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砂と塩  作者: ヨシトミ
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第17話 暴風

第17話 暴風


近所のやつらが座敷で飲んだくれている。

銀鷹丸さんがそれをもてなしている…。

それも病人なのに。

この光景に、俺の中で何かが弾け飛んだ。


「貴様ら何病人にやらせとる! 帰りい!」


俺は海を渡り、2階の窓ガラスを殴りつける暴風になった。

怒鳴り、座卓の上の酒やつまみをなぎ払った。


「え、でも女のもんの仕事やん」

「秀忠の嫁になる人やろ? 当然やろ」

「アホか! あん人は貴様らが奴隷やないわ! お客様じゃ!」


陰口? 村八分? かまうもんか。

酔っぱらいたちを家の外に追い出し、玄関から靴を投げ捨てた。


「あの、ホークスさん…私なら大丈夫ですし」


俺の形相に銀鷹丸さんもびくびくしながら、なだめようとした。


「大丈夫じゃないだろ! あんたは大人しく寝てないと!」


彼女から料理の皿を取り上げ、腕を引いて俺は階段をどかどか登った。

そして敷きっぱなしのふとんへと沈め、押し付けた。

そんな俺の背中に白い手が、羽毛のようにふわりと乗っかった。


「寝ます、だからホークスさんも一緒に寝ませんこと?」

「やめとくよ」

「そんな気分じゃない?」

「あんたが良くなったらするよ、その時はひと晩じゅうしてやる。

へばるなよ、彼氏なら必死でついて来い」

「ま、それじゃ早く良くならなくちゃね…!」


銀鷹丸さんはうふうふ笑いながら、ふとんをかぶって鼻まで上げた。

…ずいぶんと可愛らしい彼氏だな。

和田さんどころか、銀座で勝ち上がったのも納得だ。

けれど、俺が「アンブレラアカデミー」を除名になったのには、

もっと別な事情がありそうだ。


座敷を片付け、部屋に忍び、銀鷹丸さんのスマホを盗み取る。

相変わらずの低戦力だ。

後衛の場合、戦力が応援効果にそのまま反映される。

予備のプリペイドカードはある。

おまけ付きのガチャを引いて、付いて来た覚醒アイテムをいくつか取り、

それらでデッキ内にある、コストの高いカードを覚醒させ、

進化や限界突破など、今出来る限りの強化はしておいた。


それから連合掲示板の過去ログを読んだ。

だが、「アンブレラアカデミー」の合戦は板指示だ。

誰かの発言など、その日のうちに流れてしまう。


「銀鷹」側から外部チャットアプリを立ち上げて、グループを表示させる。

ここならログは流れず、グループが存在する限り保存され続ける。

でもここは連合の卒業生も在籍している、

当たり前だが、ごく無難な事しか書き込まれていない。


もうひとつ、連合には盟主と補佐、軍師の、

盟主権限を持つ者たちのグループがあるはずだ。

「銀鷹丸」側からアプリを立ち上げて、グループ一覧を表示させる。

…やはりあった、「アンブレラアカデミー管理者会議」。


“ホークスさんは和田さんの紹介なだけあって、確かに強い。

ですが、うちの連合には合わない気がします”


俺の除名についての話し合いは、銀鷹丸さんの発言から始まっていた。

盟主個人が気に入らない、そういう事にしたいらしい。

あくまでも密告者を守るって訳か。


“えっ、あんなすごい人を除名する?”

“銀さん、それはまずくね?”


グループには現職の幹部の他、幹部経験者もいた。

話し合いは反対意見しかなかったが、銀鷹丸さんがそれを押し切った。

連合の大恩人である和田さん紹介の、しかも「ケミカルテイルズ」という、

最高の連合から来た後衛を除名する…。

あんたは本当に立派な盟主だよ。


「でもねホークスさん、男の人たちはそう思わないの」、

最初に会った時の銀鷹丸さんの説明から、密告者は男の連合員らしい。

このうち、連合掲示板や外部チャットで発言が多いのは、

補佐のゴールデンルーラーさん、軍師のフランベルジュさんの幹部2人、

それからツナサシミーさん、前衛のミラージュ城さん、そして無双の和田さん。

連合内戦力順位が10位以下の者は、

必要な連絡ぐらいで、ほとんど雑談しないので除外しても良い。


一方の女の人はというと、盟主の銀鷹丸さん、

それからもともとの無双の激闇さん、

後衛の連打女王、オリジンさんが多く発言しており、

他の女の人たちは基本的に雑談には加わらない。


俺は銀鷹丸さんとは仲が悪かったが、

激闇さん、オリジンさんとはたくさん会話した。

密告者は彼女たちの囲いの者なのだろうか。


眠る銀鷹丸さんの枕元にスマホを返す。

窓からの月明かりに青く染まった寝顔は安らかだった。

その横に寝て、抱き寄せてキスでもしてみる。


あんたは一緒に寝ないかと言ってくれた。

複雑だよ、俺はその先をどうしたらいい?

あんたに抱かれたらいい? あんたを抱けばいい?


そのまま眠ってしまったらしく、朝日に目が覚めると、

隣のふとんはなく、あんたもいなかった。


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