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異世界へ逝き損なったニートと貧乏OLの同居生活  作者: 都々木 上ル
第1章 アサヒ君と私が同居するに至った経緯
3/6

出会いとテレパシーへの目覚めは同時だった

ミホちゃんの心の声は、〈〉で括ってある時はアサヒに話かけている時で、括っていない時はただの心の声という分けで書いています。

7月と言えば夏服セール。


だけど私は今、おもちゃ売り場に来ている。

目的は愛する姪、ヒマちゃん(と上司の子供)の誕生日プレゼント探し。


正直、私費をはたいてまで上司の子供にプレゼント買いたくないんですけど、上司には嫌われたくないし、先々平和に暮らすための先行投資だと思うしかない。


それからもちろん夏服も買うけどねーこの後。やっぱり自分へのご褒美って大切だと思うし。

女性たるもの、常に自分を美しく保つ努力をしなくちゃいかん。


―すみません。


ぬいぐるみ売り場を眺めてたら、声をかけられてしまった。

きっと私が恐竜ゾーンのど真ん中に陣取っていたからだろう。

都会の狭いお店では、他の人に気を配りながらお買い物をするのがマナーだ。

私は横の親子に一言誤りながら、あわてて一歩脇へ下がった。

すると気まずく感じたのか、その親子は売り場を見ずに直ぐにどこかへ行ってしまった。

都会では、気持ちよくショッピングするのもなかなか大変だ。


―すみません。


あ、そんな事を考えてたら、ぼーっとしてしまった。

もう適当にこのぬいぐるみ買ってお茶にしようかな。

これ何サウルス?知らんけど、男の子ってみんな恐竜好きでしょ。知らんけど。

あ、でも高い。3980円もするんだ。


―すみません。そこの、嫌々ながら上司の子の誕生日プレゼント選んでる人!


え!?

その時初めて自分を呼ばれていると気づき辺りを見回すが、私を呼んだと思しき人はいない。

ただ家族連れの客が、それぞれのお買い物を楽しんでいるだ、け…?



ちょっと落ち着こう、自分!!

あまりキョロキョロしていたら不審者扱いされるかもしれない。

ここは特に子供の多い売り場なんだから、不審者だと思われたら通報もあるかもしれない。

逮捕ダメ、絶対。そんなことになったら、人生が詰む。

ヒマちゃんにも会わせてもらえなくなるかもしれない…。


―あの、すみません。いい加減無視するのやめてもらっていいですか?


なんだろう、どこかから声をかけらてるのは分かるけど、周りを見回しても誰かがわからない。何これ、幻聴?もう絶対にヤバい人じゃん。マジで逮捕案件だよぉ~。


逮捕される前に売り場から自主退場しようと思ったら、必死な声で呼び止められ、思わず足を止めてしまった。


―あー----、待って、お願い待って、今あなたしか頼れないんで!!お願いします、すみません。客観的にはめっちゃ怪しいのは分かってますけど、怪しい者じゃないんで。

と言うか、お姉さん、オレの声どうやって拾ってるんですか?他の人には全然聞こえていないのに。


その時私は初めてゾッとする事実に気が付いた。

私は先から言葉を発していない。なのに、私の買い物の目的を分かっている人がいる…。


〈す、すす、すみません。あなた、どうやって話してるんですか?〉


―いや、すみません、オレもさっぱりなんですよ、その辺。とりあえず、目が覚めたら身動き取れないし、誰もオレの声聞こえないみたいだし。マジで泣きたいって思ってたところに、お姉さんの心の声が聞こえて来たからあわてて呼び止めたって感じです。


〈え、ごめんなさい。訳が分からないし、一切納得できない説明ですけど。   取り敢えず困ってるって事ですね。テレパシーで会話するって事はそちらは地球外生命体さんですか?〉


私は気が動転して、取り敢えず何かを言わなければという義務感からくだらない質問を絞りだした。この辺は仕事で鍛え上げられた根性なのかもしれない。


―あ、違います、申し遅れてすみません。オレ、あ、私はシダ アサヒと申しまして、人間です。怖がらせちゃってホントすみません。


あ、人間なんだ。よかった~♪


―よかったです。バカみたいだし信じて貰えないかもしれないんですけど、今日の朝、異世界転生の儀式をしていましたら、失敗しちゃったみたいで、目の前が真っ白になって気づいたらここにいました。

多分オレって今、ぬいぐるみにとりつかれてる感じなのかな?いや、オレがとりついてる?

