表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/134

第9話 初ダンジョン攻略

0時になった瞬間、突然激しい地震が始まった。

マンションの屋上に登っているせいか、半端なく揺れている。

魚肉ソーセージをぷるぷるさせているかってくらい揺れてる。

階下では住人の悲鳴や食器の割れる音、家具が倒れる音が聞こえてくる。


まじで始まったよ。怖いけど、空中ジャンプできる俺は屋上がいちばん安全だからな。

しっかり何が起きてるか確認しないと…。

視力3.0で地上を見渡すと、所々に根のような隆起物が蠢きながら伸びているのが見えた。

あれもダンジョンの一端なのか。

所々で、根に巻き込まれて家屋が傾いている。


十数分は続いただろうか。

ようやく地震が収まった。このマンションはどうやら無事だったようだ。

周辺の家屋も、根に巻き込まれなかった所は殆どが倒壊せずに残っている。

さすが地震大国ジャパン!

この田舎町には、どうやら目立ったダンジョンは生まれなかったらしい。

急いでベランダから部屋に戻ると、テレビをつけた。

あらゆる番組は中断されて、この巨大な災害についてのリポートが始まっていた。

「こちらは東京都です!な、なんということでしょう。新年が開けると同時に、巨大な地震とともに、この、根のような、動物の触手のような、き、気味のわるいものが、あちこちに張り巡らされてきています。今もまだ伸びています。そして、あぁ!あれはなんでしょうか。突如山のような何かが盛り上がってきております。え、こちらにも迫って…きゃぁぁぁぁぁぁぁ!」

ブチッ

「リポーターさん!リポーターさん!…ぜ、全国の皆さん。これは未曾有の災害です。速やかに避難所に避難してください。現状、地震による津波は観測されておりません。繰り返します…」

「こちらは大阪市です!先程大きくせり上がった…黒い金属質のような山ですが、ここに大きく穴が空いております。中からはひんやりとした風が吹いてきています。…あれ、なにか、生き物のようなものが出てきています。人型・・?顔が・・豚?武器をもって…。ひっ、目があった。に、逃げろ!逃げろ!逃げ…ぐぎゃ」

「皆さん、『山』が近くに発生した場合は、決して近づかないでください。所により、特に人口が多い地域では、『山』に空いた入り口から、異形の肉食生物が発生して人々を襲っているようです。避難所までの経路に『山』がある方は…」

「これは、あのアナスタシアという女性が予言した通りの現象が起きているのではないでしょうか…。あの山や洞窟が『ダンジョン』で、異形の生物が『モンスター』ということなのでしょうか。まるで信じがたい事実です。市民の皆様は、決してあれらを退治しようとせず、屋内に避難して救助を待つようにしてください」

「政府からの声明は未だありません。首都では全国と比べても特大に大きな『ダンジョン』が発生したようで、多数の政府高官の死者が出ている模様です。今後自衛隊は、独自の指揮系統で救助活動ならびに『モンスター』の駆除を行う予定です。市民の皆様は…」

「全国において、『ダンジョン』が発見、報告された地域ですが、200以上に上っているようです。どうやら、世界規模で同様の現象が起きているようです。ライフラインが途絶している地域は、すみやかに避難所へ…」


なるほど、よく分かった。

やっぱ災害時はテレビだな。

都心部に行くほど被害が大きいようだ。

インターネットで検索すると、早くも『全国ダンジョンマップ』なるページが作成されている。

結構見やすくレイアウトされている。

…さすがにまだ発災後数十分だ。早すぎるよな。

予め用意していた人がいたってことだろう。

アナスタシアさんの予言を真剣に受け止めた人たちか、『もうひとり』の関係者か。


…まぁいいや。


どうやら、ここから10kmほど離れた場所に、スタンピードが起きていない小型ダンジョンがあるようだ。浅層では、恐らくモンスターもそう強くないのではないかと思う。

とにかく、テレビに出てたオークとか、強大なドラゴンに襲われる前に、一刻も早くレベルを上げることが安全に直結するだろう。行ってみよう。ダンジョン!


道に出て、アイテムボックスからカプセルバイクを取り出した。

黒塗りの大型バイクだ。なかなか格好いい。

タイヤはかなり分厚くサスペンションも高性能で、悪路にも耐えそうだ。

フルスロットルでは300km/h以上出るらしい。


ちなみに俺は原付きの免許しか持っていない。

…大丈夫、非常事態だから!

