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少女、魔王になる

 どうしてこうなったのだろうか。

 そもそも私は今まで何をしていた?


 どこまでも果てのない暗闇の中、立っているのか座っているのかもわからない。

 あるいは落ちているようで浮かんでいるようでもあった。


 ただ目の前にはその暗闇よりも尚深く黒い、自分でも矛盾した表現だとは思うが「光」が存在した。




 ―おめでとう!キミは選ばれた―




 その黒い光を意識したとたん空間全体に響くような声が聞こえた。

 それは子供のようで老人のよう、男性のようで女性のような不可思議な声で語りかけてくる。


 選ばれた?何に?

 そう尋ねようにも声が出ない。




 ―キミならきっと僕を楽しませてくれると信じてるよ―




 こちらのことなどお構いなしに声は続ける。

 楽しませる?そもそもあなたは誰?


 それまで何をしていたのかも思い出せずここがどこなのかもわからない。

 そんな疑問だらけの頭の中に、それでも謎の声は染み渡るように響く。




 ―与えた力のことは自然にわかるようになっているよ―

 ―どれだけキミがキミのままでいられるかは知らないど―




 そんな不穏な言葉とともに意識が薄れていく。




 ―頑張ってね、新しい魔王(僕の玩具)



 最後にそんな声を聴いた気がした。





「っ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!」


 意識を取り戻すのと頭に激痛が走るのは同時だった。

 思わずその場に倒れ蹲る。

 まるで脳みそに焼けた火箸を突き刺してかき回されているかのような痛み。


 ―ウバエ!―


 そして脳裏に響く憎悪。


 ―オカセ!!―


 それは押し付けられた魔王の力とやらの思念だとなぜか理解できた。

 新たな魔王として為すべきことを為せと命じてくる。


「――ッ!」

 痛みに耐えるのに必死で、いっその事意識を飛ばしてしまいたいのにそれも許されない。


 ―コワセッ!!!―


 自身の意識を消してすべてをこの悪意に委ねたら楽になれるのかもしれない。

 一思いに殺してほしいとすら思える激痛、だが。





 ―勇者ヲ、コロセッッ!!!―





 彼女を殺せ?





「・・・ふ、ざける、な・・・ッ!!!」


 痛みにちぎれ飛びそうになる意識をつなぎ止めながら絞り出す。


 それだけは許せない。

 失われるのが自分の命だけなら、もしくは他の誰かならこの苦しみから逃れるために従ったかもしれない。


 だけども彼女には、彼女だけには手を出させない。


 ―シタガエッ!!―


「う゛る、さいッ!」


 ただの思念如きが命令するんじゃない!


 ―オマエハ、マオウダッ!―


 たとえ魔王になってしまったのだとしても。




「わ゛たしはっ、わたしだっ!!」





 この日、世界に新しい魔王が生まれた。

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