第16話 〇〇が仲間になった!
日間ローファンタジー、まさかの一位。ガクブルです。
多数のブックマーク、評価による応援をいただき、ありがとうございます!
いただいた感想も、有り難く参考させていただいています。
出来るだけお答えしていきたいと思います。温かく見守っていただければ幸いです。
今後ともよろしくお願いいたします。
アナスタシアの後について施設内を歩く。
いずれ相見える様な気はしていたが、まさか彼女との初対面が兵器工場になるとは思っていなかった。
不法侵入をちょっとだけ怒られた後、すんなりと幹部用のフリーパス認証をしてくれた。
彼女はここの立ち上げ支援のために来ており、トップはまた別にいるようだ。
ダークがかったブロンドのさらさらヘアが腰のあたりまで伸びて、ふりふりと揺れている。
「応接室です。どうぞ」
にっこりと可愛らしいスマイルを添えて、ソファを勧めてくれた。
歳は20歳前後に見える。…まぁ俺たちスキル持ちはあんまり外見年齢がアテにならないが。
紅茶を出してくれた後、彼女も机を挟んで正面へと座った。
クセのないアッサムティーだ。おいしい。
ちなみに『意思疎通』のおかげで、俺は全言語が分かるし話せる。
オールリンガルだ。すごい!そんな言葉はないけど。
…URである必要があったかと言うと悩ましいが。
「さて。改めて、お会いできて嬉しいです。渡瀬さん。
お話ししたいことは山程あるのですが…何から話したものですかね…」
俺としても、『他二人』のこの一年間余りについては、最も興味がある内容の一つだ。
まずは、彼女がぽつぽつとこれまでの事について話してくれた。
彼女の名前はアナスタシア・ミーシナ。24歳。ロシア第2の都市であるサンクト・ペテルブルクで生まれたが、幼い頃に両親と死別し、孤児院で育った。義務教育が終わると、アルバイトをしながら政府奨学金を得てちゃんと大学まで出て、駆け出しの新聞記者をやっていたそうだ。
うん、つまり、俺よりだいぶ偉い。
一昨年の大晦日は、インフルエンザにかかって家で暇を持て余していた。
通販サイトをぽちぽちしていると『ヤオロズの開運グッズ大特集』という妙なセールを見つけた。なぜか無性に商品のデザインが気に入りかたっぱしからチェックしていたところ、0時0分に『開運ガチャ』という商品をチェックし、あのページに飛んだということだった。
…俺のときよりも、だいぶあからさまだな、神様。
すぐにガチャの魅力の虜になり、よりいっそう仕事に精を出した。正社員なので兼業は禁止で、奨学金の返済などもあり、月のガチャは4-5回程度だった。
だが、あの頃は毎日がとても楽しかった。
そんな中、俺と同じ8月に神様からダンジョン到来の危機についての宣告を受けるとともに、とあるスキルを授かったという。
「『ダンジョンマップ』というURスキルです。ここには、ダンジョン攻略のためのあらゆる情報に加えて、ある種の『予言』に近い事実までもが含まれていました。
ダンジョンに関して、私達には4つの重大な指針があります」
彼女は気持ちをリセットするためか、ひとくち紅茶を口に含むと、神妙な面持ちでそれらを語った。
ひとつ
「全てのS級ダンジョンを攻略すれば、日本の瀬戸内辺りの座標に潜む『ゲート』にエネルギーが供給されなくなり、その存在は弱体化し、地表へとあぶり出すことが出来る」
ふたつ
「S級ダンジョンから伸びる『根』がA級ダンジョンに及べば、A級ダンジョンはS級化する。
S級ダンジョンが多ければ多いほど、ゲートが完成して地球が滅亡する危険性が高まる」
みっつ
「何万というダンジョンに囚われた無数の神々を解放していけば、いつかはその集合体の加護を受ける『一人』に、ゲートを破壊する程の『力』をもつ『ユニークスキル』が顕現するだろう」
よっつ
「そのためには、全人類が協力してC級ダンジョンを潰していく必要がある。
また、その数わずか数千程度だが、ダンジョンへの封印を免れた神々は1/1を境に人々に加護を授ける。加護を受けたものが多くの魔素を取り込めば、B級ダンジョンを踏破する戦士にもなりうるだろう。ただし、それらには大前提として、『魔素核から魔導兵器を生み出す』スキルを得た『一人』が、彼らに戦う術を与える必要がある」
「以上が8月に私が知らされた事実です。ちなみにゲートの存在に関しては、ダン協の一部幹部以外には、公表はしていません。パニックを助長させるだけですから。
…楽しかった毎日は、私の中で一変しました。
なんでこんな冗談みたいな未来を、私だけが知らされなくちゃならなかったのかと、その時は正直、神様を恨んだものでした」
ほんと、よくそんな絶望的なtodoリストを突き付けられて頭がおかしくならなかったもんだよ。
「…私は初期の頃に、テレポートというUR魔法スキルも授かっていました。距離に応じて魔力を消費しますが、行きたいと願った場所へと転移が可能です。
