64、水色は、氷の「ライトブルー」で
皆さま、いつも読んでいただいて、ありがとうございます。ブックマーク、評価もありがとうございます♪
この数日、インフルエンザの話を聞くようになりました。昨年末、私はインフルエンザにかかってしまったので、予防接種を受けるべきですが、ちょっと不調続きでタイミングを逃してしまっています。
毎日更新していますが、もし突然投稿が途切れたら、おそらくインフルエンザです。いまストックがないので、更新が止まります。数日で戻りますので、お待ちいただければ幸いです。
念のためのお知らせでした〜m(_ _)m
「老師、置いていないということは、怪盗を呼ぶために必要な魔石の花は、ライトブルーなのですね。水色以外の6色は魔石の花ではなく草原の花ですか」
「フォッフォッフォッ、クラインの息子、草原の花か否かはワシは知らぬ。それは草原に行って、頭のおかしい精霊に聞け」
(頭のおかしい精霊って、あの戦闘狂のことかしら)
老師の毒舌に、ルークは一瞬、言葉に詰まった。
「わかりました。ライトブルーは、じゃあ……」
「ウチの店には置いていない。現地に採りにいくか、他を当たれ」
「扱っている店が、この街にあるのですね。どこですか?」
「謎解きじゃろ? 自分達の足で調べねば、怪盗は呼べぬぞ」
「条件を揃えても、怪盗を呼べないことがあるんですか」
「当たり前じゃ。あの怪盗は、気まぐれだからな。私利私欲で呼び出そうとしても応じないだろう。怪盗を呼ぼうとする者は多い。だから、依頼者を選ぶんじゃよ」
「わかりました、お邪魔しました」
私達は、店をあとにした。魔石の花は手に入らなかったが、魔道具を使ってたどり着いた成果は得られた。
私には、さっきの老師の戦闘力は見えなかった。バートンばかりか、タクトまで固まっていたことからも、かなりの影響力がある人なのだろう。
少し離れると、やっとバートンが話し始めた。
「悪い汗が出てきたぞ。ルークはさすがだな〜。うん? 名前が似てるけど、何か関係あるのか?」
「ないと思います。悪魔族は、巨亀族とは仲が悪いですから。父さんは、老師とは気が合うみたいですけど」
(巨亀族? さっきの男のことかしら)
「ルーク様の名は、もしかしたらタトルーク老師が付けられたのかもしれません。友好の証として、という噂を聞いたことがあります」
「ええ〜、タクト、全然違うよ? ルーシーとクラインの子だからって、ティアちゃんが付けてくれたらしいから」
「なんと、女神様が! ルーク様は神に祝福されてお生まれになったのですね!!」
タクトは、珍しく大きな声で、しかも表情を緩ませている。ルークさんのことが本当に大切なのね。
私は少し羨ましく感じた。私にはそのように、心底、崇拝し、大切にしてくれる人はいない……あ、爺は、心配してくれていたわね。
ふと、アマゾネスの自室を思い出した。朝、何か大切なことがあるときは、必ず、爺が起こしに来たわね。
(元気にしているかしら)
「ねぇ、その老師さんって何者なの? さっきは一人だったけど、二人組だよね? あの人のことは、口に出してはいけないって言われたことあるんだけど……」
「シャラ、地底で、下手なことを言うと殺されるってことで、わかるだろう。王に誰ですかと聞いたら無礼すぎないか」
「アル、まさか、魔王とか?」
「うーん、どうかな。ルーク、さっきの老師って、もっと上だよな? ただの魔王は、老師とは呼ばれないんじゃなかったっけ」
「タトルーク老師は、何代も前の大魔王です。この星ができた頃に、他の星から移住してきたそうです」
「魔王の上か、やはりな〜」
私は、おとぎ話を一つ思い出した。アマゾネスのある旧帝国側の大陸は、地上を手に入れようと地底から出現した双頭の大亀によって戦乱になったと…。
そのときに女神様が創り出した魔人が、その戦乱に加わったことがきっかけで、魔族は地底へ逃げたが、このことからずっと戦乱が続くことになったのだと。
「もしかして、双頭の大亀のことかしら? おとぎ話として伝わっているわ」
