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91、ローズの後悔

 アルフレッドとバートンの治療が終わった。


「シャインくん、やっぱ、マスターの子だな。ひどい怪我でも簡単に治せるんだもんな」


「アルさん、僕はまだまだです」


「あのジジイ、頭おかしいよな。ローズちゃんとシャインくんを吹き飛ばして、俺達にも風の刃を降らせたんだぜ。シャインくんのバリアがなかったら、やばかったぞ」


「バートンさん、役に立ってよかったです」


 シャインくんは、二人に褒められて嬉しそうな顔をしていた。



「でも、リュックさんがなぜ突然、現れたんだ?」


「バートン、リュックさんは異空間を移動できるから、結界があっても入れるんじゃないのか」


「うん、入って来れるだろうけど、念話は通さないのに、なぜ俺達がここにいるってわかったんだ?」


 アルフレッドとバートンは、シャインくんを見た。シャインくんは、困った顔をしている。


「僕もわからないです。ローズさんは聞いていますか」


 私は、どう答えるべきか、少し迷った。


「探してたみたいよ」


「ん? リュックさんが誰を探してたんだ? あ、シャインくんか、ケトラちゃんかな」


 バートンが不思議そうにしている。


「ケトラちゃんじゃないか? ポーションの素材を探してたとか? ハデナの果物が必須だって聞いたことあるぜ」


「ん? アルって、リュックさんとそんなに親しいのか?」


「いや、俺は学校の授業でたまに話すくらいだけど、前にケトラちゃんから聞いたことあるんだよ」


「ふぅん、というか、ケトラちゃん、どうなったんだ?」


 私達は、プヨプヨしたバリアの中から、ケトラさんやルークさんの姿を探した。かなり離れた場所にいる。巨大すぎるゲジゲジに追いかけられているようだった。



「相変わらず、追いかけっこだな。シャインくん、あの二人、大丈夫?」


「はい、二人ともあの虫より強いから大丈夫です。ルーク様は楽しそうです」


「へぇ、俺なら冷や汗もんだけどな。バートンも余裕だろうな」


「アルよりは、大丈夫だと思うぞ。人族は、あのゲジゲジの攻撃が当たったら、たぶん即死だぞ。俺は、体力は高いから平気だぞ」


 赤い髪の男と話していたはずの魔人レイの姿がない。赤い髪の男は、金髪の男の方を警戒して見ているようだ。


 金髪の男の近くには、カバンがいた。あ、魔人レイとケンカをしている?


「あれ? さっきの老人はどこに?」


「お姉さん、青の神は、さっき、リュックくんが斬ってました。光の粒子になって自分の星に帰ったと思います」


「ん? 斬ると光の粒子になるの? シャインくん、意味がわからないわ」


「あー、そっか。あまり話しちゃいけないことかもしれないんですけど……神は、命を落とすと光の粒子に変わります。自分の星にたどり着かないと復活できないんです。星は、神の生命の源なので」


「あ、だから地球の神は、星が消滅したから、封印に託すしかなかったのね」


 シャインくんは、首を傾げた。


(あ、そっか、地球のこと知らないんだったかしら)


「えっと、怪盗の依頼の話は、わからないです。神は星と生命が繋がっていますから、星の消滅は神のチカラを大きく奪うことになります」


「あっ! ちょっと待って。カバ……じゃなくて、リュックさんが、あの怖ろしい神を殺したってこと?」


「はい、そうです」


「えっ!? そんなことできるの?」


「ローズちゃん、いまさら何を驚いてるんだ? リュックさんは、女神様の魔力から生まれた魔人だぞ? 魔道具から進化したから、主人の補佐をする能力が高いはずなんだ。驚くことないぞ」


「バートン、その主人って、マスターよね? マスターの補佐って……」


「父さんは通常時の戦闘力は、普通の人族程度しかありません。女神様の側近の中では一番弱いそうです。父さんは、回復系に能力が偏っているので、白魔導系は、この星の誰よりも能力が高いんです」


「へぇ、すごい。じゃあ補佐は、戦闘面でということかしら」


「はい。リュックくんは、父さんが高い能力を持つ白魔導系はほとんど使えません。父さんが得意なバリアも、イマイチだそうです。でも、それ以外の部分は、女神様が直接生み出す処刑人と呼ばれる魔人よりも、能力が高いんです」


