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番外編 6話 好きな人は……

「ルーイ先生の好きな人って誰なんでしょうか」


 部屋に入ってきて早々、ものすごい話題をぶっ込んできたな。思わずお茶を準備する手を止めてしまったじゃないか。


「フェリスさー……いきなりそんな話始めたらリズが驚くじゃん」


「すみません。詮索すべきではないと分かっていますが……どうしても気になってしまいまして」


 発言の主はシャロン・フェリスさん。王宮警備隊二番隊所属の兵士だ。彼女は現在『とまり木』の方たちと一緒に行動をしている。リアン大聖堂の様子にも詳しく、クレハ様の調査にも同行していた。

 本日の調査は無事に終了し、クレハ様とルーイ先生がレオン殿下に報告を行っている最中である。私は控えの間で待機しているクラヴェル兄弟のためにお茶を用意していた。そんな時、疑問を口にしながらフェリスさんが入室して来たのだった。


「あー……懺悔室のあれだけじゃお前は分かんないよな」


「お前は……というと、やはり皆さんには周知のことだったのですね。クレハ様まで理解していた様子で驚きました」


「そりゃ、普段からわかりやすかったからね。そこにいるリズだって知ってるよ」 


「リズちゃんまで!?」


「先生の行動をしばらく注視してごらん。そうすれば、彼の想い人はすぐに分かると思うよ。今まで決定的な言葉を口にしていなかっただけで、先生の態度はかなりあからさまだから」


 ルーイ先生の好きな人か。私でも知ってる人……そうなると思いつくのはひとりしかいない。セドリックさん……だよね。でも、彼との関係は前に否定されていたはずだ。

 フェリスさんはどうして急にそんな事を気にし始めたのだろう。懺悔室がどうとか言ってるから、リアン大聖堂で何かあったのかな。


「でも、いきなりだったからちょっとびっくりしたよな。こう言っちゃなんだけど当人同士の問題だし、俺らの反応なんて気にしなくてもいいのにさ」


「それだけ相手に対して本気なんだろう。先生は自由奔放に見えて、周囲への気配りをきちんとされる方。我々が心配していたのも気づいておられたはずだ。だからこそ懺悔室でのあの告白なんだろう。女神の代理を務める司教の前での言葉……先生の覚悟を感じた」


「あの先生にそこまで想われているなんて……一体どこの御令嬢なんでしょうか。きっと美しくてお優しくて聡明な方なんでしょうね」


「顔はいいし、優しいし、頭もいいけど……御令嬢とは限んないよ」


「えっ?」


「完璧に見えて結構抜けてるしね。天然というか……でもそこが親しみが持てて可愛いところだとは思います」


「俺らがここで名前を出すのは憚られるけど……。フェリス、思い出してごらん。ヒントは服を借りた人だよ」


 これ絶対セドリックさんだ!! セドリックさん本人は先生との噂を否定していたけど、先生の方は頻繁に彼との関係を匂わすような事をしていた気がするもの。本当にリアン大聖堂で何があったんだろう。気になる。


「服っていえばさ……あの借りたヤツを汚したって話は本当だったのかな」


「さあね。でも、私が貸した物は綺麗な状態で戻ってきてるよ。アルバビリスもその日のうちに王宮に返したと聞いてる」


「故意じゃなければ、貸した服を汚したくらいであの人は怒らないと思うけどな。既にあげたくらいの感覚でいそうだもん」


「だよねー、よほど酷い使い方でもしたのか……」


「服なんて着る以外にどんな使い道があるっていうんだよ」


 私は完全にお茶を準備する手を止めて、兄弟の会話に聞き入ってしまっていた。断片的にしか理解できていないけど、先生はセドリックさんの服を汚してしまったという話みたい。そういえば、先生はセドリックさんから定期的に服を借りていると言っていたな。


「先生は好きな人の服を常に身に付けていたんですよね。そんなの自分だったらドキドキしちゃうだろうなぁ」


 つい思ったことを口に出して言ってしまった。先生とセドリックさんでは体格差が結構ある。主に身長面で。先生がかなり大きい方なので仕方ないのだけど、レナードさんやクライヴさんの方が体型が近いのに、先生はずっとセドリックさんをメインに服を借りているようだった。サイズが合わないと分かっているにも関わらず……

 きっとセドリックさんの服だということに意味があったんだろう。好きな人の存在を近くに感じていたかったのかもしれない。


「……ドキドキした結果、ズリネタにでもしたんですかねぇ」


「レナード!!!!」


 またレナードさんがルイスさんに頭叩かれてる。この光景は何度も見た。大体いつも先生とセドリックさん絡みの話をしている時に、レナードさんは叱られてるんだよね。

 


「お前はさぁ……何回同じ事繰り返すんだよ。周りを見て考えて発言しろや」


「いたた……だってさぁー……好きな人の服を言えない汚し方したって考えてたら、それが思いついちゃったんだもん」


「思うだけで口にするな。バカ」


「結構核心を突いてるんじゃないかな。後で先生に聞いてみようよ?」


「まだ言うか。リズ、このバカの事は無視していいからな。忘れて」


 ズリネタってどういう意味だろう。ルイスさんが怒ってるから良くない言葉なんだろうな。忘れろって難しい。私も後で先生に意味を聞いてみようかな。先生なら明るい調子でさらっと教えてくれそうだもん。


「フェリスもごめんな。こいつほんとデリカシーないからさ」


「えっ? すみません……何でしたっけ? 考え事してたら聞き逃しちゃったみたいです」


「……あ、そう。聞いてなかったのならいいよ。くだらないことだから」


 フェリスさんはズリネタを聞いてなかったのか。彼女の反応でどういった類いの単語か予想しようと思ってたのに……


「あの……もしかして、先生の好きな方って『とまり木』の誰かなんでしょうか。そして……女性とは限らない?」


「ああ、それを考えてたのか。悪いけど、これ以上はノーコメントです。推理頑張ってな」


 フェリスさんが正解に辿り着くのは時間の問題だな。服を貸している人ってだけで、ほぼ特定できちゃうから推理をするまでもない。 

 私は兄弟とフェリスさんの会話に夢中になってしまっていた。用意していたお茶はすっかり温くなってしまっていた。これは淹れ直しをしなくてはならないな。

読んで頂き、ありがとうございます。ブックマーク、評価⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎などして頂けると喜びます。感想、レビューもお待ちしています。どうぞよろしくお願い致します!!


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