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魔王と使い魔

立て込んでて更新間あいちゃいましたがまた更新頑張ります(;´・ω・)

 しゃがんで生み出した2体の魔物に目を向ける。


 鼠の魔物も蝙蝠の魔物もパッと見たところ普通の鼠や蝙蝠とは差異はなさそうだ。強いて言うならば一回りほど大きい気もするが個体差と呼べる範囲内だろう。

 それでも魔物なので普通の生き物とは異なり、体内には魔石と呼ばれる核を持っている。そのため多少なりとも魔力を操ることができ、身体能力を強化できるので少なくとも同種族よりは強力だ。

 結果としては使い魔としては魔物のほうがより適していると言えた。


 どちらもおとなしく私の指示を待っているかのように見える。


「その場で一回り」


 試しに命令してみると鼠も蝙蝠もくるりと回った後元の姿勢でこちらを見上げてくる。

 小動物が従順に従ってくれるその姿はなかなかに可愛い。

 生まれたばかりで身綺麗であるということもあるだろうけれど。


 とはいえこの子たちは偵察用、替えの効く存在として生み出したのだから可愛がって情が沸いてもいけない。

 鼠を手に乗せてリリスに向き直る。


「この子たちをあなたの使い魔にできる?」

「ご主人様の生み出した存在を支配するなんて恐れ多い!」


 正直これまでの反応からそういってくるであろうことは何となく検討がついていたけれど、あまりにも予想通りの反応過ぎて思わず苦笑する。


「その私が頼んでるわけだし、そもそもこの子たちはそのために生み出したんだから」


 そういってリリスに鼠を押し付ける。

 恐縮しきりといった様子のリリスにさらにダメ押しで付け加える。


()()()()()()もあるし、これは命令。リリス、その子を使い魔にしなさい」

「!仰せのままに」


 いっその事命令した方がリリスに余計な心労を与えることもないだろうと強めに命じると彼女ははっとした表情を浮かべた後即座に跪きそう答えた。

 こういった仰々しい対応も控えるように命令しようかとも思ったがとりあえずは保留。


「それでははじめます」


 そういって彼女は跪いた姿勢のまま掌の上の鼠に視線を向けて魔力を通しはじめる。

 今までは不可能だったがそんな魔力の流れも見て取ることができるようになっていた。

 外部から魔力の影響を受けている鼠は特に抵抗する様子もなくなすがままだ。


「『――(**)』」


 そして最後に彼女が何か一言唱えると魔力の流れが止まる。

 どうやらこれで終わりの様だ。

 魔法の一種なのだろうけれど知識のない私には聞き取ることができなかった。

 生み出されたばかりの彼女にその知識があるというのも不思議な話なのだけど。



「終わりました」

「そう、これでその子は貴女の使い魔になったの?」

「はい、そうなります」


 リリスの手の上で大人しくしている鼠に特に変わった様子は見られない。

 しかし、


「その場でジャンプ」


 私が命じても鼠は動くことはなかった。

 私の支配下から離れたようだ。

 リリスに視線を向けると彼女はこちらの意図を察し


「その場でジャンプ」


 私と同じように命令すると今度は鼠はその場でジャンプする。

 使い魔になることで支配権を上書きされたということだろう。


「使い魔ってどれくらいの数を扱えるの?」


 今度は蝙蝠を手渡しながら訪ねると蝙蝠を使い魔にしながら彼女は答えた。


「使い魔にする時と命令時に魔力を使うだけですので数だけならいくらでも大丈夫です『――』」

「じゃあこの子も追加でお願い『魔物創造』」


 そういって新たに生み出した鼠の魔物を彼女に渡す。

 数に制限がないのならばついでにもう一つ実験だ。


「わかりました」


 新たな鼠の魔物は彼女から魔力を流されると前の2匹とは異なり、抵抗するかのように身じろぎする。

 しかしそれもすぐに弱まり


「『――(**)』」


 同じように彼女の使い魔となった。

 すこし不思議そうな表情を浮かべる彼女に尋ねる。


「前の2匹と今の子で何か違いはあった?」

「そうですね、今の子は前の子とは違って抵抗してきたので少し魔力を多めに使いました」

「なるほど」


 大体は私の予想通りだ。


「何か違いがあったのでしょうか?いえ、本来であれば抵抗されるのが当たり前ではあるのですが」

「うん、最初に伝えた通り初めの2匹は貴女に使い魔にしてもらうために生み出したんだけど今の子はそれを意識しないで生み出したんだ」

「そうでしたか、抵抗されはしましたが手間は然程・・・。所詮は鼠ですので」


 こちらの意図を察したリリスが付け加える。

 最初の2匹が無抵抗で使い魔とされたのはそのように生み出したからだとして、そうでなければどうなるのかを試した訳だが結果としては抵抗はしたものの使い魔とされることに変わりはなかった。




