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砂と塩  作者: ヨシトミ
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第37話 連合の箱

第37話 連合の箱


「上位でやってただけあって、戦術や作戦には詳しい。

けれど、感情を出し過ぎるのは軍師として致命的、

あれじゃちょっと揺さぶれば簡単、そう敵に思われてしまう」


そう俺が続けて話した。

ゴールデンルーラーさんも、フランベルジュさんも笑った。


「お疲れさまです、ホークスさん、フランさん。

ホークスさん、上位でって…どっちのことだか」


ボイチャに入って来た、ゴールデンルーラーさんが言った。

絶対回線の向こう側でにやにやしているに決まってる。


「『ケミカルテイルズ』は下位連合らしいからな」

「毎回フェスで優勝してる下位連合て…笑える!」


フランベルジュさんもぷっと吹き出した。

背後でザッザッカランカランという、

飲み物を用意している音をさせながら、ゴールデンルーラーさんは言った。


「ちょうど3人なのでふたりに連絡。

短期の人の他に、オリジンさん、フォスルさん、グラトンさんが、

このクエイベ終わりに移動って連絡が来たよ」


オリジンさん、フォスルさん、グラトンさんの3人は後衛で、

その全員が昔からいる、古参の連合員だった。

彼らは戦力こそ高くはない、あの低戦力な銀鷹丸さんより低いぐらいだ。

しかしオリジンさん、フォスルさんは、応援回数が特に多い。

グラトンさんはコンボ増加スキルに特化している。


「えっ、そんな…長期の人が3人もなんて…」


フランベルジュさんの声が驚きと動揺に詰まった。


「どうせマグパイさんが知り合いに声かけて、

無理矢理にでも満員にするだろうね」

「それはいいけど、これ以上長期の人がいなくなるのは…。

どうする、ホークスさん」


ゴールデンルーラーさんも声が沈んでいた。


「…俺は銀鷹丸さんから連合を預かっただけの盟主代行だ。

次の合戦イベント期間に様子を見て、

目に余るようなら、また話し合って決めたい」



案の定、空く予定の枠には、マグパイさんが知り合いに声をかけて、

次の合戦イベントは満員御礼で迎えられそうだった。

12時、銀鷹丸さんとスマホを交換して、

俺は「銀鷹丸」として「ケミカルテイルズ」の合戦に、

銀鷹丸さんは「ホークス」として「アンブレラアカデミー」の合戦に、それぞれ参戦した。


「ケミカルテイルズ」側は、通常の参戦は自由だったので、

俺は合戦もそこそこにして、銀鷹丸さんの様子を見ていた。

敵も参戦自由の連合らしい、最初の攻撃で倒れたら寝たきりだった。


「アンブレラアカデミー」側は、奥義構成の練習だった。

けれど相手が寝たきりでは練習にもならない。

銀鷹丸さんは気を利かせて、自軍の被ダメージを増加させる奥義を敷いた。

この奥義は敵の攻撃を誘うのによく使われる。


“ホークスさん、何やってる! 指示見てないのか!”


マグパイさんから怒りのコメントがさっそく書き込まれた。


「…すごい剣幕ですわね」


これには隣に座る銀鷹丸さんも驚いていた。


「だろ?」

「最近ずっとこんな感じですの?」

「マグパイさんが来てから、ずっとこんな感じだよ。

上位ってこんな感じだったっけ?」

「やる事は同じですけど…少なくとも『ケミカルテイルズ』は違いますわね」


銀鷹丸さんはマグパイさんに返信しなかった。

あの奥義は気を利かせたのではなく、

わざとした事だったのか…。

そうだよな、銀鷹丸さんが指示を見ないなんて事はないんだから。


「あれから二郎さんの他に、移動する人が出ている。

オリジンさん、フォスルさん、グラトンさんが移動するって言ってる」


銀鷹丸さんは応援を連打しながら少し考えて、それから言った。


「ホークスさん、連合を解散しても構いませんよ」


連合解散…。

ずいぶん思い切った事を言う、銀鷹丸さんらしい。

…それもいいかも。


「俺が古参のやつらを連れて連合を出て行く、それでいいか?」

「マグパイさんの移動がないなら、それが最善に思います」


解散はいいが、俺には気になる事がひとつある。

それは連合の「箱」である。

そこには「連合記録」や「称号」として、

過去の思い出がたくさん詰まっている。

俺はこの「箱」をどうしたらいいのだろう…。

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