第2話 検証
ステータス画面が突如目の前に現れた元日の深夜。
長時間ネットをしていた影響もあり、これが現実なのかどうか判断できずひどく頭が混乱しながらも、
最初に画面に現れた『アプリをダウンロードしてね』という言葉を思い出し、すぐにパソコンにインストールして、眠りについた。
そして朝。
今日はコンビニバイトの日勤帯シフトが入っている。
50過ぎの店長と、近くの高校に通う女子高生の佳奈ちゃんが一緒だ。
「渡瀬さん、元々ちょっと老け顔ですけど、今日は一層ひどい顔になってますよ?パーツパーツは悪くないのにもったいないなぁ。さてはママ使ずっと見てたんでしょ。今年のオモロかったですもんね」
客がいない時間に、さらりとひどい言葉を織り交ぜながら佳奈ちゃんが話しかけてくる。
「え、あぁ、まぁちょっと考え事をしててね。ママ使は見てないよ」
えーうそーありえなーいと佳奈ちゃんが隣でぶつぶつ言っている。
その姿をとらえながら、『ステータス閲覧』と念じた。
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田中佳奈(17)レベル:1
種族:人間
加護:なし
性能:体力G, 筋力G, 魔力G, 敏捷G, 運G
装備:なし
スキル:なし
持ち物:なし
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ドラモエみたいな画面がほんとに見えるよ・・。
昨日のガチャって本当に本物なのか・・。
「渡瀬くん、ちょっと荷物運び入れるの手伝ってくれないか」
店長が話かけてきた。
よし、ここはあのスキルを試すことで、この現象が現実なのか決定づけよう。
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スキル『火事場の馬鹿力』 10秒間だけ、筋力が1.5倍になる。10分間のクールタイム有り。
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「はい店長。冷凍食品ですよね。全部運んでおきますので」
「そうか、悪いね。あれで結構重いから、無理せず何度かにわけて運んどいてくれよ」
こう店長に云われた。
運動不足な俺ならいつもは3回程にわけて運ぶ量だが・・。
『火事場の馬鹿力』と念じると、全身が熱くなり、四肢体躯に力が漲ってきた。
時間制限があるため、すぐに搬入を開始し、すべての荷材を余裕で一度に運ぶことができた。
地面に降ろす直前に効果が切れ、思わず腰が砕けそうになるが、幸い無事着地させられた。この事も、スキルの効果をむしろ強調している。
これは本物だ。ファンタジーが現実になったんだ!
物心ついて以来、俺は初めて高揚感という感情を覚えた気がした。
今後は、ガチャを生活の中心に据えていくと決めた。
毎日呑んでいたビールやつまみは一切封印し、コンビニの廃棄弁当をもらって生活費を限りなく浮かせた。シフトも相当増やし、次月の生活費を担保した上で1月末には10万円のガチャ資金を手にすることができた。
ドキドキの2回目ガチャの機会がやってきた。
『アプリダウンロードありがとー太一くん♪ガチャを回すのかな?』
クレジットカードは登録してある。10万円で10連の『回す』ボタンを、ふるえる手で押した。
これに生活を捧げると決めたが、まだ10万円を一瞬で手放すには勇気が必要だ。
目の前で目まぐるしくチャチな演出が流れている。
思わずゴクリと生唾を飲み込んだ。
『今回のガチャは~?
C:取得経験値増加 +5%
C:取得経験値増加 +5%
R:アイテムクーポン上
C:アイテムクーポン下
C:取得経験値増加 +5%
R:スキル『超回復』
C:取得経験値増加 +5%
C:アイテムクーポン下
R:スキル『気配察知』
SR:スキル『アイテムボックス』
以上の結果でした!またプレイしてね♪』
これまた衝撃的な内容となった。
『アイテムボックス』って、例のあれか!?