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砂と塩  作者: ヨシトミ
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第15話 異質

第15話 異質


「…俺を送ってくれた人だよ、できるだけ近くへって、

夜中じゅうを車で走ってくれた、だから早くここに着けた。

赤坂さんて言う…俺の大事な人だ」


俺は姉に銀鷹丸さんの事を話した。


「でも秀忠…」


口ごもる姉に、意を決して言った。

後々ずっと非難され続けるだろう、それでもかまわないと思った。


「母さんも大変なのはわかってる…けど、この人の事もほうっておけない。

俺、彼女を医者に診せに行ってもいいか?」


その時、銀鷹丸さんが俺の上着の裾をつかんだ。

そして首を横に振ると、ソファからすっくと立ち上がった。


「それは後でかまいません。

それより私も一緒に病室に行ってもよろしいですか?」

「銀鷹丸さん…!」

「ホークスさん、お母様はずっとホークスさんのことを心配していらっしゃる。

だからあの時、私に結婚をおっしゃったのではありませんか?

今がいい機会です、行きましょう」


銀鷹丸さんは俺の腕を引いて歩き出した。

姉は目を白黒させながら、その後を追いかけた。


「母さん…」


ベッドに横たわる母は口を開け、あごで息をしていた。

その間隔はもうだいぶ広かった。


「秀忠、その人は?」


伯父が銀鷹丸さんを見て顔をしかめた。

俺はそれを無視して、母の手を取った。

すると、母の目がゆっくりと開いて、どろりと視線を流した。

そして一瞬だけだが、確かに俺を認めた。


「母さん、来たよ…今日は俺の大事な人も一緒だ。

会いたがっていただろ? だから、ほら…」


俺は隣の銀鷹丸さんに目配せした。


「赤坂と申します、お初にお目にかかります」

「母さんは嫌だろうけど、俺にとっては誰よりも大事な人だ。

俺、この人と結婚しようと思ってる…」


母はほっとしたのか、目をかすかに細めた。

それからまたすぐに母の意識は遠のき、呼吸が消えて、

俺たちの許から去って行った。

処置のため、俺たちは悲しむ間もなく病室の外へ追い出された。


「…よかった、少しでもお目にかかることが出来て…」


銀鷹丸さんはほっとして、息をついた。

そしてふらりとした。



銀鷹丸さんは職業柄乱れた生活と過労で、熱は高かったが、

他に悪いところもないようで、薬だけで帰された。

車に乗せて実家へ帰り、そこで姉に手伝ってもらって、

姉の部屋に床を取って寝かせた。


「銀鷹…いや、赤坂さんはもともと、飲食やってる友達の同業者だったんだよ。

帰省のたびに母さんがあんまり嫁、嫁、うるさいから、

黙らせるため、赤坂さんに婚約者の役を頼んだんだ。

俺、女の知り合いなんかいなかったから…それが最初」


砂でざらざらした座敷の畳を、ほうきで掃く姉の背中に、

俺は真相というなれそめを投げかけた。


「そんな事やろて思てた、あんた彼女の気配あらへんし」

「今は付き合っているし、大事な人なのは確かだけど、

実際に結婚するかどうかはわからない。

あの人は自立した職業婦人だし、中身まで立派な人だ。

こんな田舎には馴染めないだろう、俺たちとおんなじ異質だ」


姉は名前を映見子という。

名前だけは日本人だが、姉の方が父親の血をより濃く受け継いでいた。

肌色も、髪色も、目の色もずっと明るい。

俺も相当にいじめられて来たが、姉はもっといじめられて来たはずだ。

でも姉の方が強かった。

俺は田舎から逃げ出したけれど、姉は田舎と戦った。

結果、今は立派な田舎のおばちゃんになった。


「あの人、このままここに寝かしとくのんか?」

「店があるから帰りたいて言うと思うけど、しばらく寝かせてやりたい」

「噂になるで?」

「構わん、たとえ名前だけでも俺の婚約者だ。

何も間違ってはいないし、筋も通ってる」


銀鷹丸さんが寝ている間、12時の合戦時間になったので、

俺は彼女のバッグからスマホを盗み取り、「銀鷹丸」として参戦しようとしていた。

持参奥義名を添えてのイン宣言を書き込んだところで、思い出した。

「銀鷹丸」からならば、発言も出来る…。


“銀さん、マジ強くなったな”


合戦終わり、ゴールデンルーラーさんが連合掲示板で発言した。

当たり前だ、誰が中に入っていると思ってる。

そんな事を思いながら、俺は返信を描き込んだ。


“ホークスさんに比べたらまだまだ”


さあ、誰がどんな反応をする?

俺は犯人をあぶり出せるだろうか。

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