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怪奇浪漫BOX   作者: 座堂しへら
シャマンの戯れ
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104 火野あさみ

「ねえねえ、猫村さん。あの外国人の女の人、知り合いなの?何か、しつこくなかった?」


 一緒に帰る様になって、親しくなった上級生の女の子が、うさぎに話しかける。


「知り合いというか、先週参加したボランティア活動で、初めてお会いしました。今週の土曜日に、またご一緒する約束をしまして」


「へー。ボランティアか。やっぱやった方が良いのかな?就職活動とかでも、履歴書に書けた方が良いっていうよね」


「確かにねー。まあ、大学にいってからでも、いいだろうけど。でも、実習とか多い学部だったら、高校のうちにやっといた方が、後は楽だろうけどね」


「マジかー。春休みにでも、探してみようかな。ゴミ拾いとかでも、良いんでしょ?」


「どうなんだろうね。私の知り合いは、何回か老人ホームに通ってたけど。猫村さんは?何のボランティアしてるの?」


「そうですね。市で募集しているボランティアに、参加してる、感じです」


「あー、なるほどね。それならすぐ参加できて、いいかもね」


 話は、ボランティア活動や大学受験の話で盛り上がった。


「そういえば、いっつもウチらの家の方から帰ってるけど、たまには猫村さんちの高森の方から帰ったら?いっつも遠回りで、可哀想じゃん」


 1人の生徒の言葉に、うさぎは慌てて首を振る。


「いえ、いつものルートで、大丈夫です。私、いっつも1人で帰ってるので、こうやって大人数で帰るの、少し憧れがあって。それに、三年生の方々とは、あと少しの時間しか、一緒にいれないので。少しでも、長くいれるように、こっち回りが、良いんです」


 照れながら言ううさぎに、女子生徒達は目を潤ませる。


「どうしよう。後輩がくそかわいい」


「古谷っちー、高校卒業したくないよー」


「まじで留年だけは止めてね」


「私、幼稚園からずーっと聖華だったから、本当の意味で卒業するの、初めてなんだよね。寂しいな。ずっと同じ景色、見てたからさ。ずーっと一緒だった友達もいるしさ」


 一人の女子生徒が、寂しげに笑う。


「そんな事言って、どうせ大学も実家から通うんだろ?」


「うっ!バレたか」


「聞いてるぞ。志望大学、俺の母校なんだって?期待してるぞ、後輩」


「言わないでー!ギリB判定なの!やばいー。もう2週間しかないよー」


「もう足掻いても無駄だ。無心で赤本でも解いてろ」


「わー!」


 古谷の後輩を目指すという事は、M大学だ。うさぎと同じ志望大学である。来年の今頃は、自分もこんな風になっているのだろうか。受験を目前に控えて、焦る先輩を微笑ましく眺めながら、こんな時間が、楽しいなあと、うさぎはしみじみ噛み締める。中学の頃は味わえなかった、普通の学校生活を過ごせる事に、改めて、場を用意してくれた周りの人々に感謝した。




「じゃあな。試験勉強がんばれよー」


 最後の一人に別れを告げて、古谷は「さて」と、スマホを取り出す。


「どうしました?」


「谷川呼ぶぞ。後ろ、あ、振り返るなよ。気付かれると厄介だ。ずっと、つけて来てる。さっきの外国人の女。このまま家に帰って、居住がバレてもやばいから、偶然を装って、車で谷川に拾って貰う事になってる」


 いつの間に、そんな遣り取りをしていたのか。そして、後ろを見れないので何とも言えないが、後をつけられていたのかと思うと、少しぞっとした。


「谷川、そこのコンビニの駐車場にいるって。このまま進むぞ」


「はい」


 程なくして、コンビニの前の道に着く。そこで、知らない女性に声を掛けられた。


「優生、久しぶり!」


「あれ?あさみ?今日は仕事早かったんだ」


「最近ずっと6時上りだよ。働き方改革ってやつ?颯太もいるよ。車乗っていきなよ。一緒に帰ろ」


 とても自然に、彼女はうさぎ達を誘導してくれた。颯太とは、谷川の事である。美しい黒髪の、とても健康的な、はつらつとした女性だった。鍛えているのか、きゅっと細く引き締まったウエストが印象的だった。

 車は、いつもの谷川のハイエースではなく、黒のアルファードだった。運転席には谷川がいて、笑顔で手を振っていた。


「おつかれ、うさぎさん。ストーカーに付き纏われてるって?」


 車に乗り込むと、谷川はおどけた口調で言ってくる。


「私、でしょうか?相手は女性ですし、古谷さん目当てでは?」


 うさぎの言葉に、助手席に乗り込んだあさみも、振り返って「ねー?そう思うよね」と、同調する。


「いや。あの目は、俺じゃない。うさぎを見てる」


 古谷はそう言って、うさぎを見る。


「まあ、まだ理由は分からないけどな」


「とりあえず、車出すぞ。せっかくだから、どっかで飯食ってこうぜ。うさぎさんは、大丈夫?」


「大丈夫です。テスト前ですけど」


「えー?それってどうなの、先生!」


「大丈夫じゃね?学校でもテスト勉強してなかったし」


「えー?じゃあ、何かちゃちゃっと食えるもの食って、帰るか。場所はちょっと離れた店にするよ。いいね」


「オッケー。温野菜の店にしようよ」


「えー?またー?まあ、良いけど」


 あさみと谷川の軽快なやり取りに、親しさを感じる。


「こいつは、火野あさみ。俺らと大学時代の同級生で、谷川の未来の奥様」


「どうもー。うさぎさんの話は、良く二人から聞いてるよー。谷川の未来の嫁、かっこ仮ですー。よろしくね!」


「あ、よろしくお願いします。今日は、ご迷惑掛けて、すみません」


「いいのよ。優生の、大事な人なんでしょ?そしたらもう、ファミリーよ!」


「そうだよ、いつでも頼ってよ!俺達いつだって、力になるからさ」


「ごめんな、二人揃うと、よけい暑苦しくなるんだ。単体だと、だいぶマシなんだけど」


 熱い二人に代わって、古谷が謝る。


「いえ。なんかとても、力強いです」


 車が走り抜ける。自転車を引いたナタニアが、歩道からこちらを見つめていた。その表情からは、何の感情も読み取れなかった。






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