38話 卒業試験はこれで終わりです
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6月2日。現在19層目を走破している所だ。この階層に出るスコーピオンもこっちの前衛が危なげもなく処理している。何も問題はない感じだな。
今日の朝に潜り始めて、今日中に最下層まで行く感じだな。5月の何日かからゆっくりと来た可能性もある為、6月1日に卒業試験通知を貰うんだ。それが卒業証明の引き換えとなる。
道が解っているんだから速攻で終わらせるよねって話なんだ。もうウルフで小銭を稼ぐのにも限界を感じていたからな。まだ装備の換装が終わっていない人も居るんだけど。
結局鉄鎧を買うだけの金額が貯まらなかったのか、わざと買っていないのかは解らないが、皮鎧の人も何人かいる。普通は足りているはずなんだよ。銀板が5枚もあれば買えるだろうからな。
無駄遣いをしたのかもしれないけどな。良いお値段がする食べ物もあるし、武器の方に金を使ったのかもしれない。武器も高いのは高いからな。両方を買う金額は流石に無かったのかもしれない。
なんせ1年間も経たずに卒業しようとしているんだからな。普通はあんなにガンガンとは進めない。アナベル様様である。負傷しない斥候とは便利なものなんだよ。
普通は召喚モンスターをフルに使って、索敵、罠発見をして、入れ替えながら下へ下へ進んでいく。罠を見つけられたのであれば、罠外科の人間を使って解除する。そして、召喚モンスターを温存して、進むんだ。そう授業で習った。
授業はあれだ。受けていたが、殆ど役には立たなかった。得られた知識もあるが、大体はラットルやその他弱い召喚モンスターを前提とした授業だからだな。
強いモンスターを引けた私にとっては必要ない知識だった訳だ。そもそも強いモンスターを引ければ、どんどんと階層を潜っていける。強ければ強いほど顕著になる。
アナベルはどうだったのかと言うと、10段階に分けるとするのであれば、6とか7を引いた感じなのだ。私の評価では7だったんだが、アナベルの評価は違った。
高くても4だろうと言っていた。世界は広いらしい。アナベル以上の強さを誇るモンスターは五万と居るらしい。ハヌマーンと同格レベルに考えていたんだけどな。
全体的に私の戦力としては最高値でラクシュミーの5らしい。それ以外はヴァンパイアバロネスとハヌマーンが4、サイクロプスとキングウルフが3だとの事だ。
そんなことある? って戦力なんだがなあ。もっと強いという事なんだろうか。ダンジョンとは解らんものだな。もっと強敵が居るという事なんだから。
この世界のダンジョンに出てくるのか解らないが、もっと強いモンスターは居るんだそうだ。私に勧めなかったのはダンジョンでは呼べない可能性があるからと言うのと、対価を払いきれないというのが原因らしい。
強い召喚モンスターはそれなりの対価を要求される。私で払いきれない物、又はそもそもこの世界にない物を要求されるとどうしようも無いからな。
そんなモンスターが相手に出てきたら堪ったものではないんだけど、ダンジョンが攻略不可能の物を出すことは無いらしい。最高峰の戦力であれば突破できるという難易度の物はあっても、攻略自体が不可能なダンジョンの生成はしないんだそうだ。
まあそんなことをされたら、ダンジョンで地上が埋まってしまう訳なんだがね。そうならないのは世界がそうしているからなんだろう。多分だがね。授業では習わなかったからな。この辺もアナベルから聞いたことだ。
さて、20階層目へ行くための階段までたどり着いた。潜り始めて1日でここまで来た。採取もしなかったから余裕だな。流石に採取をしていたらもう少し時間がかかっただろうな。
「おう、お疲れさん。卒業のシーズンだが、ちゃんと卒業試験の通知書を受け取っているか? 受け取っていない場合は取りに帰ってもらわないといけない規則になっているが」
「大丈夫だ。俺たちは通知を受け取ってからダンジョンに潜っている。皆持っているはずだ。確認して欲しい。ほら、皆1列に並べ並べ」
通知書を持って列に並ぶ。通知書と引き換えに卒業証明書を手渡されるわけなんだが、山積みの証明書がある。何度も往復して運んだんだろうなあ。苦労がうかがえる。
「おう次、通知は持っているな。ならこれと交換だ。受付に見せろよ。そうしたら卒業だが、8月に入ってから見せても卒業させてくれねえからな。早めに卒業しておけよ。おう次」
卒業証明書を貰った。後はこれを受付したところに持っていけばいいだけだな。それで探索者学校を卒業したことになる。長かったな。途中からがもの凄く長かった。
その後、皆が卒業証明書を貰って、此処で1泊していく。ここは安全地帯だからな。交代で寝る必要が無くていい。多分だが、此処まで1日で来るパーティーはなかなか無いだろうからな。
「皆、聞いてくれ。俺たちはこれで学校を卒業する。卒業したらまずは都市を移動する。馬車を貸し切って10日ほど離れた場所で探索者業をしようと思っている。それに異議のあるやつは居るか?」
……異議は無し。馬車で10日ほどか。どのくらいの規模の町かは知らないが、探索者の仕事が沢山あると嬉しいよな。まずは情報収集からだろうが。
「それでだ。荷物の整理なんかもあるだろうから、6月7日にここを卒業する。その日に寮を出てくれ。卒業の証明の書類はまた別だから気を付けろよ。6月7日までに交換しておくように」
そうだな。着いたら次の日には正規の証明書に変えてもらわないといけないな。急いで変えておいた方が良いな。後でとなると面倒なことになりかねないからな。
「それからが俺たちのパーティーのやることだ。ダンジョンを攻略して、アーティファクトを手に入れるぞ。そうしたら俺たちの未来は安泰だからな」
そうだな。アーティファクトが出れば、未来は安泰だろう。安泰を私は拒否するが。ダンジョンに潜りたい。それ以外に道はない。楽しんで行かないとな。




