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魔王と淫魔の部屋

ポイントありがとうございますー!

まだまだ序盤ですが更新頑張っていきます。

 住むにあたってまず何が必要かと考える。差し当たり寝台に収納といったところだろうか。

 迷宮内に居住空間があるというのもなんだか変な気がするがひとまず気にしないでおく。


「ちょっとまってね」

「わかりました」


 ひとまずサキュバスの彼女には待ってもらい大まかな部屋を造ることにする。

 頭にざっくりとした部屋を思い浮かべながら能力を使った。


「『迷宮創造』」


 最初に部屋を造った時と同じ位の魔力が消費されたことを感じる。

 ほぼ同様の規模の部屋を造ったのだから案の定といったところか。

 今いる部屋に新しく扉が生み出された。

 彼女と話している間ほったらかしてしまっていた足元のスライムを拾い上げてそちらに向き直る。


 扉付きの部屋を想像したため予想外というわけではないが改めて扉を眺めてみると、それは何の変哲もない鉄枠で補強された木製の扉だった。

 しかしまぎれもなく私の魔力によって生まれたものでもある。

 なかなかに不思議な気分だった。


 とりあえず扉を見つめていても仕方ないのでスライムを抱えたまま扉を開けて部屋に入ると、そこには元居た部屋と同じような部屋があった。

 ただしこちらの部屋は一角が四角く盛り上がっており寝具を置けば寝台として活用できるようになっている。さすがに寝具まではこの能力で生み出す事は出来なかったようなので後で外で用意して持ってくる必要があるだろう。


 そして脇には宝箱が一つ置いてある。

 歩み寄って調べると特に鍵がかかっているわけでもなく中身は空であった。

 まあこれも収納代わりに自身で生み出したものなので特に落胆などはない。むしろ何か入っていたらそちらの方が驚きだ。


 しかし寝具は作れなかったが扉や宝箱は生み出す事ができるというのもなんだか妙な話だ。

 材質の差ということもないだろうし迷宮の設備の範疇に含まれるか否かということなのだろうか。

 それはそれで()()()()()()()()()()()()()()()という疑問が残るが、考えたところで答えは出ないのが分かっているので考えないことにする。


 それはさておき、ひとまず最低限の役割を持った部屋ができた。

 私に続いて部屋に入ってきていたサキュバスの彼女に向き直る。


「とりあえず大まかな形は作ったけどこんな感じで大丈夫?寝具は作れなかったからあとで用意するけど。ほかに必要なものがあったら言ってね」


 そう告げると彼女は部屋を一瞥して不思議そうな顔を浮かべる。


「部屋の広さの割に寝台が一つしかないようですが・・・?」

「二つほしいの?」


 それはもしや淫魔だしそういうことを致す用にということだろうか?


「二つと言わず六つぐらいは置けるのではないでしょうか?」

「六つもいるの!?」


 確かに置くだけなら置けるだろうが、そうするとあとは何とか歩ける隙間があるだけの部屋になってしまう。そんなにたくさんの寝台で一体ナニをするつもりなのか。


「えーっとそれはさすがに手狭なんじゃないかな」


 淫魔の生態にすこし慄きながら答える。

 それに彼女には悪いが表舞台に立つつもりのない私としては当面の間は餌という名のお相手を連れ込ませるわけにもいかない。


「ご主人様は慈悲深いのですね。寝台があるだけでも十分な厚遇かとおもいますが。」


 そこまで言われてようやく双方の認識にズレがあることに気づいた。


「ごめん、言ってなかったね。ここは貴女の部屋だよ」

「ええ、わかっております」

「うーん、そうじゃなくて貴女だけの部屋って意味」

「・・・私だけの?」

「うん、他の誰かと相部屋にするつもりはないよ」


 すると彼女は部屋を再度見渡してしばし茫然とした後、急に片膝をつく。

 彼女の急な行動に私が目を白黒させていると、


「生み出されたばかりでまだ何も功績をあげていない私のようなものの為、迷宮に専用の部屋を与えていただけるなど望外の光栄です。この身の忠誠を改めてご主人様に捧げます」


 そう真剣な眼差しで告げてくるのだった。


「えっと喜んでくれたならなにより?」


 私としては大したことをしたつもりはないのでその温度差に違和感しかない。

 個室をもらうことはそんなに喜ばしいことなのだろうか?無制限にとはいかないが魔力のある限り部屋はいくらでも生み出せるのだけれど。


 私が今一つ状況を理解できてないようなことを表情から見て取ったのだろう、彼女は微笑みながら立ち上がる。


「ご主人様、通常魔王というのは何百、何千あるいは何万もの配下を従えています」

「そうだね」


 直接見たことがあるわけではないが伝え聞く魔王像とはそういうもので、実態も伝聞とそう違わないだろうと頷きつつ相槌を打つ。


「そのすべてが迷宮内にいるというわけではないですが、それでも相当数の魔物が迷宮にいることでしょう。そのすべてが部屋を与えられていると思いますか?」

「あー確かに」


 それでは迷宮は部屋だらけになってしまう。集合住宅のような迷宮が頭に浮かび思わず苦笑する。


「それじゃあ普通の迷宮だとそのあたりはどうなってるんだろう?」


 流石に迷宮での魔物の生態のような話は聞いたことがない。

 最初に彼女が想像したように複数の魔物での相部屋のような感じだろうか?


「そうですね、私も知識にあるだけですがある程度の大部屋で雑魚寝といったところでしょうか。あるいは迷宮内の通路でそのままというケースもあるかと。もっともこれはその魔物の種族などによっても変わってくるでしょうが」


 予想よりもさらに雑な扱いの様だった。

 生み出されたばかりの彼女になんでそんな知識があるのかは謎だが、そんなことを言ったらそもそも服を着ていたことや会話が成り立つこと自体も謎なので今更だ。


「よって迷宮に専用の部屋を与えられるのは限られた魔物、腹心であったり配下の中でも要職に就くものであるのが普通なのです」

「なるほど」


 確かに私もこれから配下を増やしていくとしたら一々そのすべてに個室を用意してあげることはできなくなるだろう。

 そして途中で扱いを変えることは不満の種になりえる。それならば初めから無理のない範囲を決めて一定の扱いで統一するべきだ。

 能力で生み出された魔物が反旗を翻すことはありえないだろうがどうせなら気持ちよく働いてもらいたい。

 いずれは私自身は勇者というかレナの糧となって討たれるつもりだけれども、この壮大な自殺劇が成る前に生み出した魔物たちのそのあとの事も考えておく必要があることに気づいた。

 当初は同じように勇者の糧となってもらうことに何の疑問もなかったけれど、こうして知性を持った相手と会話を交わせば当然情も湧く。いくら私でも推しの為に死んでくれとまでは言えない。


 まぁそのあたりの事はおいおい考えていけばいいだろう、少なくとも今はまだ死ぬつもりはない。


「参考になったよ、ありがとう。まぁ貴女は最初に生み出した知性ある存在ってことで特別だね」

「ご主人様・・・!」


 感極まった様子の彼女に苦笑する。

 いささか好感度が高すぎやしないだろうか。いや、もちろん嫌われているよりはよほどいいのだけど。

 しかしその忠誠心も好意も能力によって生み付けられたものだと思うとちょっと複雑な気分だった。


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