楽しくて楽しくて、行きたかった国々へこっそりと何度も旅行したものでした。日本にも来ましたよ。お寿司美味しかったです。今ではもうなかなか、食べられませんけど。
…URスキルには、運命を変える力があるそうです。
私にしか出来ない、私に与えられた役目があるのとするならば。
それは、地球や人類を滅亡から回避させるために、あなた達2人をつなぎ、導くことなのだと考えるようになりました」
「…もしかして、政府へ3日3晩抗議活動をして捕まったっていうのは・・」
「はい、勿論身の回りの人たちへ少しでも備えて欲しいという気持ちもありましたが…。
本当の目的は、少しでもマスコミに大きく取り上げられることで、『あなたたち2人に私を認識してもらうこと』でした。どちらかが私にコンタクトをくれることを願って。実際、私が記者であったことも関心を引き、世界各地のメディアで報道されていることを確認しました」
………すごいんだな、この子。
狂ってるとか言われて、社会的に多くのものを失っただろうに。
「幸いアレクが、ご存知もうひとりのブラジルの男性ですが、その…ブラックな企業でシステムエンジニアをしていたそうですが、ノウハウを駆使して私の連絡先を調べ当てて、連絡をくれました。
釈放された後は彼と合流し、1/1に向けて水面下で準備を進めてきました。今彼はB級ダンジョンが発現した全ての国に魔導兵器を普及させるために、各国を飛び回っています、文字通り。彼は飛行系スキルを持っていますから」
俺が間の抜けた表情をしていたからだろうか。
こちらを見ると、彼女はふふ、と笑った。
「私も今では、事実が確認されたことで祖国から正式に謝罪を受けましたし、念の為にロシアのA級ダンジョンから離れていた人々からは多くの感謝をいただきました。
ですから…ありがとう、そんな顔をされなくても大丈夫ですよ。
…ゲートは日本に現れる。
なんとなく『最後の一人』は日本にいるような気がしていました。渡瀬さんを探し当てることもできたかもしれません。でも、『力』であるその人には、きっと、最後まで一生懸命、沢山のガチャを回し続けることに専念してもらったほうが良いだろうと思いましたので」
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この世紀末な世界に対する事実が色々と分かった。
彼女の覚悟を聞いて、さすがに俺も、もはや自分が生き延びればいいやとは思っていない。
地球がS級ダンジョンだらけになったり、ゲートとやらに飲み込まれるのは、阻止したい。
ひと休憩して、今後についての作戦を聞いた。
まず俺たちの大目標の第1段は、ロシアの東部に位置するA級ダンジョンを潰すことだ。
なぜなら、中国のS級ダンジョンと非常に距離が近いからだ。
もしここがS級化すれば、地球が終わってしまうリスクが一気に高まる。
第2がブラジル、最後が海に囲まれて最も根が届きにくい日本だ。
「具体的にはこれからどうすればいいんだ?いきなり俺と…ミーシナさんでA級に乗り込むとかは、ちょっときついんじゃないか?」
「ふふ、年下ですし、アナスタシアと呼び捨てでいいですよ。私も太一さんと呼びますね。
勿論いきなりA級は自殺行為です。
太一さんは既に早くもC級をひとつ落としていますよね。すごいです。誰が?と下手に注目を集めるのは良くないと思ってこれも公表を伏せるようにしましたが。
まずは私と太一さんの2人で、日本のC級群攻略やモンスター駆除支援を始め、更なるレベルアップを図る。強力な加護者を見つけたら仲間に引き入れる。そうして戦力を固めて、安全に大阪のB級ダンジョンを落とす。これを小目標としましょう」
最初が綺麗な女性と2人きりでのスタートってのはちょっと緊張するけど。
まぁそんなことを言ってる場合ではない。
だがなんだか、冒険っぽくなってきたな。おらワクワクすっぞ。
「了解だ、明日から宜しくな、アナスタシア。
じゃ、そろそろ遅くなってきたし、俺は一旦家に帰ろうかな。続きはまた明日にしよう」
「ええ、私もとても有意義な時間でした。それでは行きましょうか」
「…ん、どこへ?」
「よろしければ、太一さんのご自宅へお邪魔させて下さい。これからは仲間ですから。
共に行動させてください。これでも一応はスキルホルダー。足手まといにならないよう頑張りますから。お互いの細かい能力の話なども早めにしておきたいですしね」
「…え…っと、ここの運営とかはいいの?」
「ええ、むしろ私は太一さんと合流するために日本にいましたから。基地を作れば、必ずひと目見に来てくれると信じて、スキルホルダーの来訪を監視していたのです。
運営はまぁ、皆さんがしっかりやってくれますよ」
どええええ
今回も会話のみとなってしましました。
が!設定解説に関しては概ね今回で最後です。次回からは冒険が始まります。
早く無双バトルしたい!
今後ともよろしくお願いいたします。