どちらにせよ、誰に声かけても聞いてもらえないし、気づいてもらえないから泣きそうになってたら、お姉さんの声が聞こえてきて、助けてもらうならお姉さんしかいないってピンと来たんで、声かけちゃった次第です。


え、何この中2な話…。

この人中学生なのかな、大人だとしたら結構痛いなぁ…。

もっとマシな嘘は無かったのかな。


―すみません、お姉さんの心の声ってオレにダダ洩れなんで、さすがにオレも傷つきます。

ちなみにオレは、成人済みです。


心の声勝手に聞かれてるの!?うわ、やりずらいわ~。とりあえず謝っておこう。

〈傷付けるつもりはなかったんですが、ごめんなさい。心にもない事を言ってしまって。〉

いや、元々心の声なんだから、心にも無いって事はないでしょう!何言ってんだ自分?

人を傷付けておきながら、リカバリー下手か!!


―アハハ、お姉さんが考えてる事全部聞こえてるんで、悪気無いのはなんとなくわかりました。

今までの流れから何となく察しろよとは思いますが、現状オレに語りかけモードじゃなくてもお姉さんの心の声聞こえちゃってます。

不可抗力とは言え、勝手に心の中覗いちゃってるみたいですみません。


〈あ、いやこちらこそすみません。〉

相手の正体はまだ全く掴めないが、なんとなく憎めない笑顔で笑っている気がした。

だから私は少しだけ安心して、少しだけ大胆になってしまったのかもしれない。


〈あの、こんな場所でずっと立ち止まってるのも不自然なので、取り敢えず店出ませんか?〉


―はい、ぜひお願いします。じゃあ、とりあえずオレを買ってくれませんか?

お金まで出させて、重ね重ねすみません。

あと、オレはアサヒです。


顔を上げると、手のひらサイズのティディベアと目が合った。その目はまるで命が吹き込まれているかのようにクリクリの目で不思議に私を見つめている。

ぬいぐるみの山の中から、私は迷わずそのティディベアを手に取ったてレジへ向かった。


―すいません、そいつじゃないです。


どうやら目が合ったのは、私の思い過ごしだったらしい…。

〈あ、すみません。アサヒ君ってどれですか?〉


―キリンのゾーンのすぐ横の、あ、それじゃない。それの上の方、もう1つ上です。

はい、アタリ!


こうして私は何かザウルスと、背中が小物入れになっている小さなティディベアを買って店を出た。


―それの名前、何ザウルスでもないですよー。トリケラトプスです。


どうでもいい勘違いを指摘されるのはちょっとウザいしはずかしいな…。

さてはこいつ、空気読めないやつだな。


―いや、失礼な。頭いいやつと言ってくださいよ。一目で恐竜見分けられるんだから。


〈頭いいやつが異世界転なんて、やろうと思うわけないじゃん。〉


―アハハ、それを言われると痛いなぁー。でも実際、不思議な事が起こった訳だから、異世界転生はやってみるに値する実験だったって事ですよ。

IQが10違うと話通じないって言いますけど、多分オレとお姉さんってそんな感じなんで説明しても分からないと思います。


イライラすんな~、コイツ。

〈捨てるよ?〉


―マジでごめんなさい!!オレは、空気読めない中二病です。

お姉さんに痛い所つかれて、つい向きになっちゃいました。

土下座してお詫びするんで、捨てないでー----!!


〈今回は許してやろう。それから、私の名前はお姉さんではない。ミホさんと呼びたまえ。〉


―はい!ミホ様!!

ミホ様は優しいです、最高です、オレ一生ついていきます!!


はぁ~現金なやつ。なんか疲れたなぁ。

なんか色々聞かなきゃいけない事ある気がするし、買い物はもういいや。


この時ヒマワリちゃんのプレゼントを買ってない事なんてとっくに忘れていて、私は受け止めきれない現実を少しでも受け止める作業をするために足早に帰路についた。


ティディベアことアサヒ君にはキーチェーンがついていたので、カバンにひっかけて連れ帰った。

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