第6話 宣告
みーんみんみんみん…
じーこじーこじーこ…
紛うことなき、8月である。
今年の夏は異常に、いや最近毎年言ってる気もするけど、今年は本当に異常に猛暑だ。
特に都心部で暑い日が多く、昼間は50度を超えている日もある。
テレビではまたニュースキャスターがハイテンションで捲し立てている。「これは太陽からの熱照射だけでなく、探知できないほど地下深くからの放熱が影響していると考えられています。ここのところ、都心を中心にアスファルトが溶けている道路が多発していますし、地中の微生物が多数死滅していることが確認され…」
ブチッ
聞いてるだけで暑くなるわ。
ただ、人が多い地域と、俺が住んでるような片田舎では有意な温度差が見られていることは確かだ。
今外は…35℃か、十ニ分に暑いが。
しかーし、室内はすこぶる快適だ。魔力いらずで謎起動する快適空間製造くんが、温度、湿度、明度、BGM、ついでにアロマまで謎原理で俺の気分に合わせて調整してくれているためだ。
今は水色の照明とソーダの匂い、エモポップなインストルメンタルで涼しいひと夏を演出中だ。
あぁ~、ダメ人間製造くんに改名すべきじゃなかろうか…。
もともとダメ人間みたいなものだけど。
飲料水製造くんで作ったマンゴージュースもどきもいい感じで完熟だ。
アメとムチにすっかり骨抜きにされたせいで、今月はこんな感じで派遣業は殆どサボってしまっていた。もう平和な世の中で十分すぎるくらい超人化しただろ…。という気持ちがあり、ガチャ中毒状態であったのが少し薄れてきている事も理由の1つだ。
8月のガチャ資金はコンビニバイトのみで、玉将の冷やし中華など外食の贅沢もかさみ、7万円分のガチャとなった。
『こんにちは太一くん!今月はちょっとひもじい感じだね!
今日はガチャの後に大事なお知らせがあるから、すぐアプリを消さずに待っておいてね!
さぁ今回のガチャは~
C:取得経験値増加 +5% ③個
C:アイテムクーポン下 ②個
R:アイテムクーポン上
R:装備クーポン下
以上の結果となりました!またプレイしてね♪』
うわ!スキルゼロだ!しょっぱい…。
まぁ7回分だとこんなもんかな。
『えー、テステス、テステス。
突然だけど、スキルガチャ管理人であるワタシは、実は八百万神という神様なんでっす!
ここまでガチャを引き続けられたってことは、ちゃんと自分で働いたお金でガチャを引いてきたってことだね。とっても偉いよ。
そんな最後に残った三人の内の一人である太一くんに、フライングで1月からの地球の行末を教えるね!』
……へ?急にアプリが喋り出したと思ったら、やおろず…神?
神様だったの?
『1月1日を以て、原因はわからないけど、地中深くで地球のエネルギーを吸って成長したダンジョンたちが一斉に地表に出現するんだ。運悪く人が多い地域に発現した場合、ダンジョンの膨隆に直接多くの人々が巻き込まれ、ダンジョンはみるみるエネルギー飽和し、モンスターが直接地表に生み出されるモンスタースタンピードが起きる可能性がある。人間界は大混乱に陥るだろうね。
君達三人の言葉を信じてくれる人はなかなかいないと思うし、レベル1の君達はまだまだ無力だから、最初はとにかく自分自身が死なないように頑張ってね。
さぁ地球の未来やいかに!
じゃ、あと4ヶ月、準備がんばってね♪』
プチンと勝手にアプリは落ちた。
俺はしばらくの間、アロマ空間で硬直していた。
…な、な、な、な
なんだって?
ダンジョン…?モンスター…スタンピード?
それ、第3次大戦並に人類やばいんとちゃう?むしろもっとやばい?
そういう大事なことはもっと早く言えーーー!
じゃなくて出来れば言ってほしかったですぅーーー神様ーーーー!