丈夫そうなヘルメットとアンダーアーマーを頼りに、俺はバイクで疾走した。


----------------------------------------


途中の道ではあちこちで道路の轢断や事故、渋滞が起きていたが、『超集中』を駆使してなんとか潜り抜けてやってこれた。ダンジョンには皆近づかないようにしているのか、近づくにつれて移動しやすくなり、人も見かけなくなった。


バイクを駆ること20分程。

ダンジョンと思われる構造物の前に到着した。

テレビで見たとおり、壁が黒光りしている。入り口からは冷たい風が吹き出してきている。

思わずごくりと唾を飲み込んだ。

これはうじQのお化け屋敷よりだいぶ怖いな…。

だが、準備は万全に整えてあるのだ。

俺は覚悟を決めてダンジョンに潜っていった。


中は薄暗いが、ほのかに壁が光っている影響で、なんとか見える。

気配察知・気配遮断をフル回転させながらゆっくり進む。

今の所ほぼ一本道だ。

うー、怖い。

一匹!一匹倒したらささっと帰ろう。


100mほど歩いたところで、1つの小さな気配を感じた。

息を殺して近づくと、いた。水色の…スライムだ。

よし、ついてる。最初が人型でなくてよかった。

まだこっちには気づいていないようだ。

『閲覧』してみたが、ステータスもオールGだ。

金剛棒を扱いやすい1.5mほどに伸ばし、『身体強化』、『火事場の真剛力』を発動させた。

よし、や、やるぞ!

『韋駄天』により一息のうちに接近すると、


「おるぁぁぁッ!」

全力で叩きつける。

格闘センス+のおかげか、棒を用いた力の使い方は直感的に分かる。

スライムに棒がめり込んだ後、ぷるぷるボディは衝撃で木っ端微塵にはじけた。


「はぁ、はぁ、やったか」

どうやら再生はしないようだ。倒したらしい。

すぐに、すっと身体が軽くなるような感覚を覚えた。


おお…

つっ

ついにっ

ついにっ

念願のレベルアップの時が来たようだ。

ステータスを確認すると、一気にレベルが3に上がっている。

さすがは経験値4倍だ。

身体に力が漲ってくる。

特に魔力は…明らかに容量が増しているのがわかる。加護:大の恩恵だな。

『ファイア』と念じると、掌から拳大ほどの火球が放たれた。


「へ、ふへへへ」

思わず口元がニヤける。

うん。あとちょっとだけ、ちょっとだけね。

…危なくなったらすぐ帰ろう。

気配察知を全開にして、スライムを求めて再びダンジョンを進み始めた。


次もまた、スライムを単体で発見した。

金剛棒をぎゅっぎゅっと握りしめ、増大した筋力を確認する。

用心して『火事場の真剛力』のクールタイムは終えてきているが…。

『身体強化』のみを使用し、勢いよく接近すると、棒でスライムをぶっ叩いた。

『ぴぎゅっ』

先程みたいに木っ端微塵にはならなかったが、真っ二つに割れたあと、そのまま溶けて消えた。


ぅしっ!また一撃だ。

先程同様に、また一段、身体が軽くなった。

レベルを確認すると、4に上がっている。

『身体強化』のみで一撃で倒せるとなると、効率は良さそうだな。

『火事場の真剛力』は、思わぬ強敵との遭遇にとっておくべきだろう。

次にいこう、次。


今度は2匹のスライムが群れてうごうごしているのを発見した。

スライムへの恐怖心はだいぶ薄れてきてはいるが、出来れば反撃はまだ受けたくない。


…そろそろ魔法でも倒せるかもしれないな。試してみよう。

気配遮断を継続した状態で、10mほど離れた場所から『ファイア』を放った。

一匹に見事命中し、大きく炎の柱が上がった。

もう一匹がこちらに気がついたようで、のそのそと向かってきている。

一瞬の硬直はあったが、エイムし直して続けざまに『ファイア』を放ち、命中した。

大きく燃え上がると、もう一匹もその場で動かなくなった。

10数秒程経過して、火柱が消えたのでじりじり近づいてみると、両方とも溶け切って消滅しようとしているところだった。

火属性はこいつらには相性がいいようだな。

またふっと身体が軽くなり、消費した魔力も全快したようだ。

レベルは5に上がっている。

どんどん身体が頑丈になってきているのが分かる。

そのくせ、体重は増えていない気がする。

経験値ってのは、モンスターの持つ魔素のようなものを取り込んでいるのかもしれないな。


こいつは…楽しいぞ。

完全にゲーム感覚だ。

しかもレベル上げの対象が、俺自身ときている。


まずはこのフロアにいるスライムは俺が全部狩り尽くしてやる。

今使える5属性の魔法は色々試してみよう。

魔力が上がれば、念動力も実用的になってくるかもな。

レベルが上がりにくくなってきたら、ドレインタッチを試してみよう。

ぅし、行くか!


こうして太一は、早くも完全にレベルアップ中毒になっていた。

スキルガチャの時と同じである。

傍からみると、ちょっとヤバめの顔になっている。

もはや気配を消すことはせず、察知を全開にしてダンジョンをどんどんと進んでいった。

やっとファンタジー実動化、です!

主人公の住んでる地域は、だいたい中国地方の辺りです。いずれは地名も出すかもしれません。


それでは、第2章もよろしくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 主人公が体験してるのは日本の1/1 0:00に起きてる現象とは思うんですが 日本の0:00の時点で外国では既に1/1になってる箇所があると思うのでそのニュースで大騒ぎになってるんじゃな…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