第26話 復讐の誓い
第26話 復讐の誓い
「クビ? 俺が? れいなんこさん、なんでだ?」
またクビかよ!
なんでこの俺がクビになる?
参戦率にも、戦力にも、スキルにも、不足は何もないはずだ。
俺は「ケミカルテイルズ」の盟主、「レイにゃんこ」さんこと、
「れいなんこ」さんに詰め寄った。
「…実は和田さんからの頼みで、ホークスには『アンブレラアカデミー』で、
長期固定連合員として、自分の後ば頼みたか言うちょった」
なるほど、俺に『アンブレラアカデミー』を指導しろって事か。
「アンブレラアカデミー」は、「ケミカルテイルズ」の姉妹連合みたいなもんだからな。
「でもれいなんこさん、俺、あそこ一度除名になってるんだよ?
どうやって戻れって言うのさ、盟主の銀鷹丸さんが許さないだろ」
「そん銀鷹丸さんと結婚したち聞いちょっ、夫婦なら何とかしやんせ」
れいなんこさんは笑って、通話を終えた。
何とかしろって…。
「良いのではないかしら? ちょうど『銀鷹』も初心者から外れる事ですし」
しかし、銀鷹丸さんはあっさりと俺の復帰を許した。
その晩は店が休みで、彼女も家にいた。
「俺を良く思わないやつらが、それを許さないんじゃないの?」
「私はあなたと結婚して、夫婦として身が固まった。
もう誰も文句は言えないのではないかしら…」
俺が座っている、銀鷹丸さんのベッドだったソファがへこんで、
隣から彼女が俺の頬に手を伸ばした。
主人に誘われたら、その妻としては断れない。
癪だな、俺の弱点を突きやがって。
これはあとでまたデッキにいたずらしてやらないと…。
今夜の銀鷹丸さんは珍しく女だった。
いつになく激しく俺を求め、愛してくれた。
…まるで俺の目を眩ませるように。
それは一体何をごまかしたいの、何を隠したいの。
誰を守りたいの。
「銀鷹丸さん、あんた誰を守ってる?
和田さんか? ゴールデンルーラーさんか? ツナサシミーさんか?」
情事の合間に、俺は息と一緒に問いかけの言葉を吐いた。
銀鷹丸さんは俺の上から見下ろして、それから目を閉じた。
「まさか。私が守る人は…ホークスさん、あなただけ」
「普通の男ならこんな手も通じるさ、でも俺は違う。
今夜はちゃんと聞きたい、誰が俺の除名に入れ知恵した?」
銀鷹丸さんはため息をひとつつくと、俺から離れて、
机の上のスマホを取って、外部チャットアプリを立ち上げた。
「…ホークスさん、私の影武者を務めるあなたなら、
これは見たことがあるはず」
彼女はスマホを俺に差し出した。
そこには管理者グループで、銀鷹丸さんから言い出された、
俺の除名についての話し合いが表示されていた。
「残念ながらこれが全て…」
銀鷹丸さんは淋しそうに笑った。
「それは建前だろ、そうする事であんたは密告者を守った」
「いいえ、密告者なんかいません。
最初から最後まで、全ては私が自分の考えで言い出して決めた事です」
俺を「アンブレラアカデミー」から除名したのは、
連合員の誰でもなく、盟主の銀鷹丸さん…。
「どうして…俺の何がダメだった?」
「あなたが少しだけ女だって事、そんなあなただからこそ、
私があなたを好きになって、愛してしまった事…」
確かに。
俺があのまま連合にいたら、俺たちの気持ちは、関係は、
必ず連合の誰かに気付かれた。
ましてや銀鷹丸さんのような魅力的な人には、心酔する連合員も多いだろう。
彼女を手に入れた俺には嫉妬と攻撃しかない。
銀鷹丸さんは職業柄、そのへんの事をよくわかっていた。
だからそうなる前に、彼女は俺の除名を決めた。
そうする事で彼女は連合と同時に俺を守った。
「ホークスさん、あなたは私に復讐しますか?」
「…するよ」
「そう、復讐も仕方ありませんもの…」
俺は銀鷹丸さんの手を取って引き寄せ、その手の甲を自分の額につけた。
「俺はきっとあんたに報いる、一生をかけて報いる。
たとえそれがあんたを傷つけることになっても、俺はあんたを守る。
俺はいつか、あんたを完全に屈服させる」
銀鷹丸さんはくすりと笑うと、俺の腰を引き寄せて挑発を始めた…。
「ホークス」としての俺の連合復帰は、次の合戦イベントからと決まった。
その前日の夜、銀鷹丸さんは連合掲示板に書き込んだ。
“明日の夜、私の家族の者が『銀鷹』の代わりに入りますので、
皆さまよろしくお願いします”




