谷が送ってくれる。


「流石に、過保護すぎます」


 うさぎの言葉に、古谷は首を振る。


「いいの。俺が二人きりになりたかっただけだし」


 エレベーターが止まり、うさぎの部屋の前に到着すると、うさぎは古谷の顔を見上げた。


「それでは、また明日」


「おう。朝も迎えに来ようか?」


「ダメに決まってます!ほら、下で谷川さん達、待ってますよ!おやすみなさい」


「おう、おやすみー」


 古谷はあっさり引き下がり、数歩歩いてから、何か思い出したようで、ぱっと振り返る。


「そうそう。この間、言おうと思ったんだけど」


「はい?」


「オスカーワイルドのサロメ。世間では悪女の代表みたいに言われてるけど。俺は彼女を、結構可愛い女だと思ってるんだ」


「はあ」


「じゃな。今度こそ、おやすみー」


 何故、急にそんな事を、言い出したのだろう。うさぎは首を捻りながらも、自分の家に入り、電気を点ける。


 サロメは、可愛い女だろうか?


 エアコンの電源を入れて、コタツもつける。寒いので、ケトルでお湯を沸かしてコーヒーの準備をする。一応、今から試験勉強もしなければならない。


「好きな男の首を刎ねて、無理やり自分のモノにして、キスをした女が?」


 可愛いか?


「それでも、恋をしていたのは、確かかな。ヨハネに」


 非常に幼稚で、拙い恋心だったのかも、知れないが。


「初恋だったり、するのかな」


 だから、どうしても、キスをしたかった。

 どうしても、キスをしてみたかった。


ーその気持ちは、分からなくも、ないかもしれない。


 初めてのキスは、爽やかなミントの味がした。


ーサロメのファーストキスは、血の味だったのかな。


 その冷たい唇は、恐ろしくも、魅惑的な味だったのかもしれない。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