「ローズさん、老師は、双頭です。人の姿になると二人に分かれてしまうようなので、シャラさんの二人組というのも正解です。巨亀族の魔王で大魔王になったのは、老師だけなので、おとぎ話になっているならタトルーク老師のことです」
「戦乱の元凶となった魔族として伝わっているわ」
「そうでしょうね。禁じられていた地上への侵略をした人ですから。でも、逆に女神様には感謝されているはずだと、地底では伝わっていますよ」
「えっ? なぜ、女神様が感謝するのかしら」
「その頃、女神様が創り出した魔人の一人が、野望を持ち、制御不能になったそうなんです。大魔王を倒して自分が大魔王になろうとしたらしい。でも、老師と戦って、魔人は死んだそうです。ただ大魔王軍も半端なく傷つき、地底へ戻ることになったそうです」
「魔人が野望を?」
「魔道具から進化して魔人化した奴らしいです。女神様が直接的に創り出す処刑人と呼ばれる魔人は、意思を持たないけど、魔道具から進化した魔人は、主人の影響を強く受けますから」
「そうなのね」
(カバンは、マスターが主人だったわね)
なぜか、あのカバンのことを考えてしまった自分に少し驚いた。店で、さっき、何を言おうとしたのかも、少し気になっていた。
でも、魔人が主人の影響を強く受けるなら、なぜあんなにチャラチャラしているのかしら。マスターは、あんなに紳士なのに。
そういえば、以前、マスターが言っていたわね。彼の成長が嬉しいとか何とか。まだ、カバンは成長途中なのかもしれないわね。
(まぁ、どうでもいいわね)
「しかし、どうする? ライトブルーは、氷の魔石の花だから、雪山に行くのか? 正直なところ、旧帝国に渡るのは簡単じゃないぜ」
「ローズちゃんの里帰りについていけばいいんじゃないか?」
(えっ? 国に戻ったらもうここへ来られなくなるわ)
なんだか妙な話になっている。
「バートン、アマゾネスだぞ? 男だとなぁ」
「マスターの非売品のポーションで、性別を逆転する呪いポーションがあります。それをわけてもらえば、女性になれますから」
「ルーク、それマジか? そんなポーション、聞いたことないぞ」
「バートンさん、非売品ですから。マスターに……って、またマスターに頼るのも、甘えすぎですよね、うーん」
「あ! それって変身ポーションシリーズだよな。探偵事務所にあるぜ。潜入調査に使うから、三種類とも、置いてあったと思う。持ち出すのは、所長の許可が必要だけど」
「じゃあ、所長さんに事情を説明して、変身ポーションを譲ってもらえばいいんですね。でも、なぜ非売品なのに、持ってるんでしょうか」
「うーん、所長は、魔道具好きだから、変身ポーションもその流れで集めてるんじゃないかな。体力や魔力は全回復になるから、ってのも魅力なんだよな」
「全回復のポーションなのか」
珍しく、タクトが興味を示した。
「いや、ラベル説明には、1万回復って書いてあるんだ。魔族なら全然たいした回復にはならないな」
すると、タクトは目を見開いた。
「魔王様が持っておられる伝説のポーションは5万回復だ。それの下位品か。ということは、金貨30枚、いやもっとだな」
(金貨なんて持っていないわ)
「ええっ? そこまで高くはないんじゃないか。性別逆転するのは体力回復ポーションだから」
「なんだ、それなら銀貨30万程度か」
(魔力回復ポーションの方が随分高いのね)
私達は、探偵事務所のある喫茶店前に着いた。私は、それだけでドキッとしていた。
「あの、皆さん、お腹減りませんか」
ルークは、恥ずかしそうな顔をしていた。お腹が鳴ったのかしら。
「そうだな、飯食ってからにしよう」
みんなも賛成し、私達は広場に出ている屋台へと移動した。昼ごはんの時間はとっくに過ぎているためか、広場の混雑は少しマシになっていた。
「ローズさん、あのバーベキュー屋台に行きましょうよ。学園の旗が見えるから、バーベキュー研究部だと思うよ」
「ええ。ん? 部活?」
「そうだよ」
「えっ、バーベキュー研究部の屋台か? 俺も行くぞ。絶対、美味いぞ。みんなで行こうぜ」
「おう」
(有名なのね。少し楽しみだわ)




