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88、ゲジゲジ退治

「皆様、足元のクッションに乗ってください」


 ワープワームの族長の側近だという個体が、私達にそう促した。話すワープワームに目を輝かせながら、アルフレッドは口を開いた。


「行き先は、地下迷宮のどこ? 王国側のギルドからも、いま大量に冒険者が送られていると聞いたけど」


「地名はわかりません。広い空洞です」


 ワープワームがそう話すと、その次の瞬間、頭の中に写真のような映像が浮かんだ。これって何? 私だけが驚いているようだった。


 アルフレッドは、やはりここかと呟いた。


「ローズさん、ワープワームは、ワープよりもこっちの方が主な役割なんですよ。非常に優秀な偵察隊です。あらゆる場所に入り込んでその映像を主人に伝えるんです。音は伝わらないですけど」


「ルークさん、でもアマゾネスのワープワームは、こんな仕事はできるのかしら」


「すべてのワープワームが持つ能力ですよ。だから支配権をめぐって、争いも絶えないんです。アマゾネスはワープワームを持つから、閉鎖的になったんだと思います」


「なるほど……確かになぜか隣国の状況を知っているものね。密偵がいるのかと思っていたわ」


「ワープワームは密偵ですからね」



 ルークと話している間、アルフレッドは難しい顔をしていた。シャインくんに何か小声で話している。


「アルフレッドは、どうしたのかしら」


「アルさんは、今から向かう場所に心当たりがあるようです。シャインに言って、他の映像も送らせたみたいですね」


「迷宮を知っているの?」


「この迷宮は、50年程前にできたんです。人工的に他の星の神々が隠れ住むために作ったようです。さっきの映像の場所は、決戦の地です。マスターが初めて神殺しをした場所として、記録に残っているようです」


「えっ!? 闇の神族の暴走の地?」


「あはは、アマゾネスではそう伝わっているのですね。確かにマスターは闇属性の神族ですね。その頃はまだ闇の力の扱い方がわからず、暴走していたそうです」


「そ、そう……あの話は、マスターのことなのね」


 私は子供の頃に学んだことを思い出した。アマゾネスに害となる人物の伝記のひとつだ。闇の神族は数人いて、みな異常な者だと記されていた。逆らう者をすべて破壊すると。


(伝記って、事実とは違うのね)



「単独行動はマズイ。二つに分けるぞ。向こうにケトラちゃんもいるんだよな?」


 何かを考えていたアルフレッドが、そんなことを言い出した。そして、シャインくんはコクリと頷いた。


 映像には何も魔物らしきものは映っていなかった。何を警戒しているのかしら。でも、おかしいわ。戦乱中なのに敵がいない?


「俺とバートンはケトラちゃんと組む。ローズとルークはシャインくんと組んで。常にワープワームをそばに配置して、いつでもワープができるようにするぞ」


「ちょっとぉ、アタシは?」


「魔人は単独で平気だろ? それに、調査じゃなくて採掘目的だろ?」


 アルフレッドに拒絶された魔人レイは、ぷくっとふくれっ面をした。やっぱり、オネエみたいに見えてしまうわ。



「ワープ先の指定、かしこまりました。では、移動します。剣のご準備を」




 その次の瞬間、私達は、少しひんやりした場所にいた。


(えっ? ワープ、したの? こんな一瞬で?)


 あまりの驚きに、私は一瞬、反応が遅れた。私のすぐ横から、巨大なゲジゲジが飛びかかってきた。


 ボゥワッ!


 巨大なゲジゲジは、炎を吐いた。


(しまった! あ、あれ?)


 私は炎に包まれたが、熱くはない。私は、剣を握り直し、巨大なゲジゲジの頭を斬り裂いた。


 キュパパパー! ドーン!