 つまり、魔王が生み出した生物とはいえ他者からの支配を受けないということはない。



 支配権を奪われた使い魔から逆にこちらの情報が洩れる、といった可能性もあるわけだ。

 運用には多少なりとも注意が必要だろう。


(とはいえ体に名前が書いてあるわけでもないし使い魔からこちらを特定することは困難だろうけど・・・)


 それでも万が一のことを考えるならば使い魔を生み出すのは迷宮の外のほうがいいかもしれない。

 二部屋しかない今はまだ無用の心配だろうけど気には止めておくべきだろう。




 一先ず注意点が分かったところで次は運用面だ。


「今更だけど使い魔を使って周りを知らべるっていうのはどうやるの?」


 当然ながら鼠や蝙蝠とは会話できないし、文字を書いたりもできない。

 それでどうやって情報を得るのか今更ながら確認する。


「使い魔にした生き物の視界を借りたり遠隔で指示できたりしますので直接目視といった形になりますね」

「じゃあ試しにここからさっきの部屋の階段の上を使い魔を使って見てみてくれる?」

「わかりました」


 ものは試しと早速実演してもらうことにする。

 彼女がうなずくと1匹の鼠が開け放たれたままの扉から隣室へ走っていった。

 遠隔でも指示が出せるということだったし特に声に出さなくてもいいみたいだ。


「今階段を登っています」


 目を閉じた彼女が告げる。多分視界を同化させているのだろう。


「いま登り終えました」

「何が見える?」


 実況する彼女に尋ねる。

 地下で生み出したのだから彼女は階段の上の事は一切知らないはずだ。周囲を十分に認識できたのであれば使い魔の偵察能力というものは申し分ないといえるだろう。

 今更彼女の能力を疑っているわけでもないけれど、実際にどんなものか試す分にはちょうどいい。

 彼女は実際に鼠がそうしているかのように目を閉じたまま首を左右に巡らせる。


「木造の・・・小屋、いえ納屋でしょうか?あまり物はなさそうですが随分とボ、年季が入っているように見えます」


 彼女の直截的な物言いに苦笑する。

 流石に面と向かってそう言われたことはなかったが、客観的に見て私の家はボロ小屋だ。

 少なくとも魔王の住居と言われても誰も信じないだろう。

 彼女も自分の主がそんなところに住んでいるとは夢にも思わないだろう。


 まぁとりあえずそれだけ見て取れるのならば使い魔の能力も問題はない。


「うん、問題ないみたいだね。もういいよ」


 私がそう告げると彼女は何度か瞬きしながら目を開ける。

 やはり視界が切り替わるのに多少なりとも違和感はあるのだろうか。


「上の建物は何だったのでしょうか?」


 そんなことを考えながら彼女の様子を見ていたら彼女が訊ねてくる。

 ボロいと言いかけたのが主人の家だと知ったら卒倒しそうな気もするし一瞬事実を伏せようかとも考えたけれど、真上な訳だしどうせすぐに知れることなので正直に告げることにする。


「えーっと私の家」

「いえ?」

「うん」

「いえというのは、その、お住まいということでしょうか?」

「そうだね」

「えっと、その、古風でえーっと趣きのある?素晴らしきご住まいかと・・・」


 卒倒したりはしなかったものの絞り出したかのような表現で持ち上げてきた。

 古風で趣きがある家と聞くと確かにあまり悪くなく聞こえるのだから上手い表現だ。


「別に気にしなくていいよ、私の家がボロ小屋なのは本当だし、それに」


 恐縮しきりといった様子の彼女に笑いかける。



「これからはこの迷宮を私の城にしていくんだから」

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