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砂と塩  作者: ヨシトミ
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第2話 除名

第2話 除名


俺が連合を除名になる…。

ありえない。

よほど上位の連合でなければ、前衛でも戦力900万超えとなると、

連合最強のプレイヤー「無双」に相当する。

それが後衛なら上位連合でも十分に活躍できるし、

実際、俺のホーム連合は、その頂点に立つ「ケミカルテイルズ」だ。


俺が除名になった連合は、「アンブレラアカデミー」という名前で、

同じ「ケミカルテイルズ」の和田さんという、前衛連合員に連れられて入った。

「アンブレラアカデミー」は、連合員の戦力もまちまちで、

いいところ300位に入れるかどうかで、決して強い連合ではない。

だが、和田さんが特に目をかけている連合だった。


盟主は「銀鷹丸」さんと言って、捕鯨船の名前が由来とのことだった。

休憩中に外部チャットで、除名の理由を聞いてみたが、

それに対する返信はなかった。



「どうせお前のことだから、連合の女の人らにちょっかいかけたとかじゃね?」


その晩、和田さんのやってるダイニングバー「ユニティ」で、

安田が甘いカクテルをちびちびと舐めながら言った。

濃い紫のサングラスの強面で女向けのカクテルかよ。

彼も仕事終わりで、濃い灰色の三つ揃いのスーツを着崩して、

ステンレスのフレームに、黒い革張りのソファに埋もれていた。


「うわ、すげえありえる…ホークスお前出会い廚だもんな」


カウンターの内側で和田さんもにやにやとしていた。

和田さんは俺らより少し年上で、経営者だから普段カウンターに入る事はないが、

俺たちが来ると、自らカクテルを作って出してくれる。

穏やかな人だが、元はホストだったのだろう、

仕事着の黒い服がいやにチャラく見える。


「そういや加藤はどうした?

今夜こそあいつ太らせようと、いろいろ用意してたのに」


和田さんは残念そうだった。


「あいつはもう帰った、子供生まれたばっかだから、

奥さんの目もあるんじゃね?」


俺らのうち、なんとあの加藤だけが既婚者だった。

だから最近は俺と安田で和田さんの店に集まっている。


「で、その出会い廚のホークスは、なんで出会えない訳?

あのゲームならオフパコも難しくはないはずだけど?」


ゲームの運営会社のオーナー張本人である安田がにやにやした。

…そんなの俺が出会いを目的としていないからに決まってる。


男と話が合わない訳ではないけど、

女の方がより話が合いそうな気がする、

女の集団の方がより馴染めそうな気がする。

だから女の人たちに多く話しかける。

それが出会い廚に見えるのだろう。


俺の身体は男、でもその中身は少し違う。

100%、中身まで生粋の男じゃないと思う。


「しかし銀鷹丸さんもよく、ホークス除名とか決断したなあ…。

さすが和田さんの見込んだ連合の盟主だ、見事」

「銀鷹丸さんはあのゲームでは強くないけど、

俺も前にやってた別のゲームで、覇軍のマスターをやっていたよ」

「なるほど、連合運営を熟知してるって事ね…そりゃそんな決断も出来るわ」


2人がそんな話をしているうち、安田のグラスは空になり、

和田さんがそのおかわりを彼の前に差し出した。

俺はその間に割って入った。


「あのさ、和田さん」

「何だ」

「銀鷹丸さん知ってるなら、聞いといてくれないかな?

俺が除名になった理由、いきなりだったから気になって仕方ない」

「何をそんな回りくどい…本人に直接聞いてみたら?」


そう言って、和田さんは金属製のカウンターの内側からスマートフォンを取り出し、

少しぽちぽちとし、それから耳に当てた。


「あ、もしもし? 『ユニティ』の和田ですけど、そちらに赤坂さんまだおられます?

…あ、はい…わかりました、お待ちしております」


和田さんは通話を終了すると、ぐりんと首をひねって俺の方を向いた。


「銀鷹丸さんこれから来るよ」

「マジかよ」


俺は顔をしかめた。

安田はひゅうと短く口笛を鳴らした。


「へえ…銀鷹丸さん、リアルでも知り合いなんだ?」

「同業者だよ、別の街で営業しているから、

飲食店組合の集まりでも会う事はなかったんだけど、

例の別ゲーの大会で紹介されて、それからだね」


それから30分もしないうちに、「ユニティ」の前に車の停まる音がし、

ドアについた鈴がからんと鳴った。


「こんばんは」


しっとりとした柔らかな声でそう言って、店に入って来たのは、

えらく高そうな白の訪問着を着込んだ女の人だった。

…苦手だ、こういう女の中の女みたいな女は。

和田さんは彼女に一礼した。


「赤坂さん、突然呼び出して申し訳ない」

「良いのですよ、ちょうど私も休憩でしたから…。

あの、それでご用とは?」


和田さんは俺に視線を流して言った。


「ホークス、銀鷹丸さんだよ」

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