「そう……なんだか違いすぎて私にはよくわからないわ。私から見れば、ハロイ島で会った人達がみんな強すぎるもの。怪盗も、だけど……」


(怪盗は、今頃、どこで何をしているのかしら)



 私はこんな時なのに、ふと怪盗のことを思い出した。彼も、とても強い。彼にも、こんな状況から私を助け出す能力はあるはずだ。


 でも、ただの過去の依頼人にすぎない私を助ける義理はないわね。彼は、私の今の状況を知っているのだろうか。

 いや、そもそも、私を気にかけるわけがないわね。


(私は過去の依頼人にすぎないのだから)


 私の記憶を消さなかったのは、将来、私が怪盗を呼ぶことになると予知していたのかもしれない。


 私が怪盗を呼ぶことになるとすれば、おそらく、アマゾネスの危機……。アマゾネスは、それほど危機的な状態なのかもしれない。神族が調査に動いているくらいだ。


 考えれば考えるほど、悪い方に思考が傾いてしまう。はぁ、ほんと、頭が痛いわ。


(怪盗に……会いたい……)


 地球で、美優の地元で、ショッピングしたときのことが忘れられない。本当に楽しかった。地元に帰った懐かしさもあったかもしれない。でも、あんなに心が浮き立ったのは、アマゾネスとして生まれて初めてのことだ。


 私は、あの時、このままずっと時が止まればいいのにと、心の奥底で考えていたことに気づいた。離れてから、こんな強い想いに気づくなんて……。あのとき彼にまた会いたいと言っていたら、何かが変わっていたかもしれない。


(はぁ、らしくないわね)



「おーい、ローズ、大丈夫か? どうしたんだ? 暗い顔をして。リュックさんが来てくれたから、大丈夫だぜ」


「えっ? いえ、アルフレッド、何でもないわ」


「ローズちゃん、元気ないぞ。あんな神々には俺達は、敵うわけないんだから、気にしちゃダメだぞ」


(バートンは、何か誤解をしているわ)


「そうだぞ、ローズ。アマゾネスの騎士のプライドが傷ついたのかもしれないけど、相手が悪いぜ」


「二人とも、ありがとう。大丈夫よ」


 そう言うと、アルフレッドは驚いた顔をしていた。あっ、また、私が礼を言ったから、かしら。


 アルフレッドは何か言いたそうにしていたが、言葉を飲み込んだようだった。今の状況は、つまらない口げんかをしている場合じゃないものね。


 シャインくんは、ケトラさんやルークさんの方を見ていた。かなり離れた場所にいる。いつの間にか、ゲジゲジの数が増えているようだった。


 私達は、彼らの様子をジッと見ているしかなかった。


(無力だわ……)





「小悪魔レイ、おまえ、戦闘モードの男の姿をしてるくせに、なんでこんなことになってんだよ。こんな邪神なんか、テキトーに潰せばいいだけじゃねーか」


「むちゃ言うな。俺には俺の仕事があるんだよ」


「珍しい石ころ集めだけをしろと言われたのか? 同行者をサポートしてこいって言われたんじゃねーのか」


「虫だけだと思ってたんだよ。神々がいるなんてわかってたら、来ないよ。しつこいスカウトにもうんざりだ」


「赤い髪の方か?」


「両方だ」


 リュックは、青の神を斬った後、同じく魔道具から進化した魔人レイの元へ移動した。


 リュックは事情を確認し、レイにはゲジゲジと追いかけっこをしている二人を任せようと考えたのだ。


 だが、いつものように口論になり、本題に入る前に、金髪の神が近づいてきた。赤い髪の神も、至近距離で、魔人達の様子を注意深く観察しているようだった。



「また魔人が増えたな。アイツと、一体ずつにしようか。うーむ、どっちも似たタイプだな。おまえ達に主人を選ばせてやろうか」


「ふざけんじゃねーぞ。捕らえた住人を返すか、おまえらが星に帰るか、おまえ達に選ばせてやろーか」


 リュックは、二人の神をキッと睨んだ。




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[一言] ローズ後ろ~後ろ~…(*´・ω・`)b
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