第3話 全力バイト
1月給料分ガチャで引けたスキルは、『気配察知』、『超回復』、『アイテムボックス』だ。
『気配察知』に関してはさほど大きな変化は感じられないが、意識を集中させれば、人の足音が聴こえてくる前にその存在感のようなものを感じ取れるようになった、気がする。これは今後練習が必要だろう。
『超回復』については、僅かな休憩、睡眠により体力や状態が速やかに全快するようになった。ケガや病気まで回復するのかは分からないが、副作用もろもろ怖いので試していない。なんにせよ非常に有用なスキルだ。その気になればバイトの掛け持ちなども多少は無茶が利くだろう。
「アイテムボックス』にいたっては、非日常を絵に書いたかのようだ。何もない空間から手品のように物を出し入れすることができる。しかも、中では経時的変化がないようで、1日経っても冷凍食品が凍ったままだったし、むいたリンゴも黄色いままだった。…今日から冷蔵庫は電源落とそう。
大きさや重さは俺が持って運べるものに限られるようで、車や家などは収納できなかった。生きている生物もまた不可能なようだ。容量は俺の魔力量に依存するとのことだが、魔力Gでも十分な容量がありそうだ。ファンタジーでは王道だろうが、実際に現代人の俺が所有してみると、個人の手には余る神スキルである。
少しずつたまってきた『クーポン』シリーズについても気にはなっている。
今後どれくらい手に入るか分からないが、少なくともSRの装備クーポン上などは厳選して選ぶべきだろう。Rクーポン含め、近接武器から重火器、魔導鎧、タリスマンなど多岐に渡っているようだ。前半はうっかり見られたら銃刀法違反なんてもんじゃない。そもそもこの平和な日本でそんなものが必要になるのは、第3次大戦が始まった時くらいのものだろう。しばらくは封印だ。
2月に入ってから、コンビニバイトは深夜帯に限定し、日中は派遣のバイトを入れるようにした。
それにより15万程の余剰金が捻出できるようになっている。
時代に逆行する明らかな過労で、本来ならぶっ倒れているところだが。
昼休憩や派遣終了後に30分ほど『超回復』すれば、すがすがしい朝を迎えたような気分となり、体力的には問題なかった。問題はこんなに一生懸命働いたことなど今までなかったため、精神的に続くのかどうかというところだが。
正直俺は既にガチャ中毒のような状態にあると思う。それはそうだろう。回すたびに世界が180度変わるのだ。
本当は今すぐにでもサラ金や闇金に手を出したい欲求に駆られているが、こんな奇跡を起こせる神様のような存在がどこかで見ているような気がして、地道に稼ぐこととした。
この選択が正しかったことが、後に明らかになる。
2月末の給料日がやってきた。派遣は日当だが、我慢してコンビニの給料日に合わせている。
15万円分の『回す』ボタンを押す手には、もはや一切の迷いはない。
てか回したすぎて震える。
『今回のガチャ結果は~
C:取得経験値増加 +5% ⑤個
C:アイテムクーポン下 ③個
C:食糧製造くん
R:アイテムクーポン上
R:装備クーポン下
R:スキル『瞬歩』
R:スキル『状態異常耐性』
SR:スキル『消費魔力半減』
UR:魔神の加護
以上の結果でした!またね♪』
うお!URなんてあったのか!そうとうレアなんじゃないか?
しかも空白だった加護!加護ってガチャで手に入っちゃうもんなんだ‥。
‥ん?魔神とな?