 変な叫び声をあげ、ゲジゲジは倒れた。


「ローズさん、ナイスです。触角、もう一本あります。そちらも切り落とせば死にますから」


「ルークさん、わかったわ」


 見ると、みんな戦闘中だった。特にバートンに、次々と襲いかかっている。


 私は、剣を振り、ゲジゲジの触角をもう一本切り落とした。倒れたゲジゲジは岩肌のように見えた。


 さっき私は炎に包まれたのに、なんともない。そっか、炎無効のポーションは、こういうことなのね。ありえないくらいすごい効果だわ。


「ローズさん、触角の間に、コイツの魔石があります。固まる前に、剣でくり抜いて取ってください」


「わかったわ。バートンがやたらと狙われるわね」


「ええ、バートンさんは、ニオイを出して引きつけてくれてます」


 私は岩肌のように地面と同化しているゲジゲジの触角の間の部分に剣を刺した。グリっとえぐると、こぶしサイズの濁った緑色の石が出てきた。


(これが魔石なのね。なんだか汚いわね)


「ローズさん、これ、捕獲用の魔法袋です。手を近づけて収納と念じれば、触れなくても収納できます」


 シャインくんが、私に小さな袋を放り投げた。私はそれを受け取り、腰に装備した。そして、濁った緑色の石に手をかざし、収納と念じた。


 すると、石はスッとその場から消えた。


(ラクね)



 ゲジゲジは、死ぬと岩肌のようになるようだ。だから、ロックワームと呼ばれているのかもしれない。


 私が数体を倒して魔石を収納している間に、みんなは大量の岩肌の山を築いていた。


 バートンの組が、特に効率が良さそうだ。バートンが引きつけて、それをいつのまにか合流していたケトラさんが倒し、アルフレッドがトドメ役と魔石集めをしている。


 こちらは、ルークとシャインくんは個別にそれぞれ倒している感じだ。私のところに来ないように、二人がガードしてくれているようにも見えた。



「そろそろ片付いたかな。シャイン、あの子達に命令してー。あたしの言うこと、あんまり聞かないから」


「ケトラちゃん、了解しました」


 二人は、ふわっと空中に浮かび上がった。


「アルさん、ローズさん、天使ちゃん達に乗ってください。バートンさん、ルーク様、浮遊してください。あ、魔人レイさんも」


 シャインくんの指示で、私は足元に現れたクッションに乗った。するとふわりと浮かび上がった。


 魔人レイは、死んで岩肌のようになったゲジゲジから何かを削り取っていたが、渋々、その指示に従った。



 みんなが、地面から離れたのを確認し、シャインくんはサッと手をあげた。すると、大量のワープワームが現れた。そして、シャインくんが、手を振り下ろすと、ワープワーム達は、一斉に地面に向けて、火を吐いた。


(す、すごい)


 ワープワームは、弱い火の魔物だ。一体が吐く火は弱い。アマゾネスにいるワープワームは、せいぜい部屋のカーテンの一部を焦がす程度だ。


 この天使ちゃん達も、吐く火は弱い。だが、大量のワープワームが一斉に吐くと、大きな威力になる。地面に積み上がっていたゲジゲジの死体が燃えて、崩れていった。



「ローズさん、大丈夫ですか? 熱くないですか」


「ええ、シャインくんがくれたポーションを飲んだから平気よ。ルークさん、これは何をしているの? 死体処理?」


「はい、この迷宮で魔法が使えないのは、このロックワームの異常発生のせいなんです。岩壁のいたるところにコイツらがいます。マナを食っているんです。死んでもマナを吸収するから燃やさないといけないんです」


「マナを食べる虫なんて聞いたことないわ」


「コイツらは、他の星から持ち込まれたんです。この空洞内が特に異常発生しているから、ここに巣があるようです。普通なら、マナの吹き出し口の近くに巣を作るはずなので、こんな地下迷宮に作るのはおかしいそうですが」


「何者かが、わざとこの場所に作らせたのかしら? でも、何のために?」


 すると、ふわっと魔人レイが近寄ってきた。


「あんた、そんなことも知らないの? 世間知らずにも程があるわね。拠点を築きたいからに決まってるじゃない」


「レイさん、拠点って?」


「あんたバカじゃないの? こんなことをするのは、ここに隠れ住みたい武闘系に決まってるじゃない」


「武闘系って?」


「はぁ……。赤い星系から逃げてきた邪神じゃない?」


(ええっ!? 他の星の神?)



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[一言] 地球のゲジゲジも踏んだりしたら体液?が緑色だけど…あれは魔石だったのか…( ̄□||||!!
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